わたなべりんたろう (監督)
映画「3.11 日常」について
2011年12月24日(土)~30(日)、池袋シネマ・ロサにて限定一週間レイトショー上映!
12月23日(金)池袋シネマ・ロサにて前夜祭トーク&ライブ開催!
わたなべりんたろう監督とゲストを招いてのトークショー、
「humanERROR」が話題のFRYING DUTCHMANのミニライブ/開演12月23日 21:30~ 料金1300円均一
INTROでも執筆するライターのわたなべりんたろう氏が初めて撮ったドキュメンタリー映画『3.11 日常』が、この年末緊急公開される。『ホット・ファズ』(07)の公開署名活動など、好きな映画のためなら苦労を惜しまない行動派として知られるが、3.11以降の現状に対しての怒りや悩みをきっかけとする本作も、人間味に溢れ力強く綴られた快作に仕上がっている。日本でいちばん忙しい科学者の1人である小出裕章助教と熱意で繋がり、ツイッターやクラウドファンディングという誰にでも手が届くツールを駆使して快挙を成し遂げたわたなべ氏にお話を伺った。(取材:深谷直子)
――反骨精神を感じる映画ですが、観ているうちに励まされて元気も出てきますね。
わたなべ 自分が宣伝で関わった映画『ホット・ファズ』や『ハングオーバー!』(09)、『アンヴィル!』(09)、『ハーブ&ドロシー』(08)などはみんなそうなんですけど、映画って観て元気になれるっていうことが大事だと思うんです。この映画はクラウドファンディング申請時から決めていることですが被災地には無料配布することにしているんです。被災地の人たちに「現実はこうなっていて大変です。がんばりましょう」なんていう話をしてもしょうがないと思うんです。がんばろうというのは基本的なことだけど、既に精一杯がんばっている方々には抑圧になってしまうかもしれませんから。
――映画の構成のことですが、インタビュアーであるわたなべさん自身の姿も声も出てきませんね。質問はテロップを使っていますが、どんな狙いがあるんですか?
わたなべ テロップにしたのは、映画を観ている人に出演者から直接話しかけられているように感じてほしかったからです。こちらの存在を消したいという思いがありました。テロップにする作業は大変でした。多分あれでエコノミー症候群になりました(笑)。あのテロップは出し過ぎだともよく言われて、多分知っている人にはこちらの声が聞こえると思うんです。でも先日有料試写会をやったときにはテロップについて「臨場感があった」「迫力があった」などの感想をもらえて嬉しかったです。試写の反応全体で言うと、技術論でダメな人と、すごくいいと言う人と分かれました。
――技術論ですか。それで映画自体が受け入れてもらえないというのは辛いですね。
わたなべ 自分でもまだ手を加えるべきところはあると分かっているので今もブラッシュアップしてます。でもいいと言う人にはテーマをちゃんと分かってくれている方が多いのが嬉しかったです。
――試写は盛況で、急きょ同じ日に追加上映もされるほどでした。おかげで年内公開も叶いましたね。
わたなべ 奇跡的に決まってよかったです。とにかく年内に公開したかったんです。年を越したらみんな意識が絶対変わると思うんですよ。3月11日に向けてでもいいのではという声もありましたが、どちらにしろその時期まで劇場がどこも埋まっているんです。ただ、単館系は年末年始レイトが空いているんですよ。お客さんがあまり入らないので。クリスマス・イヴに公開というのは厳しいものではあるんですが、年内に観てほしいと思っていたのが劇場のタブーのところに合致したんです。これも偶然でしたがよかったですね。今はトークのゲストを決めるのにてんてこまいです。今回知り合った方々とツイッターなどでいろいろやり取りしていますが、急に公開が決まった上に、年末はみんな予定が詰まっているからなかなか大変です。でもせっかく年内の公開が決まったからには、できる限りいろいろやろうと思っています。
――今までにも署名活動の経験などありますが、人と関わってパッと行動することが上手だなと思います。
わたなべ ツイッターをこの映画作りにもいろいろ使いましたが、結局は現実と同じで人対人なんだと思います。ツイッターとかネットはやっぱりツールでしかないんですよ。大好きな映画でもある『コンタクト』(97)の中の台詞に「こんなにテクノロジーが発達して人間がコンピューターで繋がっているのに、現代ほど人間が孤独な時代はない」というのがあります。それは本当に強く思いますね。10年以上前の映画のセリフなのに、今、より心に響きます。
――使い方ですよね。ネットで素早く繋がるというのは、実際にコミュニケーションするための便利な手段であるべきなのに、ネットが目的のようになってしまっていると思います。
わたなべ ネットは大事だと思います。3.11のときとか情報をやり取りできたし。でも一斉にダウンしちゃったら何も繋がらないし、人と会って喋るのがすごく大事だと3.11以降にますます強く思います。あとは「やろうかな」と自分の中で迷いがあるときはとにかく1回やってみることですね。
――今回映画を撮ってみてどんなことを感じましたか?
わたなべ こちらがサラリーマンを辞めて映画のライターになったのは映画に近いことをやりたいと思ったからですが、元々自主で映画を作ったり、助監督などスタッフをやったりしていました。だから撮りたいという気持ちはあったとは言え、今回こんな短い期間で映画を作って劇場公開までされることになったのには自分でも驚いています。本当に初めてのことばかりで、宣伝はやったことがあるけどクラウドファンディングも初めてだし映画館に営業に行くのも初めてだし、まあ初めから大変だろうとは思っていたけど輪をかけて予想外のことがいろいろ起こりました。今も公開に向けて睡眠時間も削っていろいろやってますが、まだまだどうなるか分からないです。でも前売券を売り出したらいきなり10枚買ってくださる方がいて、それはとても嬉しかったです。
――クラウドファンディングについての記事で、朝日新聞の1面(12月3日夕刊)にわたなべさんの写真付きで映画制作のことが紹介されましたね。
わたなべ あれはびっくりしました。載る当日の朝に「今日の夕刊に載ります。肩書きはフリーライターにしましたが、いいですか?」という確認の電話はありましたが、まさか1面で写真もあんなに大きく載るとは思いませんでした。宣伝の記事ではないので作品名は出ないんですけど、ツイッターでも多くの人がリツイートしてくださいましたね。
――注目が集まるといいですよね。支援で作られた映画ということもあるし、多くの人に届いてほしいと私も思います。
わたなべ できるだけのことはやったので、あとは流れに身を任せていく感じです。最近読んだ浅野忠信さんのインタビューで「好きなことしかやっていない。それをやる以外に生き残る道はない」という言葉があって、それは本当にそう思うんです。人生は1回だけで1秒たりとも戻れないし、だからと言ってあくせくしてもしょうがない。サラリーマン時代に2回過労で倒れているので、「いつまでにこれをやれ」という生活から離れられて本当によかったと思います。個人が何をするかというのはそれぞれですが、今のこの状況の中でも国が何とかしてくれるとか、他力本願なのは一番まずいと思います。少しでも多くの人にぜひ観てもらえたらと願っています。
( 2011年12月5日 池袋シネマ・ロサで 取材:深谷直子 )
監督:わたなべりんたろう
出演:小出裕章,水野美紀,中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン),高橋健太郎,関口詩織,岡本直也,山本雅昭,米原幹太
2011年12月24日(土)~30(日)まで、
池袋シネマ・ロサにて限定一週間レイトショー上映!
12月23日(金)池袋シネマ・ロサにて前夜祭トーク&ライブ開催!
わたなべりんたろう監督とゲストを招いてのトークショー、
「humanERROR」が話題のFRYING DUTCHMANのミニライブ
開演21:30~ 料金1300円均一 当日11:00より、劇場窓口にて入場整理番号付きにて販売。
主なキャスト / スタッフ
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