ブリュレ
―brulee―
かけがえのない大切な人がいる、すべての人に贈る、
リリカルで美しい映画が誕生しました。
双子って心中したもの同士の生まれ変わりって……知ってた?
会いたくて、会えなくて…火をつけた。
100%濃度の血脈の間の100%濃度の愛の物語。
2月28日より、大阪・第七藝術劇場にて上映決定!
ブリュレは“焦がす”のフランス語。
映画「ブリュレ」は、一卵性双生児の姉妹が繰り広げる、哀しく美しい近親愛の物語です。
東北の海沿いの町で放火を繰り返している17歳の少女・日名子と、九州から祖母の遺骨を抱えてやってきた17歳の少女・水那子は、一卵性双生児の姉と妹。離ればなれに暮らしていたふたりの13年ぶりの再会。洋菓子店を営む叔父さんの家で、ふたり一緒に楽しく暮らしていくはずだったが。
この映画は自主映画として作られています。監督・脚本は、本作が劇場デビューとなる林田賢太、32才。美しい映像は、「リアル鬼ごっこ」の撮影・早坂伸、静謐なスコアは水野敏宏。水那子と日名子を演じたのは、オーディションで選ばれた中村梨香と美香のほんものの一卵性双生児の姉妹、撮影当時17才。日名子の放火をやめさせたいと思っている高校の同級生・山元を平林鯛一、姉妹を車に同乗させる骨折したキックボクサー・池澤を瀬戸口剛、姉妹の叔父役を早稲田小劇場出身の舞台俳優・小田豊が演じます。彼女たちの実際の成長も映画に映し出したいと、夏と冬の季節を撮り分け、長期にわたる撮影を行いました。
僕は長い間、一卵性双生児という不思議な存在に惹かれていました。いつか、一卵性双生児の映画を撮りたいと思っていました。映画のなかで、火を放つ日名子と、放火の新聞記事を探す水那子は、往復書簡のようなやりとりをします。世界には二人だけしか存在しない。視界には互いしか映らず、物語が進行するにつれて、その度合いは増してくる。それは痛々しいほどに純真で、時に滑稽にすら映ります。
彼女たちの強い結びつきを、現代へのアンチテーゼとして映しだしたつもりです。今、繋がりを持てている人がどれだけいるだろうか? 感じている人がどれだけいるだろうか? 残虐な事件があたりまえになっている危険な現代は、親が子を殺し、子が親を殺す。けれども人は望まれずには産まれて来ないはずなのです。少し視野と想像力を広げてみればわかること。人は誰かに必要とされることで生きていけるのです。自分が誰かの中にいることを信じるだけで、生きていけるのです。そんな誰かが、あなたにもいること……。彼女たちの繋がりあう情意を、僕の願いとしてラストシーンに込めました。
スタッフもキャストも機材も美術も、数台の車を連ねて一緒に旅をしました。そしてその旅は、主人公たちが辿ったルートでもありました。
秋田県の豪雪のすさまじさや、舞鶴の海のしとやかさ、そして瀬戸内海の夕日の美しさと共に、彼女たちの火を放つような“心ののろし”と“叫び”を作品に刻みこむ旅だったと思います。また実際の彼女たちの成長も映画に出したいと、夏と冬の季節を撮り分け、長期にわたる撮影を行いました。
映画製作って、いつもハンドメイドだと思います。必要なものは作る。足を使って探す。頭を下げる。そうしているうちにこの作品でもたくさんの方々からの思いをいただきました。そんな思いが詰まった作品をこれから大勢の方々に見ていただき、願うならば見ていただいた方々の記憶に残るものでありたいと思っています。
監督・脚本 林田賢太
しほの涼(タレント)
私は高校2年生ですが、この時期は「友達」「学校」「家族」といった人生の中で一番大事なものを養っていく時だと思います。二人の間の13年という溝を二人で考え、二人で距離を縮めていく。何が正しいのか……やみくもにも自分たちを信じて歩いている姿に心打たれました。この作品は、実際の双子、実際の地名、実際の季節といった“視覚のリアル”が二人の心境をもっともっとリアルに表しています。思春期の“言い表せない感情”“伝えきれない想い”そのリアルな部分を斬新に描いてあり、最後の10分間、涙があふれました。ヒューマン映画とまとめていいのか分かりませんが、心の奥を口に出さずに語ってくれる映画です。バスの中から始まるこの物語を――ひとりでも多くの方に観ていただきたいです。
新海誠(アニメーション監督)
「双子のパラドックス」という思考実験がある。双子の片方がロケットに乗ってずっと遠くまで行って、再び地球に戻ってくる。すると相対性理論により地球に残った片方のほうがずっと歳をとっていて云々、というやつである。僕がこの美しい映画を観て思い出したのは、この言葉だった。地上に生きるしかない僕たちの時間も、ある意味では人によって流れ方が違う。僕たちは愛する人とずっと同じ時間を生きたいと願うが、それを叶えることは実はとてもとても難しい。だから誰しもそれぞれの生き方を学ばなければならない。双子の旅はそういう焦燥に貫かれていて、だからその姿は、とても深刻に僕たちの胸をうつ。そしてその若い焦燥を、おそらくは主演の中村姉妹を含めた制作者たちも共有していたのではないか。世界の何処に立つべきかをまだ迷っているかのような双子の姿を見ながら、僕はそう想像する。きっとその時期、その人たちにしか撮り得なかった一篇なのだ。奇跡のようなフィルムだ、と言うほかない。
乙黒えり(女優)
この映画をみて昔同じクラスにいた双子を思い出しました。二人はとても仲がよく、わたしは双子という存在に、すごくあこがれていました。親子や兄弟、親友ともまた少し違う自分と一番近い存在がいるというのは、特別なことです。日名子と水那子の引き寄せる力も、お互いを思う気持ちも本能的なものなのでしょうか。とても神秘的でした。映画の中で日本の素朴で美しい風景の切り取り方がとてもよく、それぞれのシーンをより印象深くさせている気がしました。心にのこる映像をみなさんにもぜひ見ていただきたいです。
秦建日子(作家・演出家)
雪が、火が、大地が、海が、そして、人が美しい。静かな気持ちになれる作品です。
佐野亨 (ライター)
『ブリュレ』の林田賢太監督は、昨年11月、32歳という若さでお亡くなりになりました。私は直接面識があったわけではありませんが、かつて通っていた映画学校の先輩であり、また映画業界の末端に身をおく同志として、突然の訃報に大きなショックを受けた次第です。
先日、『ブリュレ』が上映されていたユーロスペース階下のカフェで行なわれた林田監督の映画葬にも出席しましたが、多くの友人・映画関係者の叱咤と期待の声を受け止めながら、ひたすら身を削るような努力を重ねておられたんだなと胸に迫るものを感じました。特に脚本家の我妻正義さんの弔辞は、ついに一度も林田監督にお会いすることのなかった僕のような人間にも、その誠実なお人柄と仕事ぶりを思い起こさせる素晴らしいものでした。
映画葬のすこしまえに、私は『ブリュレ』を観ましたが、おそらく苦しんで苦しみぬいて完成したであろうその苦悩を微塵も感じさせない、とても素直で純粋な、いやそんなありふれた形容をすることさえ憚られるほどに「まっさら」な作品でした。
生涯でただ一度、ほんとうの自分、ほんとうに伝えたいことを表現することができたとしたら、それはこの映画のような「まっさら」な結晶のことを言うのでしょう。
そして、『ブリュレ』は林田監督にとって、そういう作品になってしまいました。これは忌むべきことなのかもしれないけれど、いまはただ、その美しい結晶に一人でも多くの人が触れ、なにかを感じ取ってくれることを祈るばかりです。
東北の海沿いの町で、放火を繰り返している日名子のもとに、九州から、祖母の遺骨を抱えて妹の水那子がやってきた。ふたりが4歳の時の”事故”で離ればなれに暮らしてきた一卵性双生児の姉妹の13年ぶりの再会―洋菓子店を営む叔父の家で、ふたりは一緒に暮らしはじめる。 しかし、水那子は嘘をついていた。祖母は死んでいなかった。悪性の脳腫瘍と診断された水那子は、どうしても死ぬ前に日名子に会っておきたかったのだ。なぜ嘘をつくのか分からない日名子。ほんとうの事を打ち明けることができない水那子は、家を飛び出す。電車を待つ水那子を強い予感が包み込む。予感通り、日名子の家は炎上していた。 「水那子がいないと火をつけちゃうよ」―日名子の手をとり、水那子は逃げる。行き先は、ふたりが一緒だった頃の南の海。「あの海に行けば、もう一度ひとつになれる」――。
自主映画を撮ると決めた
一卵性双生児に惹かれていた監督は、撮影の早坂、音楽の水野とディスカッションをかさね、どうせなら、「商業作品では出来ないことをやろう」と腹をくくった。演技経験のない双子の主演女優、車両から照明まで一人でやるカメラマン、普段は女優をやっているプロデューサー、シナリオライターの製作部、自主映画を撮っている助監督、影絵劇団に所属している録音技師、心臓の研究をしている東大生の制作進行、元警察官の制作主任―最終的にはプロ、アマ混成の100人以上のスタッフ、キャストが本作に参加した。
始動したが主演がいない
ほんものの一卵性双生児の少女のキャスティングが本作のキーとなる。企画当初、様々な人から名前のあるキャストを合成処理で双子に見せる方法を提案されたが、監督は実際の双子で撮影することにこだわった。オーディション誌に募集告知を掲載後、半年間、オーディションは継続された。全国から数十組集まった審査を経て、最終選考に残った3組から中村梨香、美香(当時高校二年生)に決まったのは、クランクイン直前になっていた。
美しすぎる姉妹は頭脳明晰
主演を得て本作の成立は可能となった。撮影の早坂は、冬編クランクイン4日前に、夏撮影のリールに映った中村姉妹の美しさを見て参加。中村姉妹は、クランクインまで大学受験と撮影準備の二足のわらじをはく。彼女たちの実力とともに、本作にも登場する秋田県角館で行われている厄除“火ぶりかまくら”の実景撮り時に、監督がした合格祈願もあって見事合格した。本作の後、芝居の面白さに目覚め、森岡利行監督「子猫の涙」(08)、佐々木浩久監督「恋する日曜日」(07、BS-iに参加し、舞台「心は孤独なアトム」(作・演出森岡利行)では主演を果す。今後の活躍が大きく期待される。
秋田ロケ、夏は灼熱、冬は大雪
秋田・能代では“映画「ブリュレ」を応援する会”が立ち上がった。ロケハン、スタッフルーム、宿泊施設や車両の提供、きりたんぽなどの差し入れ、市民エキストラの参加まで全面協力のもと作られた秋田・能代映画でもある。秋田での撮影は、04年夏と05年冬の2回。夏は40℃の灼熱、冬はまれにみる大雪であった。宿舎は廃校を改装した公民館、食事は自炊(1食単価80円制限)、車両はスタッフ・キャストが自走。
秋田から広島まで日本縦断ロケ
「日本の風景や四季を映画に映しこみたい」という監督の思いを受けて、メイン舞台となる秋田の後、日本各地で撮影が行われた。京都・舞鶴、3月の大雪に見舞われた広島、そして4月からは都内、御殿場、小田原、藤沢、九十九里、銚子など関東近辺で撮影。7月、浜辺に60mのレールを敷いてラストの海辺でクランクアップ。
リミックスは数えきれず
05年7月、インディーズ・ムービーフェスティバルで120分版上映。数回にわたるリミックスにより94分、91分など様々なバージョンが誕生。07年5月、秋田県能代市にて完成披露試写会を行う。今回の劇場公開にあたり、映像と音楽・効果・音声を最終リミックス、08年7月31日、渾身の71分版が完成した。 ラストシーンの海辺に流れる楽曲は、Akinoが本作のために生命力溢れる歌声を放った。
cast
中村梨香、中村美香、
平林鯛一、瀬戸口剛、小田豊
Staff
脚本・監督:林田賢太
撮影:早坂伸
プロデューサー:赤間俊秀,三坂知絵子
音楽・効果:水野敏宏
製作・配給:シネバイタル
配給協力:ゼアリズエンタープライズ
2008年/Japan/Color/Stereo/HDCAMmaster/Projector screening/ 71min
(c) 2008CINEVITAL
http://www.brulee-movie.com/
2月28日より、大阪・第七藝術劇場にて上映決定!
- 監督:林田賢太
- 出演:中村梨香、中村美香、平林鯛一
- 発売日: 2009-08-05
- おすすめ度:
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