春本 雄二郎 (監督)
映画『かぞくへ』について【5/6】
2018年2月24日(土)よりユーロスペースにてロードショー!
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――車止めとかはしていないですよね?
春本 する人員がいないです。車が来たらどうしようと心配はしていて、12時回ったしもう大丈夫かと思っていたら、テイク3のときに1台通ったんですね。雑音に邪魔をされたくなかったので残念に思っていたんですが、でも後で見たら音が一瞬入ることによって無音だった世界に現実感が出るんですよね。それはそれでよくて、入ったほうがいいなと思いました。
――あ、そうですね。静寂なシーンにノイズが入ってくるのがすごく印象に残っていますが、狙ってやったことじゃなくてそうなっちゃったんですね。
春本 そうなっちゃったんです。そのときは嫌だったけどあとあと見たら全然大丈夫で、そういうものなんだなって思いました。ただ現場の音をそのまま活かすというのはよしあしがあって、録音部的には「フォーリー」というんですけど効果音を足して、空気感とか喧騒だとかの厚みを出すほうがいいということで。あれだけ静かなのはリアルではあるんですけど、映画で観ると静か過ぎるものだということを自分でやってみて初めて思いました。2作目はちゃんとフォーリーを足したいなと録音部さんと話しています。
――スタッフにはプロの方がお名前を連ねていますね。こういう方たちに集まってもらうのも大変だっただろうなと思うのですが。
2枚ともメイキング風景春本 大変でした、本当に(苦笑)。みなさんがお休みの年末年始を使わせてもらって撮りました。「なんで12月28日にクランクインなんだ?」と言われて「申し訳ないです」って平謝りして、1月3日と4日という世間がまだお正月休みのときにも撮影して。そのあと飛び飛びでみなさんの都合の合う日を選んで撮っていましたが、1日だけ録音部さんが見つからない日があったりして。
――ああ、録音は5人ぐらいのお名前がありましたよね。
春本 はい、5人全員録音技師で、大作を手がけられている方もいるので豪華です。インディペンデント映画にはやっぱり技術力が低くて見るに堪えない作品というのが結構あるので、それだけは回避したいなと思っていました。
――こういう体制だと自主とはいえ撮影スケジュールもきちんと管理しなければなりませんよね。
春本 そうなんですよ。俳優さんにも髪の毛を染めてもらったりしているので、絶対に期間内に撮り切らなければいけなかったんですが、僕は助監督をずっとやっていたのでスケジューリングには自信があって、これぐらいなら撮り切れるだろうと考えながら脚本を作ったんです。それはデカいと思います。安く早く上げるためのエコな作業って、今の時代、助監督にすごく求められる。その経験が活かされたなと。
――自分が頼もしい助監督でもあったんですね(笑)。
春本 そうですね、まあよしあしだと思うんですけどね。悪くいえば妥協できてしまうけど、いい意味では無駄な金と時間を使うのを回避できる。
――撮影後の仕上げには結構時間がかかっていますよね。編集に時間をかけたんですか?
春本 編集は2ヵ月ぐらいでできたんですけど、整音とグレーディングに時間がかかりましたね。スタッフが働きながらやっていたので、なかなかまとまった時間が取れなくて。初めて整音の作業をするところを見せてもらったんですけど、すごく細かいんですよ。ワイヤレスで撮った音とガンマイクで撮った音の台詞の言葉1個1個からノイズを消して間を調整し、同じ波形にするとかの作業をひと台詞ずつやっていくんですよね。これは時間かかるわと思って、納得いくまでやってもらいました。
――そういうものなんですね。撮影は2015年の1月に終わっていて、東京国際映画祭への出品はその翌年の2016年になりました。しかも完成したのは上映の直前だったとお聞きしました。
春本 そうです。整音ができていない状態で応募して、それで受け付けてもらえたのでありがたかったです。
出演:松浦慎一郎,梅田誠弘,遠藤祐美,三溝浩二,おのさなえ,下垣まみ,瀧マキ,森本のぶ
監督・脚本・編集:春本雄二郎
撮影:野口健司 照明:中西克之 録音・整音:小黒健太郎 制作:福田智穂 助監督:浅見佳史
音楽:高木聡 プロデューサー:深谷好隆,春本雄二郎,南 陽 海外セールス:植山英美(ARTicleFilms)
配給:『かぞくへ』製作委員会 配給協力:コトプロダクション ©『かぞくへ』製作委員会
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