春本 雄二郎 (監督)
映画『かぞくへ』について【1/6】
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2018年2月24日(土)よりユーロスペースにてロードショー!
2016年の東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門で上映され、絶賛を浴びた春本雄二郎監督の長編デビュー作『かぞくへ』が、ついにユーロスペースにて公開を迎えた。家族のぬくもりを知らずに生きてきた養護施設出身の青年がある事件に巻き込まれ、友情と恋愛の間で揺れながらひとり闘おうと立ち向かう。誠実で愛情深く、社会的には弱者である3人の若者たちがどんどん裏目の行動を取っていくさまが観る者の胸に突き刺さり、あとあとまで彼らに思いを馳せずにいられなくなる、生々しく骨太な人間ドラマだ。主演の松浦慎一郎の実体験を元にした脚本がもたらすドキュメンタリー的なリアリティと、俳優たちの渾身の演技、そして無名の監督に賭けたプロのスタッフの確かな技術により、日本映画界に風穴を開ける傑作を作り上げた春本監督にお話をうかがった。 (取材:深谷直子)
STORY 家族の温かさを知らず生きてきた旭は、同棲中の佳織と結婚を目前にしながら、よかれと思って紹介した仕事で親友の洋人を詐欺の被害に合わせてしまう。養護施設で家族同然に育ってきた唯一無二の親友と、認知症が進む祖母のために結婚式を急ぐ婚約者の間で、次第に旭は追いつめられていき……。
――オリジナル脚本による力強いデビュー作を楽しませていただきました。主演の松浦慎一郎さんの身に実際に起きた事件を元に作った作品ですが、春本監督と松浦さんとの出会いと、このお話を聞いた経緯について教えていただけますか?
春本 松浦さんとはフェイスブックで共通の知人を介して知り合いました。その知人も俳優さんで、僕はその人にミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』(01)が面白いと熱弁していたんです。そうしたら松浦さんも『ピアニスト』がすごく好きで、でもまわりに話ができる人がいなかったらしく、「その監督に会わせてくれ」と知人づてに熱烈なアプローチがありまして。男の人からそんなことを言われるのは初めてで「怖いな」と思ったんですけど(笑)、新宿の喫茶店で待ち合わせて、3時間ぐらいハネケの話をして盛り上がって、「いつか一緒に映画の仕事ができたらいいですね」と。そういう出会いでした。その後1年半ぐらいは特に接点がなかったんですが、僕があるドラマで助監督をしていたときに「松浦さん面白いかもな」とキャスティングしたところ、ナチュラルな芝居をしていたので「いい俳優さんだな」と思って、打ち上げの飲み会で「一緒に映画を作りませんか?」という話をしました。「松浦さんが主演で、僕が監督で、お互いに名刺代わりになる作品を作りましょう」と。松浦さんもノリノリになってくれました。松浦さんを最大限に活かせる脚本を作るためには松浦さんの実話に基づいた映画にしたほうがいいと考えて、「最近自分の身に起こったことで印象深いことはありましたか?」と訊いたら、「実は親友を詐欺被害に遭わせてしまって、一緒にお金を工面したり、騙したやつを追ったりしています」というリアルな話が出てきたんです。
――そうなんですか。松浦さんのそういうお話を聞いて映画にしようと動き始めたのではなく、映画を作るということが先にあって題材を見つけていったんですね。
春本 はい、そっちが先でした。
――松浦さんは『百円の恋』(14)や最近の『あゝ、荒野』(17)など、得意分野のボクシングを活かした役で注目されていますが、映画が相当お好きなようなので、俳優として幅を広げたいという想いもお持ちだったのでしょうね。
春本 そうですね、お互いに仕事に対してのフラストレーションはあったんですよね。僕は助監督として、渡された作品が「面白くないな」と思っても作品のために、監督のためにがんばって仕事をするんですけど、自分にとってはこれにかける価値があるんだろうか?と。松浦さんのほうでも自分の演技力を最大限に発揮できる作品には出会えていなくて、お互いにフラストレーションを抱えていたので、自分たちのすべてを込めるものを作ろうと。
――まさにお二人ならではの映画が生まれるわけですが、元になる松浦さんの体験談というのは、友達を詐欺被害に遭わせてしまったということだけなのですよね? ほかに重要な設定としては、主人公が施設育ちだということと、恋人との結婚を控えているということがありますが。
春本 それは完全なフィクションで僕が作っています。
出演:松浦慎一郎,梅田誠弘,遠藤祐美,三溝浩二,おのさなえ,下垣まみ,瀧マキ,森本のぶ
監督・脚本・編集:春本雄二郎
撮影:野口健司 照明:中西克之 録音・整音:小黒健太郎 制作:福田智穂 助監督:浅見佳史
音楽:高木聡 プロデューサー:深谷好隆,春本雄二郎,南 陽 海外セールス:植山英美(ARTicleFilms)
配給:『かぞくへ』製作委員会 配給協力:コトプロダクション ©『かぞくへ』製作委員会
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