映画『さよならも出来ない』トークイベントレポート【2/2】
松野泉監督 × 遠藤ミチロウ(ミュージシャン・映画監督)

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2017年10月7日(土)~10月13日(金)、兵庫・元町映画館にて公開

遠藤ミチロウ氏遠藤ミチロウ氏トーク後半は『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』の話題に。録音と編集で参加した松野監督にとって、ドキュメンタリーを手がけるのはそれが初めてのことであり、とても面白い経験だったと伝えると、遠藤氏は「僕もあれは初めての映画で、話が出たときに監督がまだ決まっていないというので『じゃあ僕がやります』とか言ったはいいけど、『監督って何やるんだよ?』みたいな感じで(苦笑)。『ここを撮りましょう』というのを提案しただけで、実際に撮られたものがどういうふうに編集されていくかもわかっていなくて、だからほとんど全部松野さんにやってもらった感じで。実質あの映画の監督は僕じゃなくて松野さんじゃないか?と思っています」と松野監督に感謝を告げた。

松野監督は当初の予定からかなり変わっていったこの作品の制作過程について説明。実は本作は、配給を手がけた京都・舞鶴に拠点を置く映画会社シマフィルムが、遠藤氏が舞鶴と福知山でライブをするのに合わせ、その2日間でインタビューなども行って短い作品を作れたら、と企画して始まったものとのこと。「そうしたらそのすぐあとに震災が起こって、遠藤さんは福島にご実家があることもあって、これは遠藤さんに付いて全国を回ったらどうか?ということになって。遠藤さんが僕らに監督的に何か指示していくというのではないんですけど、遠藤さんが行く場所行く場所とか、最終的にはプロジェクトFUKUSHIMA!という大きなイベントにつながるそこまでの道行きを遠藤さんが連れてってくれるのに僕らは付いていっただけで、そうして最終的に出た素材がちゃんと物語になって」と松野監督が振り返ると、遠藤氏も「僕がいろんなところをツアーしている中で撮ってほしい地方を全部撮ってもらい、僕の中の日常と震災で起こった非日常が合体して、最終的には福島に行っておふくろと会ったりというところまで行っちゃったんです」と語った。

松野泉監督松野泉監督そんな遠藤氏は、『さよならも出来ない』のワークショップで俳優たちと「素の自分とカメラの前に立ったときに台詞を喋ることとの間の距離感にどう折り合いをつけるか?」ということを考えてきた松野監督にとって、被写体としてとても興味深い対象だったよう。「ライブでパフォーマンスをするときの過激なミチロウさんと、そうじゃないときの素朴で優しい遠藤さんとが僕にとって衝撃的なぐらい違っていて。そういう部分の線引きは遠藤さんの中でどうされているのかな?と思うんですが」と問いかけると、遠藤氏は「あんまりしていないんですけどね。覚悟してステージに出ていくというのはあって、特にスターリンのときはステージに出る瞬間に『もう何が起こってもしょうがない』みたいな変な覚悟をして出ていくんですけど。気分をワーッと切り替えるというよりは、そんな感じですね」と答えた。

さらに松野監督が「ソロライブをやるときはスターリンのときとまた全然違う気がして、それも不思議で追いかけていてすごく面白くて。でもどこかでやっぱり日常の遠藤さんは、インタビューとかしていてもなんか見えないなあ、というのがあったんですけど、それがようやくご家族のところに行かれたときに見え隠れしたような感じがして、『ああ、やっと遠藤さんが撮れた』と思いました」と振り返り、「帰省のシーンを撮ることに、遠藤さん的には抵抗はなかったんですか?」と問うと、遠藤氏は「いや、実家に行っておふくろに会ったときの自分というのは、いちばん見せたくないところだったんですよ。でも監督という立場からすると、そのいちばん見せたくないところを見せると作品的には面白いんだろうなという、まああきらめですよね」と苦笑いした。松野監督が「じゃあ逆に言うと、別の監督を立てていたらあれは撮れなかったかもしれないのでしょうか?」と尋ねると、遠藤氏は「どうでしょう? 他の監督だったらもっと露骨に出したんじゃないですか? 気持ち的には結構抵抗したんですけど、『やっぱりこれを撮るしかないのか』と自分で納得させて、そういう意味ではあそこは松野さんのシーンでしたよ」と、ずっと撮影に同行して行動を見守ってくれた松野監督をあらためてねぎらい、松野監督も「同行していた全員、あれが撮れたときに『ああ、これでこの作品が完成した』という感じがあったんですよね」と喜びを語った。

最後に司会者より「そんなおふたりの愛の結晶(笑)」と、8月に発売されたばかりの『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』のDVDが紹介された。遠藤氏の「付録で大阪でのスターリンの復活ライブと、フェスティバルFUKUSHIMA!のライブを収めた90分のDVDが付いています。こっちも松野さんが編集して見ごたえがあるので、よかったらぜひ買って観てください」との告知とともにトークは終了した。

(2017年9月12日 新宿ケイズシネマで 取材:深谷直子)

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第39回PFF 9月24日(日) 17:30~『ワンピース・チャレンジ!』にて、
松野泉監督作品『大航海時代』(4分08秒)上映 公式サイト
さよならも出来ない GOOD/BYE ( 2016年/HD/STEREO/76分 )
シネマカレッジ京都 俳優コース制作実践クラス14-2 修了作品
出演:野里佳忍、土手理恵子、上野伸弥、日永貴子、長尾寿充、龍見良葉
余部雅子、柳本展明、上西愛理、今井理惠、宮前咲子、篠原松志、田辺泰信、堀田直蔵、辻凪子
監督・編集:松野泉
撮影・編集:宮本杜朗 美術:塩川節子 録音:斎藤愛子 制作:鶴岡由貴 録音・助監督:斗内秀和
メイク:森島恵 音楽:光永惟行 WEB制作:境隆太 デザイン:中西晶子 プロデューサー:田中誠一
制作・配給:シマフィルム株式会社
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2017年10月7日(土)~10月13日(金)、兵庫・元町映画館にて公開

2017/09/17/21:02 | トラックバック (0)
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