バカ映画などと銘打たれた自主映画に何だか理由もなく拒否反応を起こしてしまう筆者。
(だってたいていそんなにバカでもないんだもの)。
正直この「電撃BОPのセクシーマザーフッカーに!!」というタイトルとチラシを見たときも、
またそんな類の自主映画かいなと舐めた態度でかかっていたのだが…。いやー笑った。映画見てここまで笑ったのは「フライングハイ」
以来かも知れない。
全編通して雷雨のように降りかかってくるドアホな会話。強引にねじ込まれるギャグの数々。二回に一回滑ろうがおかまいなし。
これが変な中毒性でもあるかのようにどんどんクセになる。気づいたときには笑いキノコでも食べさせられたかのように、ゲラゲラ笑っていた。
そして終わったときには、不思議と爽快な気分で訳の分からない力が漲っていた。劇場を出たら忘れる映画もそれはそれでいいが、
この映画は終わって飯食うくらいまでは引きずるだろう。
アメリカ軍が落とした不発弾を五百円で見せて商売している岡島。その岡島のところへ元カノ、 トモコがやって来る。彼氏が藤北組というヤクザの金を持ち逃げしてとっ捕まってるから助けてくれと。いや、助けに行けと。 途中岡島はトラキチというヤクザ狩りとかしながら世直ししている最強ジジイから追いかけられることになる(このジジイが 『岸和田少年愚連隊』のカオルちゃん以上のキャラ!)。でもって藤北はトモコの彼氏を問い詰めたとこ、金はトラキチに取られたと。 トラキチを追う藤北、藤北を追う岡島、岡島を追うトラキチの三すくみで物語は進行。 と言うより溢れんばかりに詰め込まれたギャグで物語は信じられない方向に突き進み、ラストには爽やかさまで感じさせる。 その突進力たるや侍バツベイもびっくりであるが、この映画は突進だけではない。登場人物全員がちょっとぬるいというか、 人間補欠合格のような連中ばかりなのだが、そんな連中を見つめる監督の目線は常に乱暴な優しさに溢れている。 そんな連中の人間賛歌の映画でもあるのだ。
そしてそんな登場人物たちを演じる役者陣もまた素晴らしい。 特に主演の中井正樹の奇妙な風貌とセリフの言い回し。恐らくこの映画を観て主人公のことを好きにならない奴はいないだろう。 何だかふと「ワイルド・アット・ハート」のときのニコラス・ケイジを思い出させた! 関西の劇団で活躍している俳優さんだが今後も注目だ。また特筆すべきは女優陣がみんな無駄に(失礼!)美人。 この層の厚さは何なのよ。
監督の島田角栄は大阪在住の映画監督。これが二作目。一作目の「家族ロック」
は海外の映画祭にも招待され話題になったが、残念ながら未見だ。「デビュー作は、構想その映画を撮ったまでの歳」
とどこかの映画監督が言っていたが、二作目にしてもこの監督はそうではないだろうか。
自分が面白いと思ったことはすべてぶち込むこの姿勢が拍手喝采ものだ。今後の活躍が最も楽しみな若手監督の一人だ。
ぜひとも一人でも多くのお客さんにこの映画を体感して頂きたいと思う次第である。
(2007.3.10)
3月24日よりUPLINK Xにてレイトショー公開
電撃BOPのセクシーマザーファッカーズに!! 2006年 日本
監督:島田角栄
脚本:島田角栄
撮影:谷口譲
出演:中井正樹,大西明子,デカルコマリィ,坂平堅太,伊黒直美,
小寺智子,ハスミマサオ,かわら長介 他
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