脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記

『大激闘』最終回、『特命刑事』#01
『大都会PART II』#06、07

第二十三回

佐藤 洋笑

尊心を殺すことにも慣れました。


5月13日

ブリット何故か慌しい日々が続き、火曜深夜のリピートで、『大都会PART II』#06「傷だらけの逃走」(脚本:石松愛弘、監督:舛田利雄)を観る。

ホンの弾みで取引相手のヤクザを刺殺してしまったチンピラ・椎谷健治。彼は渋谷病院に運び込まれるが、そこにも迫る口封じの殺し屋・阿藤海らの魔の手。追い詰められた椎谷はガードしてやってる黒岩君らの気も知らず、恋人・四方正美と共に逃走。地方出身者のルサンチマンを語りつつ、行く先々でトラブル巻き起こしつつ、派手な逃避行を繰り広げる――。

と、なんだか『特捜最前線』みたいやん、とボンヤリと感じていたら『特捜』では冠シリーズさえあった石松愛弘氏の脚本でした。そーいや、『大都会PART II』と『特捜』は同じ週に本放送開始しているのですが、石松氏は『特捜』のほうが水があったのか、『大都会』にはこの一本しか残していないかと存じます。しかし、大映では田宮二郎主演の『黒の試走車』など、いわゆる『黒』シリーズ、そして東宝の加山VS(元)大映の田宮の夢のマッチが実現する『豹は走った』なども手がけた石松氏。もう何本か参加していたら、独自のウェットとハードを併せ持つ佳作が生まれていたかも知れませんね。

ちなみに本話のクライマックスは椎谷、阿藤、黒岩君らが入り乱れる大カーチェイスなのですが、コレがなんとも『ブリット』ソックリ。モチロン、『ブリット』のカーチェイスは数多の影響を後の作品に与えているのですが、今回は一般者が巻き込まれるタイミングや、車がカメラに激突しかけるハプニングやら、かなりの場面にオマージュがありました。当時、リバイバル上映でもあったのかしら。


5月15日

“10 秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#16「人間狩り」(脚本:峯尾基三 監督:舛田利雄)を観る。

以下、予告より抜粋。

――南の果ての、白い珊瑚礁の島。そのジャングルの奥深く、住み着いたアニマル5匹!
殺さなければ殺される。熱く残酷な闘いに、成るか、吾郎と進司のサバイバル?――

化石の荒野一部視聴者の抗議、低迷する視聴率などを前にして、ついに『大激闘』が完結。その驚愕の最終回は、片桐竜次、中西良太のマッドポリス二人組がさらわれた南の島にて、ジャパンマフィアのヘロイン製造部隊の暇つぶしとして人間狩りが行われていたというお話でした。密林の大銃撃戦と、東京での手荒い捜査が平衡して描かれる前半で巧みに視聴者を引っ張り、クライマックスは南の島で大銃撃戦! 辰っちゃん、貴方はオンナを撃つ直前に「もったいねえ」とつぶやいておられましたが、それは本音なんでしょうね。オレにはわかります。

ちなみに、屋久島ロケでの銃撃戦では実弾(!)を使用したと、監督自身がその著書にて楽しげに述懐されていましたが、オレはこのネタ、かれこれ10年以上前、大変にお世話になっている某氏にとっておきのネタとして教えていただき、腰を抜かしたモンでした。その際、某氏から硬く口止めされ、オレ自身もこんなデンジャラスなネタ書けるかよと思っていたんですが、まあ、ご本人が公言されているのですから、いいでしょう。

というわけで、結局、刑事ドラマじゃなかったんだなあ、この番組。画面を重く彩ってきたJM幹部・島田正吾らの存在もさておき、極限のバイオレンス描写が続く45分。JM壊滅はあっさりとナレーションで処理され、番組は重厚に完結いたしました。スゴイなあ、マッドポリスは。

茶の間に殴りこんだ空前絶後の“アクション映画”『大激闘 マッドポリス'80』しかし、その闘いはまだまだ終わらない! どうする、どうなるマッドポリス!?

とまれ、闘えマッドポリス! 来週も、撃て!殺せ!ブチ壊せ!


5月16日

『大都会PART II』#07「ダイヤモンドは死の匂い」(脚本:佐治 乾、大原清秀 監督:村川 透)を観る。

三億円相当の宝石類の強奪事件発生! その参考人として呼ばれる草野大悟。その幸薄夫人・杉本美樹と、黒岩君にはワケありの過去があった――。

というわけで、毒婦・中山麻里が闊歩する前半から真犯人は丸わかりで、彼らと黒岩君たちのバトルと、草野・杉本の最底辺を生きるアベックのドラマを並行して描く、実に『大都会PART II』らしい一本。黒岩君と杉本の関係が、本当に匂わされるだけで、視聴者の想像にゆだねられるあたり、実に粋な作りです。これは、ちょっと当時の渡でないと持たない話でしょうな。

なお、今後の放送予定はこちら


5月22日

フレンチ・コネクション2ほんの一週間で彼らは帰ってきた!――ってなわけで、“10秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』改め『特命刑事』の#01「海底の黄金」(脚本:宮田雪 監督:野田幸男)を観る。

約4ヶ月に渡って繰り広げられた極限のバイオレンスに対する拒否反応に制作側が講じた手段は、下町の置き引きや下着泥棒など吹けば飛ぶような犯罪者ばかりを逮捕してきた『刑事くん』こと桜木健一と履歴不詳の新人と、二人の新メンバー投入によるマッドポリスのイメージ・チェンジでした。

確かに、本放送当時、つい直前まで『特捜最前線』のレギュラーだった桜木の投入には驚いたモンです。まるで左遷されてきたかのようでしたからね。んでもって内容は、海底に眠る黄金の奪取をもくろむギャングたちを、マッドポリスがスキューバ・ダイビングを駆使して追跡するという冒険モノタッチ。脚本は宮田氏というのも、ファミリー層を意識した制作路線の転換を感じさせるものです。

しかしながら、我らが野田幸男の演出は、いやいやなんのといつもの調子。マグロのように並ぶ悪人ドモの死体カットの挿入、走って船を追いかけた末に埠頭で狙撃する『フレンチ・コネクションⅡ』を彷彿とさせる我らが渡瀬恒彦の雄姿と、意地になったかのように見所がちりばめられておりました。

――にしても新オープニングで水中銃を構える桜木。『刑事くん』や『柔道一直線』の彼をリアルタイムでは知らず、後の時代にビデオで観た『仁義なき戦い 完結編』にて水中銃で田中邦衛を襲撃しつつも失敗し、自らの足を銛で打ち抜き、ションベンちびる姿や、『新・仁義なき戦い』にて生きたまま溶鉱炉に叩きこまれる姿で桜木と出会った身としては、悪い冗談にしか思えませんな。

とはいえ、やはり先週までの大戦争ドラマに慣れている身としては哀しいものがあります。来週こそは、あの大戦争アクションを!

とまれ、闘えマッドポリス!撃て!殺せ!ブチ壊せ!

なお、今後の放送予定はこちら

ブリット
ブリット
出演:スティーブ・マックィーン,
ロバート・ボーン,ジャクリーン・ビセット,ロバート・デュバル
監督:ピーター・イエーツ
おすすめ度:おすすめ度4.0
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フレンチ・コネクション2
フレンチ・コネクション2
出演:ジーン・ハックマン,フェルナンド・レイ
監督:ジョン・フランケンハイマー
おすすめ度:おすすめ度3.5
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2008/05/28/16:56 | トラックバック (0)
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