脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記

『大激闘』#5、『大都会』#26

第十四回

佐藤 洋笑

ポストにはダイレクトメールだけ、投げ込まれている。
――と、都会の孤独をしたためたのは来生えつ子さんですが、今ならさしづめ迷惑メールばかりってな所でしょうか。「亜希 26歳 純粋な出会い」「琴音 23歳 オトナの出会い」「急募!おとこの人 即あえます!」「寂しいから会いたいの・・・(^_^;)」ずらりと並ぶ魅惑のタイトル。オレからはもっとも遠い場所にある言葉達。

――嗤わせるなよ。


2月21日

不良番長 口から出まかせそんな鬱屈を酒で紛らわしすぎて、前後不覚になりつつ成り行きで友人と“10秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#05 「シンジケートの女」(脚本:高田純 監督:野田幸男)を観る。

冒頭、突如自動車が民家に突っ込み、ぞろぞろとマッドポリスが現れる趣向は、高田氏が荒井晴彦御大とともに手がけた『スーパーGUNレディ ワニ分署』からの流用であろうか。そして、そこから下り立つ渡瀬恒彦以下、マッドポリスの面々はダークなスーツにボルサリーノ、唇には花一輪と、禁酒法下のマフィア・コスプレでキメてトミー・ガンを乱射! このデタラメな導入部からして、さすがは本家オリジナル『不良番長』シリーズの名匠、野田幸男監督(日本映画データベース)である。

山城新伍のアドリブを撮り過ぎ、フィルムが足りなくなった際には、自ら倉庫のフィルムを盗み出したなど、様々な逸話を持つこの名監督。梅宮辰夫がノリで「レッツ・ゴー」と叫んだ際に、東映の観客にそんな難しい言葉はわからないとのたまった、過剰までのサービス精神、というか気配りが今回も全面に炸裂。絶望的にアナーキーな展開のわりに、実に隅々まで練りこまれたカット割で見せる銃撃戦(そのたびに流れ弾で割れる家具や引火する酒などのショットが挿入される)。笑っていいのか視聴者に考え込ませるブラックなギャグ(容疑者・団次郎の傷口に塩とタバスコを摺り込む描写は圧巻)。

こうして観てるこちらが口あんぐりとしている間に、野田監督の最高傑作にして、東映バイオレンスの一つの頂点『0課の女 赤い手錠』を彷彿とさせる大カーチェイス――っつーより、クルマ同士の凄惨なドツキ合いになだれ込み、、ジ・エンド。モチロン、恒彦は自らハンドルを取り、悪路走行中に片足でドアを押さえつつ敵を狙撃という荒業を開陳。いやあ、テレビの限界を超えたバイオレンスを魅せる!という監督の鋼鉄の意志が全編に漲る逸品でありました。もともと、『大都会』『大追跡』『探偵物語』といったNTV系のアクション・ドラマは、恐らくは、日本のプログラム・ピクチャーのノリを再生させるのが意図のもと制作されたのであろうということはよく指摘されますが、この回は特にそうしたテイストが明確だったのではないでしょうか。それも、少々やりすぎなくらいに感じるのが野田監督の持ち味であり、オ レが偏愛する所以であります。

とまれ、闘えマッドポリス!来週も、撃て!殺せ!ブチ壊せ!

なお、今後の放送予定はこちら

来週も野田監督が登板!シリーズのメインライター・永原秀一氏と組んだ傑作「殺しの追跡」が控えています。お見逃しなく!


2月22日

『大都会―闘いの日々―』#26「顔」(脚本:永原秀一 峯尾基三、監督:小澤啓一)を観る。

ヒモのヤクザを殺害した内藤杏子。彼女から個人的に相談を受けていた東北出身の朴訥な刑事・粟津號の意見もあり、当初の捜査は彼女へのやむにやまれずの正当防衛と、同情論に傾くが、一人訝る黒岩君が裏づけを取るうちに、内藤のもう一つの顔が浮かび上がる。そして真実を目のあたりにし、「あのオボコ娘が…」とショックを受ける粟津。わかったように語る裕次郎、しんみりと酒かっくらう黒岩君。そこにテーマ曲が盛り上がって警視庁~新宿の空撮となりエンド・ロール――。

と、なんだか『特捜最前線』のようだった今回(『特捜』は『大都会』の翌年スタート)。もともと、『大都会』は、半年の予定が好評で延長されたとのことですが、そこと渡の体調がまだ優れなかったという事情も絡んだのでしょうか。21話あたりから黒岩がロクに出てこない話が続きましたが、今回も恐らくその一環でしょうな。いつもは地味に刑事部屋を彩っていた名優・粟津號(公式HP)にスポットの当った回でした。

しかし、『一条さゆり 濡れた欲情』でのデビュー以来、神代辰巳作品の常連だった粟津と、昭和五十年代初頭のグレてるセーラー服の少女といえばこの人の内藤杏子の組み合わせという、一時期でもロマンポルノに被れた人にはタマラン回でした。ちなみにオレの内藤杏子ベスト・バウトは宮下順子、桂たまき、ひろみ摩耶、絵沢萌子と濃ゆいメンツの揃った『主婦の体験レポート 新・おんなの四畳半』(監督:武田一成)れす。でも、第一作のほうしかDVDなってないみたい。まあ、それはさておき、それこそ、今回は一人の女が都会の生活の中でいくつもの顔を持つようになるというモチーフの回だったのですが、この当時の映像・映画業界というのも様々な“顔”を持っておりましたな。このその場その場での適応力といいますか、多面性が当時の作品の膨らみにつながっていると書いたりしてしまうのは暴論でしょうか。

なお、今後の放送予定はこちら

次回から、終盤五部作とでも呼びたくなる力作が続きます。

不良番長 口から出まかせ
不良番長 口から出まかせ
監督:野田幸男
出演:梅宮辰夫 山城新伍 大信田礼子 安岡力也 宮内洋
発売日:2007-08-03
おすすめ度:おすすめ度5.0
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一条さゆり 濡れた欲情
一条さゆり 濡れた欲情
監督:神代辰巳
出演:一条さゆり 伊佐山ひろ子 白川和子
発売日:2006-12-22
amazon.co.jpで詳細をみる

2008/02/26/12:41 | トラックバック (0)
佐藤洋笑 ,脳内i-pod
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