脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記

『大激闘』#6、『大都会』#27

第十五回

佐藤 洋笑

都会の娘のココロは半分ガレキの山。
――な、ことぐらい重々承知しているつもりでしたが、まあ、目の当りにするとヘコみますな。しかし、“裏切りは女のアクセサリー”ぐらいのことをシレっと吐ける男になるための修行としての今日であり、明日である。


2月29日

最も危険な遊戯

前日、若松孝二監督の新作『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の特別先行上映@テアトル新宿に足を運んでいたため、見逃していた“10秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#06「殺しの追跡」(脚本:永原秀一 監督:野田幸男)を観る。

前回に引き続き、野田幸男監督が登板。異様に奮っている予告編からして、期待が高まりましたが、それをまったく裏切らない、60分枠のテレビドラマとしては暴挙とも言える荒業が炸裂!

ジャパンマフィアの資金源とみなされる実業家・根上淳。彼の抹殺(!)が今回のミッション。マッドポリスは、移動中の根上を狙撃、ダンプカーで襲撃、火炎瓶投擲と集中攻撃し、彼の経営するスポーツジムに追い込む。だが、ささいなアクシデントから根上はヘリコで逃亡。作戦の転換を迫られたマッドポリスは、要所に警備装置が仕込まれた根上のマンションへの強行突入を決断――。

これ、もう刑事ドラマじゃないよ! 脚本は日活アクションを経て、石原プロの暴力番組のブレーン的存在だった、『最も危険な遊戯』の永原秀一。この時期は『西部警察』のメインでもあったはずだが、『大都会』に比べると、仕掛こそ派手だが、ドラマはグっとマイルドになっていた『西部』の憂さを晴らすような展開と描写に観ていて腰が抜けること請け合いです。

そして相も変わらず冴えまくる野田演出のもと、山口美也子はMPの囮とされて蜂の巣となり、辰っちゃんは容赦なく敵を背中から撃つ。クライマックスのマンション襲撃では野田監督お得意の惨殺・器物破損カットが挿入されまくり、目まぐるしく殺戮が繰り広げられる。ラストの狙撃はテーマ曲のスロー・アレンジをBGMに哀感あふれる名場面。しかし、フィルタかけて強引に早朝扱いしているのがバレバレ。だが、そんなの気にせず炸裂する暴力は野田監督の力業。

何かに憑かれたようなこの殺伐とした展開。ハードボイルド、というのも気が引けるこの全編に漲る殺意は何なのでしょう。60年代のニヒリスティックな再現とも思える軽佻浮薄な80年代に向けて、作者達が放った弾丸の群れが時を越えてオレの胸を撃つ。どうも、オレのあずかり知らぬところで、バブルがまたはじけているようだが、またもや繰り返されそうな愚かしい時代を前に、野田演出のアナーキズムとダイナミズムは今一度世間に問われるべきである、とオレは断言します。

とまれ、闘えマッドポリス!来週も、撃て!殺せ!ブチ壊せ!

なお、今後の放送予定はこちら

来週は名手・村川透監督が登板! 怪作『野獣死すべし 』直前の、ノリにノってる時期の演出が満喫できます。


同日

『大都会―闘いの日々―』#27「雨だれ」(脚本:倉本聰、監督:舛田利雄)を観る。

Hotwax責任編集 映画監督・舛田利雄~アクション映画の巨星 舛田利雄のすべて~ (単行本) 妹を食い物にされ、風俗に売られた柴田侊彦。当然のごとく逆上し、ライフル片手に、妹を食い物にした男達に報復を敢行。そして、追い詰められた柴田は、バツイチ女性・稲野和子の部屋に篭城する。数奇な反抗の経緯から、柴田を憎みきれない稲野。そして、自身もよく似た境遇を持つ黒岩君は悩みながらも捜査を遂行。しかし、上司・佐藤慶は無情な命令をくだす――。

巨匠・舛田利雄登板!全盛期の日活アクションの帝王にして、佐藤純彌と共に“超大作といえばコノ人!”な監督でもある。そのせいか、団地も貸し切り、機動隊などのエキストラも大量動員した。スケールアップした映像が展開。この辺、『大都会PARTⅡ』以降の石原プロのテイストの原点かも知れませぬ。その癖スコブルテンポ快調なあたりが『人間革命』なんて題材でもめっぽうオモシロく作り上げてしまう職人監督の腕でしょう。

しかし! このシトッ!ペタッ!ズシッ!と暗い影がのしかかってくるようなウェットでヘヴィなテイストはこの『大都会―闘いの日々―』でしか味わえないものです。倉本脚本は相変わらずの冴え。恐らくは企画段階から、このプロットは練られていたのでしょう。黒岩君の経歴ほか、用意していた素材を見事に当て込み、料理してます。こうなると構成の妙とか言うより、チェスや将棋の段位戦を観ているようです。

そうした突き放した作劇ゆえの“冷たさ”が倉本脚本からは感じられ、あまり好きにはなれないのがホンネなのです。だってアナタ「北の国から」とか観て、ホノボノとした気持ちになんてなります?
オレは余りの救いのなさに、いつも鬱になります。が、『大都会―闘いの日々―』についてはそうした気持ちになりません。それは、そうした状況にいても、結構タフに生き延びている黒岩君=渡哲也の熱演のおかげで、倉本ドラマのメカニカルな構造を突き抜ける熱さが、生生しさが伝わるからかと思います。『西部』あたりの気の抜けた渡の姿しか見ていない方は、是非一度当時の渡の演技にふれてみてください。

なお、今後の放送予定はこちら

次回は、倉本とともに作劇を支えた斎藤憐と舛田利雄のタッグが観れる「不法侵入」です。

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2008/03/03/12:53 | トラックバック (0)
佐藤洋笑 ,脳内i-pod
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