『大激闘』#08、『大都会』#30
追いかけることも呼び戻すこともしませんが、あのヒトはオレのことを思い出すこともなさそうです。
3月20日
“10秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#08「破壊」(脚本:柏原寛司 監督:村川透)を観る。
都内某所の美術館。その内部にはジャパンマフィアの武器弾薬が大量に隠されていた。「シルバー仮面」でも武器商人だった玉川伊佐男以下、魔術師と呼ばれた男・白乾児(パイカル)の声でおなじみ江角英明(当時は江角英名義)らジャパンマフィアが鉄壁の警備を敷く難攻不落の要塞を攻略し、JMの武器弾薬を破壊すべく、マッドポリスは地下水道からの突入を試みる――。
これまた、思い切り刑事ドラマの枠を逸脱した展開が炸裂する本作。地上より地下のメンバーを指揮する我らが渡瀬恒彦と江角の頭脳戦をジワジワと盛り上げるのは柏原脚本ならではの妙味。自らを犠牲にしてでも任務を遂行すると、悲壮な決意を見せる志賀・片桐のピラニア軍団コンビ。地下水道で通信を遮断される絶望的な状況に“でも、やるんだよ!”な男気を炸裂させ、穴掘りに邁進する梅宮辰っちゃん。そして辰っちゃん以下メンバーの任務遂行を信じ、ひとりルガーP08片手に死地に赴く恒さんと、お約束ながらもツボを抑えた男泣き場面の数々。カポネ団の練鑑仁義の友情は不滅です。なにより、奥深すぎて判りづらい辰っちゃんの魅力がホノボノと伝わるマジックがここにあります。
青みがかったストイックなカラーが印象的な地下水道での大銃撃戦&ダイナマイト投擲の派手な攻防の映像美は圧巻。恒さんはまたもや自ら名車マツダRX-7のハンドルを握り、スティーヴ・マックィーンの『ブリット』よろしく車載カメラが緊迫感を生むカーチェイスに挑みます。東映メカニック路線がより洗練されて蘇えったかのようです。かように、名カメラマン仙元誠三の手による映像は、フィルム・ノアール的なトーンが貫かれ、なかなか酔えます。また、前回でも試みられていましたが、派手なアクション・シーンにあえてエンディング・テーマの哀愁のメロディを選曲する村川演出が今回は実に効果的。「ルパン三世」なみのド派手プロットをオチャラケなしでシリアスにストイックに描ききる脚本と演出が圧勝しております。1時間で終わってしまうのが惜しい逸品です。
ってなワケで、シリーズの中でも名作の誉れ高い本作。久々の鑑賞でしたが、たっぷり楽しんでしまいました。この頃の村川監督は怪作『野獣死すべし』をモノにする直前のノリにノってる時期。ファンの方なら必見かと存じます。
とまれ、闘えマッドポリス! 来週も、撃て!殺せ!ブチ壊せ!
なお、今後の放送予定はこちら。
次回は、洒脱なトーンがウリの東宝ニューアクションの旗手・西村潔が登板する「殺人刑務所」です。
3月21日
『大都会―闘いの日々―』#30「縁談」(脚本:倉本聰、監督:村川透)を観る。
不意に黒岩君に舞い込む城西署四課事務員・新井春美との縁談。だが、幸薄を身にまとう篠ヒロコに心奪われている黒岩君は酒の力を借りて篠にプロポーズ。自らの暗い影を断ち切る期待もこめて受諾する篠。時同じくして、元刑事の新井春美の父が殺害されたことから、日本の暴力団の全国統一構想が明らかに。そのフィクサー山内明を追う過程で、黒岩君は、かねてより懸念していた篠とヤクザ社会のつながりの現場に邂逅する――。
ジャパンマフィア(ぢゃないって)の誕生という大ブロシキを広げつつ、話は完全に迫り来る不幸の中で黒岩君と篠の恋は如何に!?という方向に傾いたラスト直前。実に絶望的なシチュエーションで黒岩君が篠を目撃する場面は子どもが見たら一生女性不信に陥るであろう名場面。オレも小学生時代の初視聴時のインパクトを忘れていません。そして、30過ぎて再見しているわけですが、自身の体験と重ね合わせるような意味合いが加わり、さらに胸に染みました。がんばれ黒岩君! オレのほうが先に崩れそうですが。
それにしても、渡哲也ってホントに達者です。村川演出らしいクラシックが選曲される喫茶店。ステンドグラスを背景に訥々と真情を語るあたりの表情、生半可なスターには醸し出せない味があります。改めてホントにいい役者だなあ、などと僭越ながら感じ入る次第です。
なお、今後の放送予定はこちら。
次回、倉本センセの最高傑作とも名高い最終回「別れ」です。
ブリット
出演:スティーブ・マックィーン,
ロバート・ボーン,
ジャクリーン・ビセット
監督:ピーター・イエーツ
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野獣死すべし
出演:松田優作,小林麻美,
鹿賀丈史,室田日出男
監督:村川透
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