キャリー・ジョージ・フクナガ
(映画監督)
映画「闇の列車、光の旅」について
2010年6月19日(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか
全国順次公開
「闇の列車、光の旅」こと「Sin nombre」はイギリスの雑誌で絶賛されていて知った作品だった。「Sin nombre」が「闇の列車、光の旅」の邦題になり、日本でも公開され、監督も来日することを知って、急きょ行ったインタビューが次である。キャリー・ジョージ・フクナガ監督は77年生まれの若き新鋭で、日系3世の父親とスウェーデン系アメリカ人の母親をもつ日系アメリカ人である。(取材:わたなべりんたろう)
キャリー・ジョージ・フクナガ(脚本・監督)
1977年アメリカ・カリフォルニア生まれ。カリフォルニア州立大学サンタクルーズ校を卒業後、ニューヨーク大学で映画を学ぶ。脚本家、撮影監督、監督として、北極圏から西アフリカまで世界中を旅した経験をもつ。現在は、ニューヨークに拠点を置いて活動中。日系3世の父親とスウェーデン系アメリカ人の母親を両親に持つ日系アメリカ人の彼は、世界で最も期待される32歳の若手新人監督。母国語の英語の他、フランス語、スペイン語、ポルトガル語なども流暢で、語学堪能。これまでに2本の短編映画を撮っており、特に2005年に脚本・監督を務め、サンダンス映画祭で上映されたショートフィルム、「Victoria para Chino」は、学生アカデミー賞やBAFTAロサンゼルス支部の特別賞を含む、24個以上の賞を世界中で受賞した。2009年サンダンス映画祭で長編初監督作品『闇の列車、光の旅』が大絶賛され、監督賞を受賞した直後に、今後2作品の契約をUniversal、Focus Featuresのそれぞれと結んだことがビッグニュースとなった。Universal作品では脚本を、Focus Features作品では、脚本・監督をつとめることになる。米メジャーでの仕事を前に、英ルビー・フィルムがBBCフィルムと共同で製作予定の「ジェーン・エア」で今年メガホンをとることになった。
キャリー・ジョージ・フクナガ(以下、フクナガ) 本当だ。すごいな。ほめているのかな(笑)?
わたなべ 絶賛です。フクナガ それは嬉しいね! サンダンス映画祭で監督賞を獲ったあたりから、徐々に今作のことが広がっていって、ここまでになったんだ。日本でも公開されることになって嬉しいよ。
わたなべ 今作で思い出したのが「シティ・オブ・ゴッド」、「スラムドッグ・ミリオネア」、「動くな!死ね!甦れ!」でした。どの作品も熾烈な環境で生き抜こうとする子供たち(若者たち)を描いています。フクナガ 「シティ・オブ・ゴッド」と「スラムドッグ・ミリオネア」、はよく比較されるね。前者は同じくラテンアメリカが舞台で、後者は電車の屋根に乗って移動するシーンがあるからだろう。どちらも素晴らしい作品だと思う。「動くな!死ね!甦れ!」は知らないです。
わたなべ 90年のカンヌ映画祭でカメラ・ドール(最優秀新人監督賞)を受賞したロシア映画です。少年と少女の逃避行を描いています。日本版ですがビデオを持っていますので、よかったら今度持ってきます。フクナガ ありがとう。とても面白そうだね。
わたなべ 今作ではデビュー作と思えないぐらい、全編に渡って、細かいカットなどは使わず、堂々と撮っているのに唸りました。フクナガ ぼくは撮影監督としても活動しているので、その点は気をつけたんだ。決して予算にめぐまれた作品ではなかったが、安っぽかったり、よくテレビで見るような早いカット割の作品にはしたくなかった。何よりも観客に主人公たちと一緒に旅に出てほしかったから。映画を通して「旅を体験」してほしかったんだ。
わたなべ ギャングのアジトに入るシーンはワンカットで、かなりの長回しでした。秀逸でしたが人の出し入れも多く、大変だったと思います。フクナガ あのシーンも、主人公の恐怖を一緒に体験してほしかったんだ。確かに大変だった。本当は、もっとエキストラで人が来るはずだったんだが、当日になって、あまり人が集まらなかったんだ。
わたなべ こちらも助監督の経験があるので、現場での人集めなどの同じような苦労は分かります(笑)。フクナガ だから、うまく人を配置することで、そう見えないようにしたんだ。ソファに5人いてほしいところを2人にしたりね(笑)。エキストラは俳優ではないから、はっきりと動きを指示して撮った。実際のギャングにも参加してもらったのですが、撮影監督のアドリアーノ・ゴールドマンは「シティ・オブ・メン」(「シティ・オブ・ゴッド」のテレビ版)も撮っていたから、こういうシーンを経験済みなのも役立ったんだ。時間も限られていた中で、いいシーンを撮ることができた。
わたなべ 製作総指揮にメキシコ映画を代表する若手俳優のガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナの「天国の口、終りの楽園。」の2人が入っています。フクナガ 彼らは「ルドandクルシ」でも共演しているけど、プロデューサーとしても、今作のプロデューサーのパブロ・クルスと共に映画製作会社カナナを運営しているんだ。2人がプロデューサーで入ったことで、今作は動き出したんだ。
わたなべ ギャングが持っているパイプで作った銃がとても気になりました。フクナガ 面白いところに目がいくね(笑)。あの銃は実際にギャングが使っていて、殺傷能力もきちんとある。見てのとおり、作りやすいけど、故障も多いから撃つほうも危険なんだ。
わたなべ 次作はシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」の映画化です。「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカがエアを演じ、「イングロリアス・バスターズ」のマイケル・ファスベンダーがロチェスター卿を演じると伝えられています。古典のうえ、全編ロケだった今作と違い、セットが中心になりそうです。フクナガ 「ジェーン・エア」も、「闇の列車、光の旅」と同じく、主人公が幾多の障害も乗り越えていく話しだ。ストーリーに興味があれば、場所や時代に限らず、映画を作っていきたいと思っている。ぼくは日本人の血も入っているし、いずれは日本で映画も撮りたいと思っている。小津監督の作品などが好きだしね。
わたなべ 今日はありがとうございました。フクナガ こちらこそ、ありがとう。
翌日、約束したとおりに「動くな!死ね!甦れ!」のビデオをホテルに持っていてプレゼントした。
(取材:わたなべりんたろう)
『闇の列車、光の旅』作品情報はこちらをチェック!
脚本・監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン 美術:クラウディオ・コントラレス 編集:ルイス・カルバリャール/クレイグ・マッケイ
音楽:マーセロ・ザーヴォス プロデューサー:エイミー・カウフマン
製作総指揮:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、パブロ・クルス
出演:サイラ:パウリーナ・ガイタン カスペル/ウィリー:エドガー・フロレス スマイリー:クリスティアン・フェレール
リルマゴ:テノック・ウエルタ・メヒア マルタ:ディアナ・ガルシア
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2010年6月19日(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
- 監督:ヴィターリー・カネフスキー
- 出演:パーヴェル・ナザーロフ, ディナーラ・ドルカーロワ
- 発売日: 2010-07-24
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主なキャスト / スタッフ
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