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『デンデラ』ロゴ

姥捨て山には、続きがあった。

http://dendera.jp/

2011年6月25日(土)より全国ロードショー

INTRODUCTION

『デンデラ』1一度は、死ぬために捨てられた老婆50人。しかし彼女たちは再び生きるために、力を合わせ始める。着るものも食い物もろくにない極寒の山奥。そこでかつてない、今を生き抜く女たちのドラマが幕を開けた……。
政治も経済も先行き不透明で、閉塞感が蔓延する現代の日本。ある日突然、職業も日常生活も失ってしまうかもしれない。まさに、一寸先は闇の今は、各々が懸命に生きるパワーが必要な時代である。佐藤友哉の同名小説を映画化した「デンデラ」は、70歳になると老人を姥捨てする風習が残る山間部を舞台に、捨てられた老婆たちが暮らす人里離れたコミュニティー“デンデラ”で、彼女たちが困難な状況に立ち向かっていく姿を描く、現代人への『生きることの賛歌』である。一方でこの作品は、親子の情愛を柱に姥捨て伝説を描いた深沢七郎の小説を、今村昌平監督が映画化したカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作「楢山節考」(83年)の後日談的な色合いも持っている。今回の映画では『果たして子供に捨てられた老婆は運命としての死を、素直に迎え入れたのか?』を出発点に、人間にとって生きるとは、老いるとは何かを問いかける。監督&脚本を担当するのは、「楢山節考」に対する21世紀的視点からの解答者として、これ以上の適材はいないと思われる今村監督の子息・天願大介。「AIKI」(02年)、「世界で一番美しい夜」(07年)といった映画監督としては勿論、「オーディション」(00年)、「十三人の刺客」(10年)などの脚本家として国際的にも評価が高い彼が、真っ向から父・今村昌平と向き合った入魂の1本である。
また最大の見どころとなるのが、豪華な出演女優陣の顔ぶれ。50人目の新参者としてデンデラへやってくる主人公・斎藤カユに浅丘ルリ子。最初は神へ召される運命を受け入れようとしていたカユが、デンデラで暮らす様々な老婆たちの生き方に触れ、人生を見つめなおしていく姿が物語の主軸となる。またデンデラの創始者で100歳の長老・三ツ屋メイに扮するのは草笛光子。50人老婆が揃ったところで、自分たちを捨てた村人への復讐計画を実行しようとするメイの方針に、反論を唱える平和主義者の椎名マサリに倍賞美津子。そして、自分の進むべき道を見つけていくカユに同調する、狩猟によって生活する術を身につけている浅見ヒカリに山本陽子。ほかにも赤座美代子、山口美也子、白川和子、角替和枝、田根楽子など、『デンデラ』2デンデラの住人となる人々には日本の映画・演劇界を支えてきた名女優たちが集結。夢の競演ともいえるベテラン女優陣が揃い、かつてない女性映画としても注目されることは間違いない。また彼女たちは渋皮色の肌と深いシワのメイク、襤褸をまとった扮装と、これまでのイメージとは違ったビジュアルで登場し、自然と共生する老婆役に挑戦、様々な自然の驚異に立ち向かうアクションシーンも用意されている。
製作は、国内外の映画賞を総なめした08年の名作「おくりびと」のセディック。今回は「おくりびと」と同じく、山形県庄内地方でロケ撮影を大々的に敢行。庄内映画村をベースに豪雪の1月から2月、老婆たちが生きるために立ち上がる姿を、まさに自然の猛威と闘いながら生々しく映し出していく。そのリアリティー溢れる映像には、誰もが息を飲むことだろう。また竪穴式住居を始め、原初的な生活を再現したデンデラのオープンセットを、「楢山節考」でも美術を担当した稲垣尚夫が手掛けている。親子二代の姥捨て伝説映画を、彼の美術がどのような世界観で結び付けるのかにも注目したい。
高齢化社会が進みながらも、老人が生きにくい現代。劇中でメイは『年を取ることは罪か。罪ではねえ。年寄りは屑か。屑ではねえ。人だ!』と叫ぶ。命の最後のひとかけらまで、生き尽そうとする老女たちの想い。それは情報過多で考えることばかりが先行し、肉体とともに生きることを忘れがちな我々に生命力を呼び覚ます、魂のメッセージとなることだろう。70歳から始まる新たな人生の歓びと希望が込められた、今年最大の話題作だ。

2011年6月25日(土)より全国ロードショー

Production Note

スタッフの挑戦

三ツ屋メイが30年前に作ったデンデラ。物語全体の背景となっている時代は明確に示されてはいないが幕末から明治初期という感じで判然としない。そのため映画では、メイが作り上げてきたデンデラの世界観を具体的に視覚化していくことが必要だった。
まず言葉だが、天願大介監督は脚本を書く時に、ロケ地となる山形県庄内地方の方言を基本として、岩手や青森の言葉を混ぜた独自の『デンデラ語』を考えたという。また生活形態に関しては、原作では着るものもほとんどなく裸足で生活しているが、監督はこの地で冬も越していることを考えるとその設定ではリアリティーに欠けると感じ、老女たちは襤褸を重ね着し、足には藁沓を履いていることに変更した。また彼女たちの住居は、加工された道具がなく釘などを使う大工仕事が難しいため、縄文人に近い竪穴式住居を監督はイメージしたという。
このコンセプトを受けて、各パートのスタッフが動き出した。『デンデラ』3

美術監督の稲垣尚夫は、昨年4月に基本イメージを監督と話し合い、住居のセットを考え始めた。稲垣は言う。「監督は縄文人の生活をイメージした竪穴式住居と言いましたが、デンデラにいる老女たちは村にいるとき、みんなで萱葺き屋根を換える作業を手伝ったこともあると思うんです。ですから完全な竪穴式住居ではなく、家全体を萱で覆った形にしてみました。住居それぞれの雰囲気は、萱葺き屋根住居の屋根部分だけが家になっていると。この住居を、広場を含むデンデラの主舞台となる庄内映画村のロケ現場に11棟作りました。映画村全体の広さは東京ドーム20個分(88ヘクタール)という広大なものですが、その中に生えている萱だけでは住居を作るのに足りず、周辺各地の萱をかき集めましたね」。通常、映画のセットは撮影時にのみ使うものなので、強度はさほど重要視しない。しかし今回オープンセットは、真冬の庄内地方の大雪にも耐えることが必要であった。そこで美術スタッフには本職の大工の方も参加し、しかも極力釘などは使わず木を組み合わせた原始的な手法で、強固な住居を作り上げるという難題を成し遂げた。面白いのは、どの家にもきちんとした建物の設計図がないこと。老女たちがみんなで何とか作った家なので外観の雰囲気や内装は、それぞれ違う。「だからこれを作った大工たち、一人ひとりが芸術家なんです。僕個人はメイの家の1階部分はブリューゲルの絵の世界、2階部分はアンリ=ルソー。クラや動けない者が暮らす西の家は、ゴッホをイメージして内装を作っていきました」(稲垣・談)。また西の家と、助けられたカユが最初に目覚める通称“カユの家”は、鶴岡市の鉄鋼団地内にある広大な廃倉庫の中に原寸大のセットを組み、ここで室内の芝居シーンが撮影された。室内には遮光器土器を思わせる土偶や、縄文土器を感じさせる先が尖った壷。木の皮で編みこんだ縄などが置かれていて、その暮らしぶりを彷彿とさせる。稲垣によれば一番難しかったのは、30年かけて作られたデンデラの時代感を3ヶ月の美術製作期間で作り出すことだったとか。

衣裳の千代田圭介は、想定される時代が幕末から明治だとしても、老女たちの衣裳は着物スタイルを採用しなかった。それは掟に縛られた村からデンデラにやってきた老女たちが、ここでもっと自由に生きている感じを衣裳で出したかったからだという。無国籍風でありながら“和”を感じさせる衣裳をイメージして、参考にしたのは近いブータンの民族衣裳だった。素材は麻を使い、縫い取りは今で言う“仮縫い”状態になっている。また染料に関しても、自然の染料を使っていると考え、樹皮染めに近い雰囲気を出した。老女たちが着る衣裳の色は紺色や浅黄色など、淡い自然色ながらもカラフル。これは村にいたときには絶対に着ないような、自分の好きな色合いの服を、彼女たちが自由に着ている感じを表現したかったからだ。基本的に服には袖がなく、寒さ対策のために腕には襤褸を幾重にも巻いた手甲をはめている。演じる女優たちはこの衣裳・手甲の下に何枚ものカイロを入れて、撮影現場の寒さをしのいでいた。『デンデラ』4藁沓を含めて今回の衣裳は寒さを凌ぐことを考慮した、現実的かつ独創的なものだったのである。またキャラクターによっても、衣裳の違いがある。デンデラの創始者であるメイは、威厳を出すため他の人間よりも長い羽織を羽織っていて、それに対抗するマサリは魔女のような黒い吹流しを頭から被っている。動物捕獲のエキスパートであるヒカリは、小動物の毛皮を肩からかけている。このようにそれぞれの人物にあわせた細かいデザインの違いにも注目して欲しい。

当初この映画では、ベテラン女優たちがノーメイクで老女を演じると報じられた。しかしヘアメイクの小沼みどりによれば、現実には主に二つの理由でそれが難しいと思ったという。難しい理由のひとつは、女優たちの肌が非常綺麗で若々しかったことである。ノーメイクにすると、逆に厳しい自然の中で生きてきた老女たちの肌の雰囲気が出ない。もうひとつに理由は昼夜を問わず、ほとんどのシーンが屋外の雪の中で撮影されるため、肌が雪焼けするのを避けられないことだ。これらの理由でメイクに関しては、まず全員に日焼け止めを塗り、田舎に暮らす老女の感じを出すためくすんだ肌色を下地に塗っていった。70歳から100歳までの老女を表現しなくてはならなかったが、シワを増やすようなメイクはあまりしなかった。それよりも毛細血管を赤く浮き出た感じにしたり、シミやそばかすを描きこんで、見た目の汚れが際立つようにしていった。また新参者のカユ以外のほとんどの住民に、歯を汚すメイクを毎回行なった。デンデラのようにギリギリの状態で生活している老女たちは栄養が行き届かず、歯も満足に磨けないはず。この歯の汚れは女優たちが話す時、笑う時に効果が出ている。休憩中、女優たちが「歯のメイクが取れるから、お菓子を食べられないわね」と言い合っていたのが印象的だった。さらに歯だけではなく耳の穴、手の爪にも汚しのメイクを施した。またメイを演じる草笛光子は皮膚を貼り付けた特殊メイクをして、見事に100歳の老女に変身した。ただ老女全員の印象はみすぼらしさも病的な感じもなく、どこか可愛らしい。これは天願監督が作品全体で表現したかったコンセプトで、監督は厳しい中でも可愛らしさを失わず、自由に老女たちが生きている場所として、デンデラを捉えようとしたのだ。 リアルで自由で、ここにしかないデンデラの世界を、みなさんも満喫していただきたい。

女優魂

『デンデラ』5「浅丘ルリ子は目が命なんです。今度はいつものようにメイクで目張りが入れられず、その目(の力)を奪われる。こんなに出演を悩んだ作品はありません」。主人公・斎藤カユを演じた浅丘ルリ子はそう言ったが、今年1月の庄内映画村ロケ。村を襲撃することをメイがデンデラの老女たちに宣言するシーンを見たとき、エキストラを含めて30人以上いる群衆の中で、浅丘ルリ子がどこにいるのかすぐ分かった。メイを真っ直ぐに見つめる彼女の瞳に強烈な力を感じたのである。確かに女優・浅丘ルリ子の魅力の根源は、大きな目に集約される。言葉以上に彼女が何を感じ、何を伝えたいのかは、どの映画でも目が語ってきた。しかしその目力がメイクによって生まれたものではないことを、今回の現場を見て再認識した。カユは村を襲って復讐しようとするメイにも、食糧を蓄えてこの地を豊かにしようとするマサリにも同調できない、迷える存在である。ともすれば優柔不断にも演じられる役だが、浅丘ルリ子はカユを根源的な強さを持つ女性と捉えて、私が知る限り撮影中一度も瞬きせずに、目の力を出し続けて演じきった。日中に突風が吹いたり、深夜の撮影になると零下10度を超える厳寒状況、撮影当初に凍った地面で転倒し、膝に水が溜まるというアクシデントもあったが、「ヨーイ、スタート」の声がかかると、カユとしての強さを放射し続ける彼女の“プロ”の女優としての在り方は、若い人間が多かった今回の天願組のスタッフの気持ちをひとつにする力を持っていたと思う。

その空気は浅丘ルリ子だけが作ったものではない。実年齢が77歳の草笛光子は、当初100歳のメイをどの演じればいいのか、手探り状態だった。寒さを凌ぐテントで撮影を待っているときでも、一人静かに次の演技プランを考えている彼女の姿は印象的だった。しかし天願大介監督は老女だからと言って、いわゆるヨボヨボした雰囲気を出す必要はないと結論する。「ここに若い人がいて、それとの差をつけるというのであれば老いた雰囲気も必要でしょう。でもみんながお婆さんですから、それぞれの役の人間性と撮っていけばいいのだと思ったんです」(監督・談)。そこでメイは、生命が再生する場所であるデンデラが持つパワーを代弁したような、力強さが感じられるキャラクターへと昇華していった。また住人の中で最も辛い過去を背負いながら、冷『デンデラ』6静にここでの生活の持続を説くマサリを演じた倍賞美津子は、休憩中に現場の雰囲気を和らげるペースメーカーでもあった。小熊を倒してその肉を住民たちが食らう宴会シーンの夜間撮影をしたとき、天気は晴れたがそのぶん、寒さは身にしみるようだった。そんなとき彼女は、大きな雪の塊をサッカーのようにキックして遊びだした。「こうやって体を動かすと温まるのよ」と、彼女は寒さを楽しんでいた。手の空いたスタッフも、彼女のサッカー遊びに付き合う。寒さに震えるのではなく、逆に自然を味方につけて楽しむ女優たちの姿は、撮影の最後まで見られた。

この映画では、日活映画のスターから現在は舞台の主演女優として、第一線で活躍し続けてきた浅丘ルリ子を始め、松竹歌劇団の先輩・後輩として芸能界入りし、今回初めて本格的に映画で競演した草笛光子と倍賞美津子。日活映画のスターとして浅丘ルリ子の後輩にあたり、プライベートでも仲がいい山本陽子。日活ロマン・ポルノのスターとして一時代を築いた白川和子や山口美也子。さらには赤座美代子や角替和枝、田根楽子など、それぞれ出自は違うが日本の映画・演劇界でキャリアを重ねてきた彼女たちが一堂に会している。その全員の女優魂が、見た目の綺麗さや年齢的な定番のイメージを求められるほかの作品とは違う、「デンデラ」の現場でひとつになっていた。彼女たちの総合力がどんな作品へと結実するのか。クランクアップした女優全員「完成がこんなに楽しみな映画は初めて」と言っていたのが、現場の充実感を証明している得難い撮影であった。

C R E D I T
出演:浅丘ルリ子,倍賞美津子,山本陽子,草笛光子,
山口果林,白川和子,山口美也子,角替和枝,田根楽子,赤座美代子
監督・脚本:天願大介 原作:佐藤友哉『デンデラ』(新潮社刊) 配給:東映
(C)2011「デンデラ」製作委員会
公式サイト:http://dendera.jp/

2011年6月25日(土)より全国ロードショー

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  • 監督:天願大介
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2011/06/11/15:33 | トラックバック (3)
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