スコット・マクギー & デヴィッド・シーゲル (映画監督)
映画「ハーフ・デイズ」について
2012年8月4日(土)よりシアターN渋谷にて公開中
このまま未公開と思われた「Uncertainty 」(09)が「ハーフ・デイズ」の邦題で遂に日本公開される。ブレイク前のジョゼフ・ゴードン=レヴィット(「(500)日のサマー」「インセプション」「ダークナイト・ライジング」)とリン・コリンス(「ウルヴァリン」「ジョン・カーター」がブレイク前にオーディションで出演した意欲作で、3年遅れながら遂に公開されて日本でもスクリーンで観ることができるようになったことから応援で宣伝にも急きょ入った作品です。監督のスコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル監督の「ディープ・エンド」は大好きだし、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは先に挙げた代表作も好きですが個人的には「ブリック」「ルックアウト」「50/50フィフティ・フィフティ」などの低予算の捻った出演作に思い入れがある&今後の出演作「Looper」(「ブリック」の監督と再度組むSFスリラー)やスピルバーグの「Lincoln」でのリンカーンの息子、ロバート・トッド・リンカーン役、タランティーノたっての希望でのタランティーノの新作「Django Unchained」の出演も断って、集中して臨んだ監督デビュー作「Don Jon's Addiction」も楽しみだし、採用された作品に関わったアーティストに収益を配分&交流の「hitRECord」を主催していることも素晴らしい。そういうジョゼフ・ゴードン=レヴィットの設定のみの脚本から練り上げた演技が見られる演技力を見るのにとてもうってつけの作品でもある。
今作の監督であるスコット・マクギー&デヴィッド・シーゲルにスカイプでインタビューする機会に恵まれた。二人の監督とも、思い入れのある作品の日本公開が嬉しくて積極的に答えてくれたうえに、映画に出てくる黄色いシャツを送付していただいた(このシャツに関する質問もとても嬉しかった模様)。なお、二人の発言だが「監督」として一人の回答にした。
(取材:わたなべりんたろう)
スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル 兄弟でない二人組の監督(&脚本)という珍しい形式をとる。低予算ながらオリジナルのスリラー「Sature」(93・未)で高い評価を得たことで依頼されたテレビムービー「完全犯罪」(95)の脚本を書く。「Lush」 (99・未)「The Business of Strangers」 (01・未) のプロデューサーを経て発表したティルダ・スゥイントン主演のスリラー「ディープ・エンド」(01・未・ビデオリリースあり)。で一層高い評価を得る。だが、20世紀フォックスというスタジオと組んだリチャード・ギア、ジュリエット・ビノシュ主演の「綴り字のシーズン」(05)が興行・批評的に失敗して本来予定されていた企画が流れたことから、4年後に発表した意欲作が今作「ハーフ・デイズ」である。現在、ヘンリー・ジェイムズ原作で脚本を自分たちで書かない初の作品「What Maisie Knew」(12、ジュリアン・ムーア主演)を撮り終え、編集中。
――こちらは監督であり脚本家でもあるんですけど、すぐに2回見てとても面白かったです。
スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル監督(以下:監督) ありがとう!嬉しいよ。
――タイトルバックの出しかたや手持ちカメラなど、ヌーヴェルヴァーグの影響を感じたのですが、それは意識していましたか?
監督 ああ。少しヌーヴェルヴァーグに影響を受けているよ。それに2つの全く違ったストーリーを使うというアイデアが気に入っていたんだ。そこに味付けとしてヌーヴェルヴァーグの要素も少し加えたんだ。
――撮り方や冒頭の橋上での走り出すシーンかたも感じたのですが、「突然、炎のごとく」は意識していますか?
監督 「突然、炎のごとく」は僕らも大好きだよ! 意識したね。ゴダールやその周辺のアートフィルムの映像を意識した。それに2つのまったく異なったストーリーというアイデアがやりたかったんだ。家族がテーマのスローな物語と、もうひとつはサスペンスだ。だから頭から観客にイエローとグリーンで色分けした世界を見せたんだ。
――何か他に参考や影響を受けた映画や小説などあるんですか?
監督 ストーリーごとに違った映画のことを考えていたよ。イエロー・ヴァージョンのマンハッタンで犯罪に巻き込まれるストーリーでは、ちょっとオールドファッションな犯罪映画。ノワール映画だね。後は70年代のサイコ・スリラーとか。グリーン・ヴァージョンのマンハッタンのシーンでは、もっと現代的な映画を意識した。3年前の作品なのもあって、いい例が見つからないな……そうだ、思い出したよ、ダルデン兄弟の作品のようにね。全く違ったストーリーテリングを使ったんだ。
――イエロー・ヴァージョンの撮影は「パララックスビュー」を意識したように思えましたがどうですか?日本ではあまり知られていないですが都会的な70年代の秀作スリラーです。
監督 ああ、ズームレンズなどを使って、そんな70年代映画のスリラーにもある生々しい雰囲気を出したよ。
――「パララックスビュー」の撮影監督は「ゴッドファーザー」やウディ・アレン作品で知られる名匠ゴードン・ウィリスですが気に入っているのですか?
監督 そうだね。とっても好きだよ。言うまでもなくだけど、ゴードン・ウィリスはとても優秀な撮影監督だよね。
――今作の撮影監督は中国系の女性撮影監督の「パラノイド・パーク」でクリストファー・ドイルと共同で撮影もしているレイン・リーですね。なぜ彼女を選んだんでしょうか?
監督 これは面白い選択だったよ。彼女に決まったのは時間が経ってからだった。僕らは手持ちカメラのスタイルをやりたかったんだけど、彼女にはとても力強い作品や経験があった。彼女はどこにカメラを置いて、どう撮るかを良く分かっていた。その他に彼女を選んだ理由は、とても若いから俳優たちとすぐに打ち解けたということだ。この映画の撮影スタイルはとても即興の要素が多かったから、役者はリハーサルの段階でも即興で演じる。そして即興の演技が撮影にも大きく影響する。だから撮影スタッフと俳優には信頼関係が必要だったんだ。だから彼女は適任だったというわけなんだ。
――パラノイドパークでは、クリストファー・ドイルがメインでレインはサブで自由にとっていたのは知っていましたか?
監督 いや、よく知らなかったよ。僕らはただ、レイン・リーが経験豊富で、クリストファー・ドイルのもとで沢山経験を積んでることは知っていた。即興にも柔軟に対応できて、自由なカメラワークが出来るとも思っていた。プロダクション・ノートにもあるけど、僕らは最初から最後までストーリーを書いた後、30日間ジョゼフとリンとともにセリフやシーンを改良していったんだ。即興と台本を交えてね。
――即興演出がカサヴェテスっぽいと思ったんですけど。今、日本でカサヴェテス作品を公開してるのですが、カサヴェテスの影響って受けているのでしょうか?
監督 ああ。僕らはカサヴェテスのファンだ。だけど僕らがやりたかったのは、よくイギリスの監督がやるように、台本とともに即興で大枠を事前に作り上げ、本番では方向性と決まったセリフを持って撮ることさ。ストーリー自体を元々細かく決めているんだ。それで役者とともにセリフを即興で演じ、リハーサルで決めたんだ。この映画の一番大きな軸は即興なんだ。俳優や撮影スタッフとの実験で作りあげたんだ。
――どこまで決めていたのか知りたいと思います。例えば、リン・コリンズとおじさんの庭での会話のシーンでリンのおじさんがリン演じる役のブロードウェイの舞台を見たいと言うシーンはどうですか? リン自身がブロードウェイで実績のある俳優ですが、リンに「あれ、観たことあるじゃない?」と返されて、おじさん役の俳優が戸惑います。
監督 そこは僕らが決めていた部分だよ。この映画の手法は、ストーリーのほとんどは決められていて、実際のセリフやしぐさは役者が作るというものさ。
――じゃあ映画館での2人の“肉”の会話は?
監督 そこはジョゼフとリンがリハーサルしているときに出てきたものです。それで僕らも気に入ったんだ。彼女がベジタリアンということ自体もリハーサルで決めた。リハーサルはしても全く同じセリフで演じることはなかったね。それに、ジョゼフはとっても遊び心があって頭のいい俳優なので、いつも本番当日ではまた違った即興を取り入れたりもした。新鮮さを出すために、違ったジョークや受け答えを入れてくるんだ。でもみんないつも核となるストーリーのラインは忘れないんだ。特にリハーサル過程は特殊だった。1カ月全部を2人の過去を演じることや一緒にいることで関係を深めることに費したんだ。どうやって出会ったとか、初めてのデート、初めてのセックス、初めてリンの家族に会ったときなどをね。リハーサルのほとんどは実際使うシーンではなくて、その役の人生において重要な出来事を演じた。それで役柄に深みや、2人の間に強いきずなが出来ると思ったんだ。
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