『ぼっちゃん』トークイベントレポート
歓談/『ぼっちゃん』、そして『さよなら渓谷』
ゲスト:大西信満×水澤紳吾×大森立嗣監督

『ぼっちゃん』トークイベント/ゲスト:大西信満×水澤紳吾×大森立嗣監督

http://www.botchan-movie.com/

渋谷ユーロスペースにて公開中、他全国順次ロードショー!
5月4日(土)より吉祥寺・バウスシアターにて公開決定

大森立嗣監督の『ぼっちゃん』を上映中の渋谷・ユーロスペースで、4月7日、大森監督と本作の主人公の梶役・水澤紳吾さん、そして監督の次回作『さよなら渓谷』で主演を務める大西信満さんが登壇するトークイベントが行われた。(取材:深谷直子)

大森 次の『さよなら渓谷』もレイプした加害者と被害者が一緒に住んでいる、なぜか?という話で、ある種追い込まれた二人なんだけど、どこか今の僕たちと近い生きづらさというものがあると思っていて。ものすごいマイナスから始まっているんだけど、愛みたいなものに辿り着こうと思っている二人だったと思うんだけど、大西くんはどう感じた?

大西信満さん
大西信満さん
『さよなら渓谷』 公式
さよなら渓谷 (新潮文庫) [文庫]出演:真木よう子,大西信満,鈴木杏,井浦新,新井浩文,木下ほうか,三浦誠己,薬袋いづみ,池内万作,木野花,鶴田真由,大森南朋
監督:大森立嗣
原作:吉田修一『さよなら渓谷』(新潮文庫刊)
製作プロダクション: S・D・P ステュー ディオリステュー
配給:ファントム・フィルム
6月22日(土)より、全国ロードショー
大西 自分たち演者側というのはそんなに考えてやっているわけじゃないけど、自分の感覚としては愛とか恋とかそういうことよりも、もっと「生きる」ということを、それも自分が生きるというよりは自分が人生を台無しにしてしまった他人に対してどう向き合って何ができるかということをやっていたと思います。許されるはずがないのは分かっていても、目の前にその人の肉体がいて、苦しみあがいているときにどうするかということの連続で、結果として観た人が二人は愛し合っていたとかそういう解釈をしてもらえればいいのかなと思います。

大森 大西くんが演じた役というのは元々野球部の大学生で、いわゆる体育会系でそんなに物事を深く考える人ではなくて、普通に生きてきた人が気付かされていくんだよね、相手の反応を見ながらね。そういうのは普通に生きている僕たちとも接点があるというか似ているという感じを、作りながら感じていきました。

大西 自分たちが『さよなら渓谷』を作りたいという話をすると、特に女性から「なぜこれをしたいのか分からない」ということを結構言われたりしていて、それを男の自分がどう女性に対して説得力を持って言えるかということの問いを、撮影中も、もしかしたら今もしているところがあって。今日来ていただいたお客さんにもし劇場で観ていただけるなら、そういう話をまた舞台挨拶などでできればいいなと思っています。

大森 結論を押しつける映画ではないからね。『ぼっちゃん』も、「なぜこの映画を作ったのか分からない」ということを結構きつく言われたりすることもあるんですけど、でも僕がずっと言っていることだけど「分からない」ってことのほうがすごく大事なんですよね。分からないことに、答えじゃなくて問題をちゃんと作るということの方が大事だと思うんです。考えるきっかけというか。考えることをやめちゃいけないということが、特に3.11以降、僕たちにはすごく問いかけられているわけで、思考停止した途端に終わるんだよね。先日トークもした北海道大学の中島岳志さんという『秋葉原事件―加藤智大の軌跡』(朝日新聞出版)の著者が、分かりやすい言葉に押さえ込んでいくのはいちばんダメだと、いろんな解釈があるべきだ、そのことをみんなで考えていくべきだと言っていましたね。

水澤 この映画が公開されていろいろ考える機会が増えました。観てくださった方からもいろんな意見を言っていただいて、「最後の叫びが救いだ」とか、「あの(ラスト・シーンの)あと、もしかしたらブレーキをかけるとか何かがあったんじゃないか」だとか、いろいろな触れかたができるなあと。今日も70歳ぐらいの方がいろんなことを考えましたと言ってくださいました。もう一人お話しした女性の方は、加藤さんと同じ青森高校のご出身で、ご自分なりに文章とか週刊誌なども追いかけてきたそうなんですが、この映画での一側面の捉え方はものすごく興味深かったとおっしゃっていました。答えがあるものではないので、僕としては観た方の記憶にちょっとでも残って、信号待ちや電車に乗っている時間でも“叫んでいる自分”みたいなものがいたときに、もう一度少しでも思い出してもらえたらなと思います。

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ぼっちゃん 日本 / 2012 / 130分 / DCP / カラー / 1:1.85
監督・脚本:大森立嗣
プロデューサー:村岡伸一郎,近藤貴彦 撮影:深谷敦彦 美術:黒川通利 録音:島津未来介 音楽:大友良英
編集:早野亮 衣装助言:伊賀大介 ヘアメイク:佐々木裕 音響効果:伊藤進一
アニメーション:蛹ナヲヤ 共同脚本:土屋豪護 助監督:加治屋彰人
出演:水澤紳吾,宇野祥平,淵上泰史,田村愛,鈴木晋介,遠藤雅,三浦景虎,日向丈,今泉惠美子,高橋真由美,小川朝子,
津和孝行,川畑和雄,石鍋正寿,中村文夫,塚田丈夫,松下貞治,堀杏子,町屋友康,伊藤陽子
声の出演:長尾卓磨,鈴木将一朗,小嶋喜生,久保麻里菜,岡部尚,南場尚,大川原直太,池浪玄八
製作・配給:アパッチ ©Apach Inc.
公式サイト 公式twitter

渋谷ユーロスペースにて公開中、他全国順次ロードショー!
5月4日(土)より吉祥寺・バウスシアターにて公開決定

秋葉原事件―加藤智大の軌跡 [単行本]
秋葉原事件―加藤智大の軌跡
さよなら渓谷 (新潮文庫) [文庫]
さよなら渓谷 (新潮文庫)

2013/04/22/20:22 | トラックバック (0)
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