エヴァ・デュヴァネイ (監督)
映画『グローリー/明日への行進』について
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2015年6月19日(金)TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開
エヴァ・デュヴァネイ監督の最新作で、キング牧師と彼が尽力した投票権法の成立過程を描いた作品、『グローリー/明日への行進』が来る6月19日に日本公開を迎える。実はハリウッドの歴史上、本作のようにキング牧師を主人公とする映画が製作されたことはなかった。1968年のキング牧師の死から昨年まで続いた長きにわたる沈黙を本作で打ち破ったエヴァ・デュヴァネイは、第72回ゴールデングローブ賞で、黒人の女性監督として初の監督賞ノミネートを果たした。今回は、ハリウッドで最も注目を集める監督の1人となったエヴァ・デュヴァネイに、キング牧師についてはもちろん、本作の製作背景や撮影中の秘話、ハリウッドにおける黒人女性監督の現状、そして今も根深く残る黒人差別問題などについて、電話インタビューでお話を伺った。(取材:岸 豊)
【STORY】 1964年、キング牧師は公民権法成立への貢献から、ノーベル平和賞を受賞する。しかし、黒人と白人の平等が実現されたのはあくまで法律上のこと。実際に、保守的なアメリカ南部では、白人の黒人に対する暴力はもちろん、黒人の有権者登録の妨害などの差別が続いていた。これを受け、キング牧師はジョンソン大統領に黒人の投票権を一律に認めさせる投票権法の成立を要求するが、貧困問題やベトナム戦争を優先するジョンソン大統領は受け入れない。そこでキング牧師は、最も黒人差別が最も根深い地域の1つであるアラバマ州のセルマを拠点に、投票権法の成立要求運動を開始する……。
――世間一般ではキング牧師は神格化された聖人としてのイメージが強いですが、本作では人間臭い一人の男として描くことが強調されています。本作で描かれたこと以外で、キング牧師の人間臭さを感じさせるエピソードはありますか?
デュヴァネイ監督 キング牧師は火星人ではなく人間なので(笑)、他の人間と同じように、友人もいたし、ユーモアもエゴもあって、正しいと思ってやったことが間違ったことだってもちろんある。それが全部合わさって、この偉人が、キング牧師が出来上がっているわけで、別に彼は聖人君子なだけではなかった。人間らしい彼に目を向けることは意識したわ。
――キース・スタンフィールドの飾り気のない演技が印象的でした。彼を起用した理由は?
デュヴァネイ監督 キースはまだ映画2本目で、前作は小さなインディーズの作品だったんだけど(『ショート・ターム』)、それを見て本当にすごい役者だと思って、キャスティングすることができた。これもまた、オプラ・ウィンフリーの存在があったから実現したのよ。彼女がいたから、日の目を見ない才能をキャスティングすることが出来た。
――撮影中、最も印象に残ったことはなんですか?
デュヴァネイ監督 感動的なシーンではないけれど、「血の日曜日」、“Bloody Sunday”のシーンかしら。実際に起きた事件を橋の上で撮影していたし、本当にたくさんのエキストラだったりスタントもあったし、それから催涙ガスとかも使っていて、かなり大がかりなシーンになって、女性の監督が撮影するには無理だろうと思われていたの。でも数日かけて撮影して、すごくいいものになった。やっぱり、満足と達成感があったわ。
――昨今のハリウッドでは女性の権利が訴えられていますが、黒人女性監督として不平等や差別を感じること、感じた経験はありますか?
デュヴァネイ監督 実際、ハリウッドの映画監督で女性監督の数はわずか4%。さらにアフリカ系アメリカ人の女性監督はたったの1%よ。だから、こうした環境で前に進むことは挑戦なの。でも、そういう状況にあって文句を言うか、あるいは自分で作品を作り続けるか、という選択が出来ると思うけれど、私は後者を選んで作品を作り続けたいし、作品を作り続けることで、この非常に不健康な状況やシステムを人々に知ってもらえればと思うわ。
――2014年に頻発した白人警官による黒人市民の射殺事件についてはどう考えていますか?
デュヴァネイ監督 すごく残念なことだと思う。ただ、事件をきっかけに暴力や警察組織が再生へと動いているとも思う。人種差別は本当に根本的な問題よ。いくら法律は改正できたとしても、法律ですべて解決できるものではなく、人の心で解決していくものだと思うわ。
( 取材:岸 豊 )
監督:エヴァ・デュヴァネイ 脚本:ポール・ウェッブ 撮影:ブラッドフォード・ヤング
出演:デヴィッド・オイェロウォ『大統領の執事の涙』、トム・ウィルキンソン『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』、ティム・ロス『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』、オプラ・ウィンフリー『大統領の執事の涙』
主題歌:「GLORY」コモン&ジョン・レジェンド 配給:ギャガ
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