ジョン・ウィリアムズ(監督)
映画『審判』について【1/5】
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2018年6月30日(土)より渋谷・ ユーロスペースにて公開
ある日突然逮捕された男に降りかかる悪夢のような体験を描くフランツ・カフカの同名小説を、ドラマや舞台など幅広く活躍する個性派俳優にわつとむ主演で映画化した『審判』が、6月30日より渋谷・ユーロスペースにて公開される。メガホンを取ったのは、シェイクスピアの戯曲を近未来日本を舞台に再構築した近作『佐渡テンペスト』も話題を呼んだイギリス出身のジョン・ウィリアムズ監督。上智大学英語学科の教授でもある探究心豊かなウィリアムズ監督に、原作との出会いや、ワークショップ、舞台化を経ての本作製作のプロセス、作品に込めた想いをうかがった。 (取材:深谷直子)
STORY 木村陽介。銀行員。30歳の誕生日に、逮捕。罪状不明。 現代の東京。銀行員の木村が30歳の誕生日の朝、自宅マンションのベッドで目覚めると、部屋にはふたりの見知らぬ男たちが佇んでいた。彼らは「逮捕」を告げにきたと言う。でも罪状は不明。無実を主張すればするほど、蜘蛛の巣のような“システム”に絡みとられ、どんどん身動きができなくなっていく。ここから抜け出す方法はあるのか?救いを求めてあがくものの、期待はことごとく外れていく。そして、木村は出口のないこの迷路の終焉に、気づき始めるのだった――。
――監督は88年から日本にお住まいで、現在は映画製作をしながら上智大学で教鞭をとっていらっしゃいますが、もともと日本に来た目的は?
ウィリアムズ サッチャーの時代のダメなイギリスから逃げてきました(笑)。映画業界に入ろうとしていたのですが、80年代はイギリスには組合制度があって組合員じゃないと業界に入れなかったし、イギリス映画もスランプでした。90年代初めごろから回復してきましたが、僕が入ろうとしていた80年代半ばは製作本数がいちばん少ない時期だったんです。それで日本でしばらくお金を貯めてからアメリカの映画学校に入ろうと思っていました。日本に興味はあったけれど、そんなに長くいるつもりではなかったんです。でも勤めていた名古屋の英語学校で、8ミリの自主映画を作っている学生と仲よくなって、一緒に映画製作をしているうちに「日本の映画も面白いな」と思えてきて、アメリカに行くというのはつまらなく思えてきました(笑)。
――それは嬉しいです。映画の学校には行かれたんですか?
ウィリアムズ 行きませんでした。その学生のグループでは全部で8本ぐらい8ミリ映画を作ったんですが、そのうち3本ぐらいは僕が監督しました。ドキュメンタリーも作りました。映画学校にも行ったほうがいいと思ってアメリカの映画学校に応募はしましたが、ちょうどその時期に16ミリ映画を作るチャンスがあって、それで作った作品が初めて映画祭に選出されて、「じゃあ映画学校に行く意味ってあるかな?」と。ニューヨーク大学にちょっと見学にも行って2年生の授業に参加させてもらったんですけど、そこでやっていることは全部知っていたんです(笑)。別に映画学校にお金を使う必要はないなと。
――現場で技術を身に付けてしまっていたんですね。初めて出品された映画祭というのはどちらの映画祭ですか?
ウィリアムズ イギリスのインディーズ系のレインダンス映画祭です。今は結構大きい映画祭になってきていますが、当時は3年目ぐらいでパンフレットもこんなに小さい、こぢんまりとした映画祭でした。
――その後、劇場公開作として『いちばん美しい夏』(01)、『スターフィッシュホテル』(07)、『佐渡テンペスト』(13)と3本撮られていますが、日本人監督の作品よりも濃厚に日本らしさを感じる作品になっていると思います。
ウィリアムズ よくそう言われます(笑)。特に『いちばん美しい夏』は昔ながらの小津安二郎っぽい世界の映画なので。日本的なファミリードラマでした。
――そのあとの2本は幻想的でミステリー要素のある作品でしたね。
ウィリアムズ はい、歪み始めました(笑)。
――(笑)。新作はまた不条理なカフカの『審判』の映画化ですが、原作を最初に読まれたのはいつですか?
ウィリアムズ 14歳のときに初めて読んで、そのとき頭の中にはすでに映画化のイメージが湧いていました。執筆された1915年当時のプラハのこととかは全然知らなかったので、多分悪夢の世界として想像していたんですね。オーソン・ウェルズの『審判』(63)を5、6年前に初めて観たら、想像していたような白黒のシュールな世界でした。
出演:にわ つとむ,常石梨乃,田邉淳一,工藤雄作,川上史津子,早川知子,関根愛,村田一朗,大宮イチ,
坂東彌十郎(特別出演),高橋長英,品川徹
監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ
原作:フランツ・カフカ「審判」 音楽:スワベック・コバレフスキ
プロデューサー:高木祥衣,古川実咲子,塩崎祥平 撮影:早野 嘉伸 照明:大久保礼司
録音:小川武 美術:中村三五 編集:稲川実希 音響効果:堀内みゆき 監督補:高田真幸
助監督:岩崎祐 ヘアメイク:西尾潤子,松本幸子 衣装:斎藤安津菜 制作担当:竹上俊一
後援 上智大学ヨーロッパ研究所 公益財団法人日独協会 製作・配給・宣伝 百米映画社
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