ジョン・ウィリアムズ監督『審判』

ジョン・ウィリアムズ(監督)
映画『審判』について【4/5】

2018年6月30日(土)より渋谷・ ユーロスペースにて公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook youtubeリンク (取材:深谷直子)

『審判』にわつとむ、坂東彌十郎 『審判』“被告人”たち
――『審判』での誤認逮捕されるような怖さも、今の日本で現実味を帯びてきていますね。

ウィリアムズ 今の日本でこのようなケースはいくつかあるんですけど、他の国に比べたら日本はまだ全然いい方です。例えばスリランカやアフリカの国では記者が記事を書いただけで殺されるとか、行方不明になるとか、それが世界の現実です。日本でももちろんそういうことは起こっているけど、他の国に比べたら安全で問題ない国ですね。他の国のレベルじゃない。そういう意味の法律についての映画ではないんですよね。もっと比喩的な意味合いを受け取ってほしいです。

――そうですね。でも日本もここ数年で監視社会だとかに急激に向かっている感じがしているので、この映画を観て現実と重ねる人もいるとは思います。

ウィリアムズ 苦しくなってきていると思っています。政治的なレベルでも日常的なレベルでも自由がなくなっている。観客がこれを観て今の日本に近いものが描かれていると思ってもおかしくはないですね。

――ただ、誤認逮捕された木村は、罪を犯してはいないかもしれないけど、潔白でもないという。女性たちにあんなに流されるがままで……。

ウィリアムズ ああ、MeTooムーブメントが起こる前にこの映画を作り始めたんですが、今は私も気になるんですよね、女性の描き方が大丈夫なのか?と(苦笑)。

――みんな木村を誘惑しますからね(笑)。

ウィリアムズ でも彼が女性たちに対して何か犯そうとしているわけではないし、普通に行動しているんですよね。矛盾しているけどある意味いちばん感心できるところですよ。考えずにやっているから。ナチュラルな行動が罰されちゃうという。女性たちもシステムの中で生きているから、みんな実は本当の自分ではないと描いているんですよね。男性中心の社会で、与えられた役割を演じているという。

――そこは今の時代の流れと合わないところですが、女性たちも同じように自由がなかったということですよね。

ウィリアムズ そのつもりで描いているんですが、観客がどう受け取ってくれるか。妻にも結構言われたんですよね、「女性の描き方がダメだ」と(苦笑)。

――監督はどんな女性観をお持ちなんですか?

ウィリアムズ 自分ではフェミニストだと思っています。「女性を大切にする男性」という意味のフェミニストではなく、本当の意味での。女性と男性は平等だと思っているし。実は去年1年間イギリスに帰っていて、日本に戻ってきたときかなりショックだったんです、日本の社会での女性の扱いが。例えばテレビのニュース番組でキャスターはみんな男性で、隣で女性がニコニコしている。女性が表に出るような社会になっていないんですよね。イギリスはこの20年間ですごく変わっていますね。テレビでこのような構図は見ません。女性キャスターが多いし、社会の中で権限を持っている女性が多いんですね。それが日本はまだまだ遅れていると思います。

――それはイギリスに帰ってあらためて気付いたことですか?

『審判』早川知子、にわつとむウィリアムズ そうですね、30年間日本に住んでいたらそれに慣れてしまっていたんです。イギリスに帰って目覚めて、日本に帰ってきた最初の1週間はものすごく腹が立っていました。この映画はイギリスに帰国する前に作っていたので、そこが気になって見直したんだけど、まあでも純粋に女性の描き方は批判的に描こうとしていたんですよね。

――男尊女卑の社会を批判していることははっきり伝わりますよね。例えば川上史津子さんが演じるアンナのことを木村は見下しているんですが、実は裁判所で権限を持つ立場なのだと知ってうろたえ、アンナに皮肉を言われるというシーンもありました。

ウィリアムズ そうですね、早川知子さんが演じたかなこも犠牲者から彼を罰する立場にひっくり返るんです。

――だから『審判』が女性を蔑視するような映画だとはまったく思いませんが、では次回作ではぜひ女性視点の映画を作ってください(笑)。

ウィリアムズ はい、1作目の『いちばん美しい夏』は女性3人がメインのお話だったから、一度そこに戻りたいなと思っています。

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審判 ( 2018 年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/118 分 )
出演:にわ つとむ,常石梨乃,田邉淳一,工藤雄作,川上史津子,早川知子,関根愛,村田一朗,大宮イチ,
坂東彌十郎(特別出演),高橋長英,品川徹
監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ
原作:フランツ・カフカ「審判」 音楽:スワベック・コバレフスキ
プロデューサー:高木祥衣,古川実咲子,塩崎祥平 撮影:早野 嘉伸 照明:大久保礼司
録音:小川武 美術:中村三五 編集:稲川実希 音響効果:堀内みゆき 監督補:高田真幸
助監督:岩崎祐 ヘアメイク:西尾潤子,松本幸子 衣装:斎藤安津菜 制作担当:竹上俊一
後援 上智大学ヨーロッパ研究所 公益財団法人日独協会  製作・配給・宣伝 百米映画社
© 100 Meter Films 2018
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2018年6月30日(土)より渋谷・ ユーロスペースにて公開

2018/06/27/19:14 | トラックバック (0)
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