ジョン・ウィリアムズ(監督)
映画『審判』について【5/5】
2018年6月30日(土)より渋谷・ ユーロスペースにて公開
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)
――この映画はいつ撮影したのですか?
ウィリアムズ 去年の2月に2週間ぐらい撮影して、編集も3月には終わっていたんですが、その後作曲に7ヶ月ぐらいかかりました。今回は音楽のイメージがまったくなくて、色々な曲を作ってもらい、「あれも違う、これも違う」とやっていたんです。作曲家がすごく我慢してくれて「じゃあこれを試しましょう」と言って少しずつ作ってくれて。楽器もひとつずつ試して、チェロとクラリネットとピアノでメインテーマを作りました。人形劇のシーンの曲は5曲ぐらい試して、10月ぐらいにようやく「そうか、これだ」と決まりました。だから仕上げに結構時間がかかりましたね。
――ロケ場所にもいつもこだわられますよね。
ウィリアムズ こだわりますが、今回は上智大学内もたくさん使っています。大学の建物を銀行のシーンで使ったりと、結構ごまかしています。
――(笑)。無機質なトーンで統一されていて面白いと思います。水戸の浄水場跡でも撮影していますが、あそこは同じく6月公開の『カメラを止めるな!』(17)も舞台に使っている場所なんですよ。季節が違うので印象がかなり違うんですけど。そちらはゾンビ映画です。
ウィリアムズ ああ、あそこは結構撮影に使われているんですよね。プロデューサーが見つけてくれて「これだ!」と。和洋折衷の建物で、時代的にも昭和初期、カフカの少し後で、昔の世界に戻ったような雰囲気がありました。建物の内部も面白いので撮影したかったんですけど、工事をしていて使えなかったんです。でもそれでよかったなと。なぜなら「門の中に入っていけない」という設定だから、建物の中に入ったらストーリーが壊れていました。非常にいい撮影場所です。ホラーにもピッタリだと思います。
――パペット劇のシーンは子供がトラウマになりそうな怖さでしたね。
ウィリアムズ 実はそうじゃないんですよ。助監督が「これは子供たちに見せるものではない」と非常に心配して、人形劇と子供たちのリアクションを別々に撮影しようということになっていたんですが、それが難しかったので、できるだけ残酷なシーンを省いて上演しながらリアクションを撮りました。でもリハーサルからみんな集まっていたので残酷なシーンも観てしまったんですね。それで子供たちがどういうリアクションをしたかというと「怖くないよー。こんなのただの人形だ!」ってふざけていて。それで僕は助監督に「言っただろう、子供たちはそういうもんだ!」と。
――じゃああれは本物の笑顔なんですね。子供を侮ってはいけませんね(笑)。アートや文学や音楽などからの影響が感じられるイマジネーション豊かな作品になって、デヴィッド・リンチやアレハンドロ・ホドロフスキーを思い浮かべました。そういう監督はお好きですか?
ウィリアムズ 好きですね、実験的で映画の壁を破ろうとする人たち。この映画は彼らの映画にも似ています。特にリンチの『ブルー・ベルベット』(86)は大学生のときに観たのですが、劇場で1回観て、出たらまたすぐ入った。同じ映画を連続で観るということはあの映画でしかやっていません(笑)。もうちょっと遡るとブニュエルとか、夢と現実の境界線を描くシュールな映画が好きです。でも次の映画として書いている脚本は普通のドラマです。ドラマの映画も嫌いではないんです、なぜかいつも歪んでしまうんだけど(苦笑)。準備中の作品が2本あって、ひとつはロマンティック・コメディで、ひとつは家族のドラマです。できるかどうかわからないけど、ちょっと規模が大きい映画として考えています。
――『審判』はクラウドファンディングも利用した自主映画でしたが、全然違う作品になりますね。そちらも楽しみです。
ウィリアムズ 今回初めてクラウドファンディングを利用しました。こういうスケールの小さいアート性のある映画は商業ベースで作れないので、クラウドファンディングがフィットしていると思います。アート映画を観たい人は、限られてはいるけどまだまだいると思うんですよね。商業映画に飽きちゃっている人たちが少しずつ増えてきている気がします。だからがんばらなければいけないと思っています。実験映画とか難しい映画がなくなると、テレビっぽい映画ばかりの非常につまらない世界になると思う。僕はスカパー!に登録しているんだけど、やっている映画が「誰が誰を殺した」とかそういう映画ばかり。たまに難しい映画を撮りながら、商業性を忘れずに、ときどき商業的な映画も作れればと思います。
――じゃあそこを探りながらバランスよく。両方面白く撮れる監督だと思いますので楽しみにしています。
ウィリアムズ そうですね、マックばかり食べていると身体に悪いですから、たまにサッパリと(笑)。
( 2018年6月1日 四谷・上智大学で 取材:深谷直子 )
登壇者:にわ つとむ、常石梨乃、田邉淳一、工藤雄作、早川知子、大宮イチ、ジョン・ウィリアムズ監督
出演:にわ つとむ,常石梨乃,田邉淳一,工藤雄作,川上史津子,早川知子,関根愛,村田一朗,大宮イチ,
坂東彌十郎(特別出演),高橋長英,品川徹
監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ
原作:フランツ・カフカ「審判」 音楽:スワベック・コバレフスキ
プロデューサー:高木祥衣,古川実咲子,塩崎祥平 撮影:早野 嘉伸 照明:大久保礼司
録音:小川武 美術:中村三五 編集:稲川実希 音響効果:堀内みゆき 監督補:高田真幸
助監督:岩崎祐 ヘアメイク:西尾潤子,松本幸子 衣装:斎藤安津菜 制作担当:竹上俊一
後援 上智大学ヨーロッパ研究所 公益財団法人日独協会 製作・配給・宣伝 百米映画社
© 100 Meter Films 2018
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2018年6月30日(土)より渋谷・ ユーロスペースにて公開
- 監督:オーソン・ウェルズ
- 出演:アンソニー・パーキンス, オーソン・ウェルズ, ジャンヌ・モロー, ロミー・シュナイダー, エルザ・マルティネリ
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- おすすめ度:
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- 映画原作
- (著):フランツ・カフカ
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