山田あかね 監督 映画『犬に名前をつける日』について【2/6】
シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
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――その後、監督はイギリスに犬の勉強をしに行かれるのですが、それはその犬のルーツを探りたいという想いからだったのですか?
山田 そうです、ゴールデンレトリバーってスコットランドの生まれなので、そこに行ってみたいという想いで行きました。
――行ったことで、何か救いになるようなことや心境の変化はありましたか?
山田 最初のゴールデンがブリードされた地に立てば、犬の神様からお告げでも来るかな……と思っていたんですが、そんなものは何も来ません(笑)。ものすごく寒い雪の中で、何もなかったんですけど、逆に何もないのがいいかなと思ったのと、イギリスで保護施設を回ったり、動物病院で医療の最先端に触れたりしたことで、亡くした命をこれ以上嘆くよりはこれから生かせる命のために働くべきだなと思いました。
――そこでようやく前向きに新しいことに取り組もうという気持ちになれたのですね。でもそれは犬に関わる仕事をあらたにしようということで、映像にしようということはそのときもあまり考えてはいなかったのですか?
山田 そんなには考えていなかったですね。イギリスのボランティア施設で働いてノウハウを学び、日本でもそういうことができるんじゃないかということをうっすらと計画していたんです。それでロンドンにあるボランティア施設で3か月働いてみたんですけど、よく分かったのは「そんなことは一朝一夕ではできないな」ということでした。それで日本に帰ってきて、大先輩の映画監督である渋谷昶子さんに「犬のために何かしたいと考えているんです」と話していたら、「自分が長くやってきた、映像で表現するのがいちばんいいでしょう」って言われたんです。そういう感じですね。
――日本の動物愛護センターや保護活動をしている方たちのことを取材して映画にしようとしたのは、そのイギリスでの体験があったからですか?
山田 そうですねぇ……。2010年の12月にロンドンの保護施設を下見したあと、帰国し、日本でもそういうことをやっていこうと考えていたのですが、年が明けて3月に地震ですよね。あの地震があって原発で取り残された犬たちの問題があったから、ボランティアに行ったりもしていたんです。その中で保護団体がずいぶん活躍しているんだなということを知り、そこから興味が湧きました。それで、震災のボランティアのあとに関東近県でやっている団体から取材していこうと思って「ちばわん」を見つけ出したという感じでしたね。
――ああ、映画の中でも震災のことは描かれていますが、震災が取材の出発点だったんですね。
山田 そうです。やっぱり震災は大きかったですね。震災を通してボランティアの人たちがすごく働いていることも分かったので、「ああ、ボランティアの力って大きいな」ということもあらためて思いました。
――映画に出てくる取材対象としては「ちばわん」と「犬猫みなしご救援隊」のほぼ二つに絞られている感じですが。
山田 絞ったというか、単純に自分が興味のあるところをずっと追いかけていって結果的にそうなったというだけで、この二つだけを取材しようと思ったわけではないですね。犬と暮らせる老人ホームがあると聞いたら行ってみるとか、興味のあるところは全部行っていますし、映画に組み込んでいない映像も山ほどあるので。犬のテーマで繋がりのあるところは割とひととおり行きました。
――取材にはみなさん協力的だったのですか?
山田 千葉の動物愛護センターは、普通に取材を申し込むと映像を撮る許可は下りなかったですね、その当時は。でも「ちばわん」さんのことを撮るということであればいい、という許可の取り方でした。公共施設の殺処分の現場を撮るのは難しかったですが、ボランティアの方たちはみなさん、協力的でした。
出演:小林聡美(『かもめ食堂』『プール』『マザーウォーター』『紙の月』ほか)、
上川隆也(『東京夜曲』『梟の城』『二流小説家 シリアリスト』ほか)、
渋谷昶子監督(カンヌ国際映画祭短編部門グランプリ『挑戦』)、
動物保護団体「ちばわん」「犬猫みなしご救援隊」
製作:スモールホープベイプロダクション
監督・脚本・プロデューサー:山田あかね(『すべては海になる』『むっちゃんの幸せ』)
構成:松谷光絵 撮影:谷茂岡稔 編集:大泉渉 ラインプロデューサー:竹内暢生
音楽:つじあやの 主題歌:「泣けてくる」ウルフルズ © スモールホープベイプロダクション
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