あいちトリエンナーレ2019〈映像プログラム〉
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019〈日本プログラム〉
第12回恵比寿映像祭
『息の跡』小森はるか監督最新作
空に聞く
ポレポレ東中野上映イベント情報
11/21(土)12:10回上映後:初日舞台挨拶:小森はるか監督
11/22(日)12:10回上映後:
トーク:ゲスト × 三島有紀子さん(映画監督)× 小森はるか監督
11/23(月・祝)12:10回上映後:
トーク:細馬宏通さん(人間行動学者)@kaerusan × 小森はるか監督
2020年11月21日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー、
ほか全国順次公開
かつての町の上に、新しい町が作られていく。
震災後の陸前高田で、いくつもの声を届けた
あるラジオ・パーソナリティの物語。
東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。失われていく何かと、これから出会う何か。時間が流れ、阿部さんは言う――忘れたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった。
監督は、震災後のボランティアをきっかけに東北に移り住み、刻一刻と変化する町の風景と出会った人びとの営みを記録してきた映像作家の小森はるか。傑作『息の跡 』と並行して撮影が行われた本作は、映像表現の新たな可能性を切り拓くことを目的としたプロジェクト「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」B07MQ4SM1Fとして完成。あいちトリエンナーレ、山形国際ドキュメンタリー映画祭、恵比寿映像祭と立て続けに上映され、先鋭的なプログラムの中でもひときわ大きな反響を呼んだ。
CAST/阿部裕美(あべ・ひろみ)
岩手県陸前高田市生まれ。東日本大震災による津波で、夫婦で営んでいた和食料理屋の店舗と実家が流失。震災後は、陸前高田災害FMのパーソナリティとして勤務。地元に寄り添った丁寧な取材と言葉選びで多数の人気番組を生み出して、地元のみならず全国にファンをつくる。退職後は災害公営住宅でコミュニティづくりに携わり、2016年からは「陸前高田昔がたりの会」を発足、お年寄りの昔語りを聞く会を市内で開催し、聞き手を務めている。2017年12月、新市街地にて和食「味彩」を再開した。
陸前高田災害FM 2011年12月10日より開局。コールサインJOYZ2AK-FM、周波数80.5MHz、市内高台にあるプレハブのスタジオから毎日24時間放送を続ける。阿部裕美さんは開局当初から2015年4月までパーソナリティを務めた。戦争体験から震災後まで一人の人生に耳を傾ける「気仙のじいちゃん気仙のばあちゃん昔がたり」、市内在住の中国人やフィリピン人パーソナリティが母国語と日本語でお送りする「外国語放送の時間」、陸前高田商工会青年部の3人が震災前の街の風景を思い浮かべながら未来を語る「舘の沖.com」、障害のある2人のパーソナリティーによるゆる熱なトーク番組「ユウケンの部屋」、中学生パーソナリティのみなみちゃんが独自の視点でまちの復興に切り込む「みなみの福興ラジオ」、再開事業所や仮設住宅の住民等のインタビューを紹介するワイド番組「はちまるゴーゴー生ワイド」など、陸前高田災害FMならではの市民中心の番組が全国から注目を集めた。また毎月11日の月命日には14時46分に合わせて黙祷放送を行った。2018年3月16日をもって閉局。
- 声高に、多くは語らないけれど、被災のつらさと涙がとても静かに伝わってきました。そして、それは押してくる現実の暮らしの中で、まるで何事もなかったかのように、その人の心に積み重なっているのでしょうね。こんなことをこんなふうに物語る人がいるのだと、私は湧いてくる感動を覚えました。――小野和子(民話採訪者)
- 陸前高田のあるひとときの風景、そこに生きるひとりひとりの声。津波にさらわれてもなおその地に花を咲かせる水仙やホタルブクロのように、阿部さんのラジオや小森さんのこの映画はそれを伝えてくれる。どこまでも繋がる空を見あげ胸がいっぱいになる。――小林エリカ(作家、マンガ家)
- 「現実逃避」という言葉があるぐらいだから、僕達は常日頃、現実の問題と直面して疲弊したり、怯えたり、見て見ぬフリをしたりする。現実は平板で退屈で、時に容赦なしの災厄をも齎す。場合によっては、僕達の生の前に立ちはだかる巨大な壁のように思える事さえある。そんな現実の脅威に突き通された場所から生真面目に電波を発信する阿部裕美さんの手つきに、その現実を捉えようとする小森監督の手つきが静かに重ねられる情景に、臆病者の僕などは心底参ってしまう。現実から逃げ出す代わりに、現実を慎重に重ね合わせることの美しさが見事に定着された、その時間にしか存在し得なかった稀有な映画だ。――澁谷浩次(yumbo)
- 津波後の陸前高田の思いがけない六年九ヶ月が、一人の女性の表情と声とで点描されており、心に浸みる。この文句なしの傑作と出会うべく劇場にかけつけ、笑い、そして涙せよ。――蓮實重彦(映画評論家)
- ラジオの持つ「誰かがそこにいて、その人の言葉で話している」生身の気配。それぞれの場所でそれぞれの思いを持ちながら、声をかけ合い、つながっていく人々の姿。これまでも、これからも、声は希望。――秀島史香(ラジオパーソナリティー)
- この映画には、失われたものと今を行き来する余白がある。安易な共感ではない、でも共に感じる時間を絶やすまいとする、ラジオとカメラのそのささやかな祈りに、思わず耳を澄ませた。――広瀬奈々子(映画監督)
- もうたまらない。ありとあらゆるものがこんなにも豊かに溢れてみえるのはなぜだろう。手を動かすこと、ひとの話をきくこと。みなさんと小森さんがしつこくかつ軽やかにそれを繰り返すから、こんな時代のなかでもまったく新しい日々が生まれ、映るのだろうか。同時代にこの映画が作られたことがたまらなく嬉しい。――三宅唱(映画監督)
撮影・編集・録音・整音:福原悠介 特別協力:瀬尾夏美
企画:愛知芸術文化センター 制作:愛知県美術館
エグゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司 配給:東風
2018年/日本/73分/DCP
© KOMORI HARUKA
2020年11月21日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー、
ほか全国順次公開
- 監督:小森はるか
- 発売日:2019/3/30
- おすすめ度:
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