山田あかね (監督)
映画『犬に名前をつける日』について【1/6】
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シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
人間にとっていちばん近しい動物といえば犬と猫。だが日本の法律上、飼い主がいない場合は行政に引き取られて殺処分されることが決まっており、その数は年間12万8000頭以上にのぼる(平成25年度)。『犬に名前をつける日』は、そんな犬や猫たちのおかれた過酷な現実と、その命を救うために奮闘する人々の活動をめぐるドキュメンタリードラマだ。山田あかね監督の4年間にわたる取材の記録は、その心の揺れとともに小林聡美に託され、取材者を演じる小林自身の深いまなざしを通して、保護活動の現場を見せていく。人間の身勝手さに憤りを感じながらも、1頭でも多くの命を救うために行動する保護団体の人々の姿が、シンプルな問いを投げかけてくる。自分にできることは何だろう?と。また、山田監督がインタビューの中で語ったとおり、犬や猫の問題は人間の問題でもある。犬や猫にとっても人間にとっても息苦しくない社会にするため、本作が多くの人に届いて、この中で描かれる普遍的な問題を考えるきっかけになればと思う。山田あかね監督に製作の背景や作品に込めた想いを伺った。 (取材:深谷直子)
――素晴らしい作品を作っていただきありがとうございます。犬や猫の殺処分のことなどをこの映画を観て初めて知りましたし、そんな動物たちを救おうという想いで精力的に活動する方たちがいることにとても励まされました。監督がこの作品を作る原動力となったのも、飼われていた犬を亡くされた悲しみだということですね。
山田 そうです。「ミニ」という名前のゴールデンレトリバーだったのですが、お母さんの犬から飼っていました。近所に住んでいるゴールデンレトリバーの男の子と公園で出会い、飼い主同士で子供を作ろうということになったんです。当時は動物愛護について無知でしたから、自分たちの犬の子供がほしい一心でした。2頭は仲良しだったので、2000年に8匹の子犬が生まれました。オス犬の飼い主さんと手を取り合って喜び合いました。出産のときには、自分の手で子犬を取り上げ、その様子も撮影しました。そのうちの1匹を自分で飼うことにしたのですが、生まれた瞬間から手にした犬だったから深い愛情を感じていたので、死んでしまったときにはものすごい喪失感だったんですよね。ミニ自身も生まれたときから私がいたので本当に慕ってくれていたし、その関係が壊れてしまったのはものすごい痛手でした。
――出産からの成長の記録も映画の中に収められていますよね。
山田 本当に大事に、できる限りのことをしてきたつもりだったんですが……。ミニは2010年に病気でこの世を去ったのですが、その年はちょうど自分が初めての映画を作っていたときで、すごく忙しかったんです。それまでもテレビの仕事で忙しかったんですけど、映画ということで精神的に追い詰められていた。そのせいで病気になったのを見逃してしまったのではないか?と思え、なおさら悲しかったんですよね。
――それでご自分を責めてしまうようなところがあって。
山田 そうですね、そのときは本の執筆も重なっていたから、自分の作品作りに力を入れすぎるあまり犬を丁寧に見ていなかったのでは?という後悔がありました。そのときに強烈に思ったのは、「ミニの命を返してもらえるんだったら、もう映画を撮れなくてもいいし、本も書けなくていい。今までやってきた仕事なんてゼロだ」ということでした。そのときは本当にそう思って、テレビを作ったり、本を書く仕事をやめて、犬のために何かをやりたいと、割と軽く思い詰めていましたね(苦笑)。
――全然軽くないです。本当に家族というか、人間と一緒ですよね。
山田 人間とはまた違うんですよね。「もの言わぬ存在」というか、じっと耐えてしまうから、そこが申し訳なかったです。自分ではその子を幸せに育てているつもりだったけど、本当にそうだったのか?自分の驕りであったのではないか?という想いがありました。
出演:小林聡美(『かもめ食堂』『プール』『マザーウォーター』『紙の月』ほか)、
上川隆也(『東京夜曲』『梟の城』『二流小説家 シリアリスト』ほか)、
渋谷昶子監督(カンヌ国際映画祭短編部門グランプリ『挑戦』)、
動物保護団体「ちばわん」「犬猫みなしご救援隊」
製作:スモールホープベイプロダクション
監督・脚本・プロデューサー:山田あかね(『すべては海になる』『むっちゃんの幸せ』)
構成:松谷光絵 撮影:谷茂岡稔 編集:大泉渉 ラインプロデューサー:竹内暢生
音楽:つじあやの 主題歌:「泣けてくる」ウルフルズ © スモールホープベイプロダクション
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