中村達也&石川忠轟音ライブ

『野火』爆激上映&轟音ライブイベント PART2

石川忠(『野火』音楽/メタルパーカッション)×
中村達也(『野火』出演/ドラムス)轟音ライブ レポート

(取材:深谷直子 撮影:渡邉俊夫)

中村達也中村達也
中村達也&石川忠轟音ライブ2
「猛獣対猛獣」と先ほどのトークの中で塚本監督が形容した石川忠と中村達也は、まさに一戦交えようという張り詰めた表情でステージに現れ左右に向き合った。そして繰り広げられたのは好敵手同士のガチな格闘。相手の技を確認するや瞬時に反応し、嬉々として応戦していく。石川はジャンクの要塞の中で身体の向きを変えては甲高い金属音を立て、ノイズを大音響で撒き散らす。一方ドラムと一体化したような中村はすさまじいテンションで突っ走り、重低音を轟かせる。肉体を駆使し、魂を解き放った両者の勇姿と、とどまることなく膨張する音圧の凄さに、観客は圧倒されつつ昂ぶっていく。でもそれだけではない。スクリーンには二人を煽るように塚本作品の名場面が映されていたが、やがて『野火』からの美しい音楽も彼らの演奏に絡み合ってきた。「轟音ライブ」の正体は、石川と中村のみならず、塚本ワールドもがっぷり組み合うスペシャルな饗宴だった。

塚本監督の作品は劇場で観ないと魅力が半減する……というのは映像とともに石川が手掛ける音楽を浴びるという「体感」にこそ醍醐味があるからだが、それは強烈一辺倒というわけではなく、ジャンルも多様でとても豊かなものだ。想像力を飛躍させ、原初の感情を呼び覚まさせてくれるような。この日もオリエンタル、インダストリアル、トライバル、アンビエントと様々な音楽が使われ、演奏を触発していった。こんな極上の音楽を生み出す石川はパフォーマンスも異彩を放ち、寸胴鍋のような物体(そのもの?)を床に転がしてその中に潜り込みさえもした。圧巻の奇才だ。

中村は鬼神のように荒れ狂って叩きまくったかと思えば、ときには速く遅く、一心不乱にリズムを刻み、自由自在にドラムを操る。強烈なビートが次第に身体の奥で大きな波を起こし、轟音の真っ只中だというのにとても心地よい。また、豊田利晃監督が映像作家として参加するTWIN TAILはもう活動歴も長い中村の重要ユニットだが、強靭な映像とのコラボは中村の演奏のドラマティックさを増幅させるものだ。この日の中村が炸裂したのは、スクリーンにあのゾクゾクするような「BULLET BALLET」のタイトル・ロゴが映ったとき。デビュー作との奇跡の邂逅を果たし、腕も足も力まかせに、手の付けられないスピードで狂おしく疾走していった。

ステージでは赤や青のライトが激しく点滅し、客席の壁には二人のシルエットも大きく映る。鼓膜も網膜も、肌も内蔵も、刺激で満たされてとんでもない快楽だ。金属と肉体、世界と人間、光と闇、生と死と再生……、あらゆるものが混沌と融け合い、時間にして30分足らずの間に見たことのない風景を作り出していった。最後の一音が鳴らされたあとも残響が響く会場に、夢から醒めたような観客から次々「おお~!」の声が上がる。それは歓声というよりも野性に還った雄叫びのようだった。石川はケロリと「ありがとう~」と挨拶して怪人ぶりを発揮し、興奮でいまだ夢の中という面持ちの中村は、「こんなクソ東京、全部夢だよ。ゆーめ。……バーン!」と『バレット・バレエ』の台詞を残してステージをあとにした。

中村達也
中村達也
石川忠
石川忠                     ©渡邉俊夫

( 2015年7月1日 渋谷・ライブハウスWWWで 取材:深谷直子 撮影:渡邉俊夫)

PART1 リリー・フランキー × 塚本晋也監督 トークショー レポート

野火 (日本 / 2014 / 87分)
原作:大岡昇平「野火」
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也 監督・脚本・編集・撮影・製作:塚本晋也
配給:海獣シアター © Shinya Tsukamoto/海獣シアター
公式サイト 公式Facebook

2015年7月25日(土)より、ユーロスペースほか全国公開

2015/07/08/16:25 | トラックバック (0)
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