インタビュー
サトウトシキ監督監督『名前のない女たち うそつき女』

サトウトシキ (監督)
映画『名前のない女たち うそつき女』について【4/6】

2018年2月3日(土)~3月2日(金)新宿K’s cinemaにて公開 他全国順次

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

――最初のシーンで、汚部屋に住んでいるAV女優が志村の取材を受けて「今すごく幸せ」と言うのも、志村はバカにするんですが、私には切なく思えました。今まで居場所のなかった女の子がAV女優になって自立し、今の生活に初めて本当に張り合いを感じているんだろうなと思って。

サトウ ああ、そうか。僕の意見としては、「この人は幸せだ」とか「不幸だ」とかとはあまり思わないですね。なぜならば個人の幸せを他人がわかるわけがないと思うから。今までいたところから抜け出してウキウキしているのを幸せっていうのか、ずっと家にいて好きな勉強をしているのが幸せか……。幸せとか不幸せって感情とはあまり関係ない気がしますね。多分この脚本の幸・不幸というものの後ろ側には生活していくということが基盤にあって、生活というのは今日が終わって明日が来て、明日が終わって明後日、って生きていくということだと思うんですけど。それをひとりでなのか、二人でなのか、大勢でなのか?ということも含めてそのあたりを描こうとしているんじゃないのかなと思うんですけどね。

――生活で言うとやっぱり男性のほうが背負うものが多いというか。志村は離婚してしまっているんですけど、養育費を払わなければならないし、別れた奥さんや子供に誇れる仕事もしたいと必死ですよね。

サトウ 適当ですからね。

――(笑)。確かに適当ですよね。取材相手にあれだけ失礼なことを言っておいて、その直後にお金を借りに行くとか。

サトウ 困ったら誰にでも言いますよ。

――志村には母親の介護をしなければいけないというのもありますよね。介護というのも原作者の中村さん本人の経歴から着想されたのでしょうか?

『名前のない女たち うそつき女』 『名前のない女たち うそつき女』場面1 サトウ そこは中村さんからと言うよりも原作からですね。ただ、志村という男を主人公に持っていったときに、どのへんに目を付ければいいか?ということになって、中村さんが過去にルポライターをやっていて、介護業界で仕事をして、またルポライターに戻ってきたというのを掘り下げたらいいんじゃないか?ということになって、まわりの女性とかに「今現在AV女優のことをどんなふうに思いますか?」と質問をしてみたわけですよ。そうしたらあんまりこれだという答えがなく、言ってみれば他人事のような感じだった。これじゃわからないなと質問を変えて「AV女優になりたいと思ったことはありますか?」って訊いたら「そういえばない」って言うんですね。ということはそこで初めてAV女優のことを考えたんだなって。そういうものなんですよ。それはわりと大切で、どういう映画にするかとか、どういう演出をするかということのヒントになりました。そういう人たちの感情が見えた。

――そうなんですか。一歩間違えたら自分も、という感じがありそうに思いますけどね。

サトウ 俺なんかもそう思っていたんですけどね。「あのときこう言われたことに乗っかっちゃったら」みたいなちょっとしたきっかけでなってしまいそうな気がしていたけど、そうでもなかったんです。そのへん中村さんがAV女優を追いかけて、今現在の「AV女優」と言っていいのか、「1本、2本だけやりました」という人を取材し続けているというのは、何かどんどん変わっていく社会の変化みたいなものを感じようとしているように思えるんですね。過去にAV女優をしていた人も含めて「今現在」みたいなことに相当興味のある方なんだろうなと、特に若者にという気がしましたね。この脚本になって、登場人物に若い人がたくさん出るようになったんですね。志村という過去から現在を見てきた人を主人公に立てたときに、「今の若い人が」っていうのがもうちょっと出せるんじゃないかなと思って。それは僕も興味があったところですね。

――なるほど。葉菜子の彼氏の辻本と、明日香がホストクラブで出会うツバサという若い男性二人も、キャラクターがしっかり描かれていますよね。何を考えているのかわからないようでいて、みんな自分の世界を持って生きているんだなあと。一方で中年の志村のほうも彼らと状況は変わっていなくて、仕事は持っているけど編集者からいろいろ言われて苦しんでいて。

サトウ ああ、でもそれは僕なんか常々感じていることですからね。どうやってルポライターである志村の造形を作るか?というところで、実際に取材をするのではなく、脚本を作る上での打ち合わせをうまく使っているところがあるんですよ。プロデューサーから「早く上げてくれ」とか言われたときのイラッとした感情を志村の台詞にしたりだとか、最初のルイボスティーとか、そういうのはまさしくあった脚本家の実体験です。そういう感情みたいなものは「これで大体」みたいな作り方じゃないわけで、ムカーッとした感情を志村に託すわけですよ。そうすると人物像が立ってくるんです。彼女がイラッとしてくれたことによってああいう台詞が生まれたんです。

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名前のない女たち うそつき女 ( 2018年/日本/DCP/カラー/ステレオ/86分 )
出演:吹越満,城アンティア,円田はるか,笠松将,小南光司,吉岡睦雄,不二子,クノ真季子,川瀬陽太
監督:サトウトシキ(「ジャイブ」「ちゃんこ」「モーニングセット、牛乳、春」)
原作:中村淳彦「名前のない女たち 貧困 AV 嬢の独白」(宝島社)
プロデューサー:森原俊朗・小林良二・橘慎 脚本:加瀬仁美 撮影監督・スティル・編集:小川真司(J.S.C.)
録音:岩間翼 助監督:大城義弘 音楽:入江陽 ラインプロデューサー:川上泰弘
制作会社:ソリッドフィーチャー 配給・宣伝:渋谷プロダクション
製作:「名前のない女たち うそつき女」製作委員会(オデッサエンタテイメント・渋谷プロダクション)
主題歌:アクメ『CALL MY NAME』 ©「名前のない女たち うそつき女」製作委員会
公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2018年2月3日(土)~3月2日(金)
新宿K’s cinemaにて公開 他全国順次

2018/02/05/20:24 | トラックバック (0)
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