君への挽歌
2025年2月7日(金)グランドシネマサンシャイン 池袋
で1週間限定公開!
鎮魂歌は、誰のために在る。
韓国伝統の歌が紡ぎ出す、ある老夫婦の愛の物語。
韓国の口承伝統芸能「パンソリ」の優れた歌い手としてのツアー公演、大学教授としての学生たちへの国楽の講義と、長年にわたり多忙の日々を送ってきたドンヒョク。
彼は「晩年を故郷で過ごしたい」という妻ヨニの願いを受け入れ、夫婦二人での美しい田舎暮らしを始める。ないがしろにしがちだった妻との時間を取り戻そうとするドンヒョクだったが、ほどなくして彼女の言動の異変に気づく。
今何を話していたのか、何をしていたのかを忘れてしまう。感情を制御し切れず、時には暴力まで振るってしまう……ヨニは、認知症を患っていた。
何もかもを捨てて、愛する妻の介護に向き合うドンヒョク。しかし認知症が進行し、別人のように変わっていくヨニに、彼の心は疲れ果てていく……。
イ・チャンヨル監督が思索の果てに辿り着いた人生の在り方を、高齢化が進む韓国社会で多くの者が向き合う「認知症」と、韓国の口承伝統芸能「パンソリ」を題材に綴った『君への挽歌』。
パンソリの歌い手である夫と認知症を患った妻の、生と死の間で歌い上げられる愛の物語な本作は、韓国ではまだ認められていない安楽死などにも言及し、命の尊厳の現実を観る者に問いかける内容には国を越えて人々の心を震わせ、世界各地の映画祭で計51冠もの賞を受賞。韓国インディペンデント映画史上、最も多くの賞を獲得した映画となった。
主人公ドンヒョク役を演じた俳優ソン・ドンヒョクは、認知症を患った自身の母親を15年間支え、本作の撮影開始直前に見送った過去を持つ。亡き者の成仏を願う「晩歌」など彼が生歌で披露する魂の歌声は、本作の最大の見どころの一つだ。ドンヒョクの妻ヨニ役は、日本でも話題となった韓国ドラマ『ペントハウス』などで知られるチョン・アミ。200本以上の演劇作品に出演したベテランとして、認知症により否が応でも変化していく一人の女性の姿を自然かつ壮絶に演じた。
また本作の日本配給を手がけるのは『輝け星くず』『幕が下りたら会いましょう』『笑うマトリョーシカ』などに出演する俳優・松尾百華と、彼女が有志と立ち上げた映画制作・配給会社「SCRAMBLE FIILM」。
「人と人をつなぐ存在」として俳優活動を続ける松尾は、口承により人から人へ受け継がれてきた伝統芸能パンソリ、一言では語り尽くせない老夫婦の愛の結末を描いた本作に感動し、日本での配給を決意。自身と同社にとって初の海外配給作品となった。
- 皆さんご注意ください!
この映画は、
アルツハイマー患者とその家族の姿を
美化した作品ではありません。
いくつもの選択をしながら歩むのが人生。
共に歩んだ人生…
この夫婦に突きつけられる選択肢はあまりにも酷で…
それでも彼の答えには常に愛がありました。
だからこそ、
リアルに描かれる家族の姿を見るのが辛かった。
僕なら耐えられるかなぁ…
愛する人が壊れていく…
最後まで消えなかった彼女の記憶に
胸が締め付けられます。
「貴方しかいない」
こんなに素敵な言葉が
こんなにも重く、悲しく響くなんて…
時に叫ぶように、泣くように彼が歌う
収まりきらない感情を受け止めたパンソリは
伝統芸能であればこそ時空を超え、
スクリーンを超えて
心を深く、深く伝えていました。
そう、この作品は
どんなに時代が変わっても変わらない
生きていく人間の喜びと苦悩とエゴ
そして全てを包み込む
普遍的な愛を伝えてくれています。
彼の最期の選択も愛ですよね?――和泉元彌(狂言師・和泉流二十世宗家)
- 人生は出逢いと奇跡。本作松尾プロデューサーからコメント依頼。直前に親愛なる恩人の訃報。哀しみを噛み締めながら深々とした真夜中に本作を鑑賞した。想像通り、悲哀に満ち溢れた内容だった。と同時に、圧倒的な作品力と演技力に胸が締め付けられた。
人はなぜ歌うのか。挽歌。それは、魂の歌。本作は愛に溢れた人間不条理の傑作だと思う。挽歌は、古代日本人の死生観を探るためにも欠かせない。本作を観た方々は、それぞれに愛の挽歌を感じるのではないだろうか。――金延宏明(映画プロデューサー) - これまでに耳にした中で、最も哀切な「声」と出会った。
それは、現実と幻想の狭間を彷徨う魂が紡いだ、歌か嗚咽か判然としない空気の揺らめきだった。
胸を打つ必殺のワンカットを持つ映画は、強い。――串田壮史(映像作家) - 認知症介護という身近な社会問題を題材に置き、それゆえに、観る者の感情にせつなく哀しく訴えかけてくる。誰にでも起こりうる問題であるために、ソン・ドンヒョク、チョン・アミ、二人の名優の演技が、心にささり、深く考えさせられる。愛する人が壊れていく様を身近で見続けるとき、どう向き合って行けば良いのか。
この映画はリアルな愛の物語である。愛する妻への晩歌に、心がふるえた。
晩歌とはいったい誰のために歌うものなのか。深く胸に響きました。
劇場で観てほしい作品です。
――前田和紀(映画プロデューサー) - 認知症による自我崩壊のプロセスを演じる役者の身心が凄い。たった一度のその演技を、可能な限りたった一つの、静止したキャメラで眼差す監督の胆力と巧さ。日常の風景の一部のようでありながら、生死を超える彼方への願いのように紡がれる物語は、愛だけが人生であることを感動とともに教えてくれる。
――松本准平(映画監督)
- 見終わった後に静かに今ここで生きていることの喜びを感じさせてくれる。
路上で踊り歌うシーンは、生きていること、命、魂が天から浴びるように聞こえてくる、忘れられないシーンです。――南阿豆(舞踏家) - 美しいと思う事がそうではなく、美しくないものとされるのがそうではない…。この映画を観た後に、ふとそんな事を思った。
死とは何かと、突きつけられたと同時に
今を「生きる」ということを深く感じさせられた映画だった。
そして、ソン・ドンヒョク、チョン・アミの芝居がとにかく素晴らしかった。
彼らは、どんな自らの真実と想いでこの作品に関わっていたのか…。想像するのは容易ではない。ただ、確かなのは、この様な話がこの世界に存在しているという事実だ。――奥津裕也(俳優) - 生と死を繋ぐ家族の物語。
認知症という病気に正面から真摯に向き合った本作。劇中の家族の姿に自分ならどこまで献身的に尽くせるんだろうと考えるきっかけになる作品でした。
――関幸治(俳優) - 映画の中で同じ「認知症」を扱った身として背筋が伸びました。
老い、家族、死への監督の誠実な目線が、韓国伝統芸能・パンソリと共に胸に熱く届きました。
何度忘れても、何度でも寄り添ってくれる人がいる。
そんな愛が美しかった。――奥田裕介(映画監督) - 人生を悔いなく穏やかに終えたい、という願望を持っている人は多いだろう。
しかし現実にはそう上手くはいかないこともある。
上手くいかなくても、最後まで自分と妻の人生に愚直に向き合おうとする主人公に共感した。――中村公彦(映画監督) - 認知症に限らずあらゆる障害を持つ人にとって、現代社会はまだまだ生き難い世界かもしれない。そんな世界では家族愛が救いの1つ。
この映画を通してどれだけ自己を犠牲にできるか、愛を惜しまずに分け与えられるかを考えさせられ、日頃から人間性を育むことを心がけたいと感じました。現代人に見て欲しい、切なくも温かい作品です。――フェルナンデス直行(俳優)
脚本・監督:イ・チャンヨル
プロデューサー:イ・ハンヨル 製作:映画社純粋 日本語字幕:コンテンツセブン
配給協力:LUDIQUE,アルファープロデュース, グローバルリンクス
宣伝:Cinemago 配給:SCRAMBLE FILM
2023年/韓国/120分/カラー/ビスタ/G/原題: 그대 어이가리
©2022 Film Company Soonsu