2007年度マイ・ベストムービー( INTRO編集部 )
河田拓也 | 佐藤洋笑 | 佐野亨 | 鮫島サメ子 | 仙道勇人 |
膳場岳人 | とくしん九郎 | 高野雲 | 村本天志 | 百恵紳之助 |
膳場岳人
『愛の予感』(小林政広)
『ブラックブック』(ポール・ヴァーホーヴェン)
『いくつになってもやりたい男と女(たそがれ)』(いまおかしんじ)
『人が人を愛することのどうしようもなさ』(石井隆)
『パラダイス・ナウ』(ハニ・アブ・アサド)
『大日本人』(松本人志)
『童貞。をプロデュース』(松江哲明)
『気球クラブ、その後』(園子温)
『ゾディアック』(デビッド・フィンチャー)
『ラザロ』(井土紀州)
レビューを書いたものはリンク先をご照覧いただくとして、その他の作品について一言。
『ブラックブック』はレジスタンスもののパワフルな傑作。ナチの暴虐を糾弾しながらも、中東戦争を匂わせるエンディングでイスラエル建国の功罪を問いかける。この成熟した歴史観と度を越したサービス精神にノックアウトされた。
『人が人を愛することのどうしようもなさ』はどうやら新しいステージに立ったらしき石井隆の気迫と熱情に眩暈が。
『パラダイス・ナウ』はパレスチナ暫定自治区を舞台にした硬質なテロ映画。侵略者の自己憐憫に終始した『ミュンヘン』の100倍、存在意義がある。
『大日本人』は失敗作かもしれないが、カミの黄昏あるいは愛国者の憂愁といったムードを芬々に漂わせ、強く印象づけられた。
とくしん九郎
01. 『痴漢電車 びんかん指先案内人』(加藤義一監督/オーピー)
02. 『江戸女刑罰史 ~緊縛妖艶遊女~』(城定秀夫/ミュージアム)
03. 『桃肌女将のねばり味』(竹洞哲也監督/オーピー)
04. 『隣の未亡人 幼妻エプロン日和』(城定秀夫/TMC)
05. 『不倫同窓会 しざかり熟女』(竹洞哲也監督/オーピー)
06. 『誘惑 あたしを食べて』(佐藤吏監督/新東宝)
07. 『江戸女刑罰史 ~女郎雲~』(城定秀夫/ミュージアム)
08. 『未亡人アパート 巨乳のうずく夜』(吉行由実監督/オーピー)
09. 『特命シスター ねっとりエロ仕置き』(渡邊元嗣監督/オーピー)
10. 『ギネスの女房』(城定秀夫/フルモーション)
次点『淫情 ~義母と三兄妹~』(坂本礼監督/国映=新東宝)
エロシネマ界は、2007年も「城定秀夫イヤー」。一般映画進出こそなかったものの、加藤義一監督に初のPG的評価をもたらすであろう傑作『痴漢電車 びんかん指先案内人』の脚本を担当し、自らは、フ
ルモーション/ミュージアムといったもう1つ大きな舞台で快作を連発しました。同業界ではもはや向かうところ敵なしの彼ですが、「エロかつエンターテイメント」という点を何より重視し続けるという、置かれた状況下において120%正しい部分で勝負する姿勢は、かつての「ピンク四天王」とは明らかに一線を画しており、この先一般商業映画に進出した際も、間違いなく彼は成功をつかみ続けると、小生は確信しています。今年こそ、その第一歩をこの目にしたいと切に願っておりまする。
ピンク映画界に限ると、今年もオーピーの一人勝ちだったと思います。その中でも、やっぱり光ったのは、竹洞哲也&小松公典コンビ。「上手さ」という点では城定監督に及ばずとも、ツボを押さえた上でハジけにハジけまくるそのスタイルは、多くの人に、心地よい笑いと感動を与え……たはずです。
一方で、製作数を更に減らして新作わずかに3本の国映……この先、どこへ向かって行くのでしょうか――??今年こそ、是非多くの監督にチャンスを与え、多くの力作を世に送り出してほしいと願います。
高野雲
<GOOD!>
『バベル』
『ブラック・スネーク・モーン』
『あるスキャンダルの覚え書き』
『転々』
『ONCE ダブリンの街角で』
『イタリア的、恋愛マニュアル』
『松ヶ根乱射事件』
『天然コケッコー』
『サッド ヴァケイション』
(順不動)
<BAD!!>
『めがね』
『バームクーヘン』
『仮面ライダー THE NEXT』
『大統領暗殺』
『ラスト・ラヴ』
『幸福な食卓』
『AVP2 エイリアンズVS. プレデター』
『オリヲン座からの招待状』
『叫』
(順不動)
ロイ・ヘインズというドラマーがいる。
1940年代半ばにレスター・ヤングと共演したかとに思えば、50年にはチャーリー・パーカー、60年代後半にはチック・コリア、90年代にはパット・メセニーと、その時代時代のメインストリームに位置するジャズマンと共演を果たしているドラマーだ。
活動歴の長さもさることながら、それ以上に、時代とともにスタイルの異なるミュージシャンの演奏に柔軟に適応できる表現のレンジの広さも感嘆すべきことだ……、という文脈で語られがちなドラマーだが、果たしてそうなのだろうか?
もちろん、彼の柔軟性のあるドラミングを賞賛することは吝かではないが、彼の持つビート感覚は、時代とともに変化しているわけではない。
彼のタイム感覚は、非常に素早い。これは昔から変わることなく一貫している。彼がその時代時代によってタイム感を変化させたのではなく、時代が彼のスピード感覚に追いついてきたというほうが適切だ。
おそらく、50年代のハードバップ期、すなわち、アート・テイラーやフィリー・ジョーのようなタイプのドラマーが重宝された時代においての、彼のタイム感覚は、時代が求めるスピード感より、いくぶんか速かった。
ようやく時代が、彼のスピード感覚に適合しはじめるのは、恐らくは60年代。チック・コリアの『ナウ・ヒー・ソングズ・ナウ・ヒー・ソブズ』あたりからだろう。
以後、タメや後ノリよりも、スピード感と前へ前へとプッシュするスタイルのドラミングが当たり前になってくるが、ロイ・ヘインズのドラミングは、“最初から速かった”。
言い換えれば、彼の持つ天性のタイム感というのは不変で、音楽においては、そう簡単に人の持つ時間間隔をいうものは変えられないということが分かる。
しかし、映画においては?
2007年に上映された山下敦弘監督と三木聡監督による映画は、作品ごとにタイム感が変化しており、映画とは音楽以上に自由度の高い表現形式なのだということを改めて感じた。
まずは、山下監督の『松ヶ根乱射事件』と『天然コケッコー』。
本当に同じ監督の作品なのかと思ってしまうほど、この2作は、鑑賞者が映像に接した瞬間から腑に落ちるまでのタイム感覚が異なる。超アフタービートの緩さを誇る『松ヶ根』と、定速ビートをキープしつつ、ゆるやかに画面と人物描写に奥行きを持たせる『天然コケッコー』のタイム感の違いはどうだ。
三木聡監督も同様。『図鑑に載ってない虫』と『転々』の2作品は、小ネタギャグの累積オンパレードという作りは変わらないにも関わらず、そのギャグが笑いを誘発する速度がまるで違う。彼も山下監督同様、オンビートとアフタービートの使い分けの巧みな時間師と感じた。
さて、今年のベスト10は上記のごとくだが、強いて1作品だけを選ぶとなれば、躊躇なく『バベル』を挙げる。
鑑賞後、時間の経過とともに、あれやこれやと突っ込みを入れたくなる内容ではあるが、それでも、上映中の2時間は、マバタキする時間も勿体無いと思うほどスクリーンに眼を釘付けさせるだけの強引な“映画の腕力”を発揮してくれた。制作側の意図やら思想、コンセプトを超え、単純に映画としての力量を感じた。終始、神経と細胞をザワザワさせる映像と、巧みな選曲。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、音と空間を切り取る達人だ。
隠れ名作(?)として、『ブラック・スネーク・モーン』もオススメしたい。ブルース知らずはブルースに目覚め、ブルース好きはますます深みにはまることでしょう。
『サッド・ヴァケーション』は、ラストにアルバート・アイラーのゴーストがかかったことで、少なくとも2ポイントはランクアップしてます(笑)。
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さて、ワースト。
これはもう『めがね』に決定!(笑)
同じ荻上直子監督による、昨年上映の『かもめ食堂』が良かっただけに残念。
『かもめ食堂』の中で、私がもっともイヤだと感じた部分、すなわち、もたいまさこの“そこはかとなく不思議キャラ”が抽出&拡大され、悪いことに、もたいキャラが映画の太い芯となっているので、それだけで引いてしまうに十分。しかも、それ以外の余計な部分が極力そぎ落とされているゆえ、より「もたい色」が強烈に放たれている。それはそれで、もたいまさこに罪はないが、もたいキャラに荷を負わせ過ぎの世界観には罪がある(笑)。
イジワルな目線で観ると、「たそがれ」という言葉で、人間を呆けさせる新興宗教に主人公がハマってゆく過程にも受け取れ、現代人の「癒し願望」とやらを「こんなもんだろ」とあっさりと見透かしているかのようでもあり、そのじつマト外れな感も否めず、食い物がうまそうに撮影されているところを除けば評価すべきところのない暇潰し黄昏映画。
田村正和がテナーサックスに挑戦したジャズムーヴィ『ラスト・ラヴ』も期待はずれな内容で、残念。
村本天志
1.『善き人のためのソナタ』
2.『パンズ・ラビリンス』
3.『ココシリ』
4.『ゾディアック』
5.『GOAL!2』
推薦/『グミ・チョコレート・パイン』
洋画がいいのが多かった。
邦画はあんまりかなぁ。
椿もスキヤキも厳しかったし。
三丁目なのかなぁ。恋空なのかなぁ。
つらいなぁ。
浦和VSミラン的な格差、実力差は絶望的だものなぁ。
選んだ5本には、はっきりひれふしてます。
その映画力に。
絶対邦画じゃ無理ですもん。
内容もスケールも。圧倒的ですもん。
映像も中身もワールド・クラスですもん。
日本で撮影され日本人俳優もたくさん出てる
中国映画『呉清源』とかも絶望的にいいもんなぁ。
俊輔がセルティックで活躍してるようなもんす。
なら、あなたが撮ってみれば……と言われそうですが甲斐性無くなかなか。
すいません……監督・バンザイ!ではなく……監督・失格!……ですねぇ。
来年出直します。
でもケラさん監督の『グミ・チョコ~』はいいです。
映画監督たちをあざ笑うかのようにいいです。自虐の批評でした……(汗)。
百恵紳之助
上京15年、一番映画を観なかった年になってしまった……。
年々優しい映画が好きになってきているような……。
アイウエオ順です。
『アポカリプト』
『聴かれた女』
『サイドカーに犬』
『世界最速のインディアン』
『ブラックブック』
アポカリプトとブラックブック以外の三本は
登場人物たち全員みんな好きな人たちで、い~い気持ちになれたものです。
あ、サイドカーのガキはちょっと残念だったか。特に弟。
でも、大人たちが子供に図らずもちょこっと見せちゃう「大人の世界」の見せ方がとても良かった。
昭和な感じって言うの?ヤな言い方だけど。
それだけに子供がなー……。
2008年は劇場で百本は観るぞ!
河田拓也 | 佐藤洋笑 | 佐野亨 | 鮫島サメ子 | 仙道勇人 |
膳場岳人 | とくしん九郎 | 高野雲 | 村本天志 | 百恵紳之助 |
膳場岳人 ,高野雲 ,村本天志 ,百恵紳之助 ,とくしん九郎 ,年度別ベスト
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