脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記

『大都会』#23、#24。『大激闘』#2、#3

第十二回

佐藤 洋笑

鉄格子から覗く夜空は、自由の色をしているだろうか――。
自由の代償たる孤独は随分味わっているつもりなのに、何の自由も得られぬまま、眠れずに夜を重ねている。


1月31日

『大激闘 マッドポリス'80“10 秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#02「No.1 抹殺計画」(脚本:柏原寛司、監督:関本郁夫)に、引越し 準備を放り出して見入ってしまう。

ジャパンマフィアのヘロイン密輸部門の"No.1"を追うマッドポリスの活躍が主 プロットだが、隠密捜査などはさておいた銃撃戦が甚だ痛快。特に中盤、狭い ホテルの中で手りゅう弾まで駆使して実施される大量殺戮は圧巻である。ヘロ イン密輸組織は菅貫太郎、鹿内孝、山本昌平と濃い面々でお腹満腹。菅貫さん の処刑される際の狼狽ぶりが私は好きです。また、河原崎三兄弟では一番印象 が薄いと感じていた河原崎次郎が思いの他、好演。ラストのキメゼリフは柏原 脚本ならではの洒脱さ。これと、泥臭い関本演出の融合というか剥離というか が、何か妙なグルーヴをかもし出している。それにしてもこの頃恒彦は35歳く らいのはずだが、潜入捜査時のチンピラ風ファッションと言動の似合うこと似 合うこと。さすが、テレビの世界ではさておき、東映映画の世界では50近くま で、ドスもって特攻をかけていた男・恒彦。そのトンパチな魅力に惚れ惚れす るばかり。これなら池玲子も、“ウチはもう猛のモノなんよ!”と叫ぶはず。 分からない人は『仁義なき戦い 代理戦争』を見よう!


2月1日

とりあえず、書籍と音源のダンボール詰めを終了させたところで、『大都会― 闘いの日々―』#23「山谷ブルース」(脚本:倉本聰、監督:澤田幸弘)を観 る。

冒頭、岡林信康の「山谷ブルース」を口ずさみつつ労務者・山谷初男が現れた ところで、もう私のハートはメロメロである。山谷で死んだ元・ヤクザ。その 葬儀を挙げようとする兄貴分・志賀勝。親分連中はその葬式での香典稼ぎを画 策し、交流のある黒岩刑事からも疑いの目を向けられる志賀。だが、彼は本心 ではその金を死んだヤクザの情婦・杉本美樹に、その母親に渡したかった―― 。

濡れた荒野を走れ大奥浮世風呂』に先駆ける志賀勝・第一回主演作品である。ピラニア軍団に 大いに肩入れしていた倉本ならではの描写が冴えまくる。眉毛はスパっとそり 落とし、もの凄く体調の悪そうなメイクでギンギンにアウトサイダーの空気を 発しつつも、男気溢れる志賀の態度に感涙しまくり。0課の女=杉本美樹が蓮っ 葉に歌う「山谷ブルース」も渋いゾ。『濡れた荒野を走れ』の澤田幸弘の演出 は思いのほかリリカルに切なさを盛り上げつつも、クライマックスの志賀対ウ ルトラマン=黒部進の、シルバー仮面対キマイラ星人よろしく、卒塔婆をブン 回して墓場で繰り広げられる乱闘で暴力派の実力を見せつける。ズタボロにな りつつ、杉本に香典を届けようとする志賀の姿を捉えた長回しに、何のイヤミ も感じさせないのは生命の燃焼を常に見つめる澤田演出の視点の確かさである 。

と、いうわけで志賀勝ファンは必見の一本です。に、してもあのメイクとファ ッションじゃ、黒岩君が志賀に「家には来るな」と言い放つのも責められませ んな。


2月7日

休日は朝9時から夜7時まで、仕事に出かけた日は夜の2時間、延々と続く荷物の 運び出し。すぐ近所の引越しだからと、自力でやると決めてはみたが辛いこと 。しかし、何はともあれ新居へのアンテナの設置&調整も無事に完了し、“10 秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポ リス'80』#03「狙撃者を撃て」(脚本:峯尾基三、監督:長谷部安春)を観る 。

マッドポリスが護送を命じられたジャパンマフィアからの転向者を狙うブラッ ク・スナイパー。演じるのはなんと、もっともヤバい目つきの時代のジョニー 大倉である。ジョニーの画策する毒ガス攻撃や、狙撃合戦など見所多数の一本 だったが、やはりジョニーのヤバすぎる存在感が全編を引っ張る。声が常時裏 返ってるあたり、薬物でもやってるようで実に恐ろしい。見事な演技だ。ボイ ス・トレーニング不足なんて野暮なこと言っちゃいけない。しかし、せっかく 極真カラテの有段者・ジョニーを呼んだんだから、格闘戦の見せ場も用意して も良かったんじゃないかなあ、ジョニーが怪鳥音出して暴れまくる『総長の首 』みたいに。でも、それじゃ千葉真一のハチャメチャ・ドラマになってしまう か。『ザ・ゴリラ7』みたいな。そんなこと、クールが信条の長谷部監督はやら んしょうな。とまれ、闘えマッドポリス!来週も、撃て!殺せ!ブチ壊せ!

なお、今後の放送予定はこちら


2月8日

家具類などの運びこみが何とか完了。台所の整理など、人間に必要なことはま ずは後回しにレコード棚の整理、ステレオ、DVDレコーダーの調整などを敢 行。同居する親の冷たい視線もなんのその、『大都会―闘いの日々―』#24「 急行十和田2号」(脚本:金子成人、監督:澤田幸弘)を観る。

純朴な家出娘に取り入り、騙して風俗に売り飛ばすスケコマシ稼業で糊口をし のぐ川谷拓三(!)。彼が新たに引っ掛けたのは青森発・急行十和田2号で上京 してきた坂口良子。拓ボンは伊香保温泉に坂口を連れて行くが、何の疑いもな く自分を信じきる坂口の姿に、つい真実をぶちまけてしまう。そして逃走を図 る二人だが、拓ボンの前に、渋い声と端整な顔。それと裏腹のモノすごーくガ ラの悪いしゃべり方が売りの無情な親分・郷鍈治が立ち塞がる――。

これまたピラニア軍団・拓ボンの『河内のオッサンの唄』『ダボシャツの天』 などに先駆ける主演作品。泣ける話である。倉本の弟子、金子の脚本はモノロ ーグに硬い部分があるけど、些細な日常生活の書き込み&そこからかもし出さ せる繊細な心情描写などやはり、唸らされる。ある大物役者二人の仲たがいの 遠因ともっぱらの噂の当時の坂口の美貌は、まあ、グッとくるけど、さておき 、拓ボンの魅力が炸裂しまくる。当然のごとく、あの小動物がイジメ殺されて しまうような、あの拓ボンにしかできないであろう憐れみを感じさせる死に方 も堪能できることを書き添えておいてもネタばれとはなるまい。拓ボン主演だ し。そんなこんなで、散々に悲しくなったところで、郷鍈治は裁かれぬまま、 テーマ曲が盛り上がって警視庁~新宿の空撮となりエンド・ロール。

なお、今後の放送予定はこちら


全31話の『大都会』もボチボチ佳境。続々と遅い来る不幸から目が離せませぬ。

2008/02/11/21:09 | トラックバック (0)
佐藤洋笑 ,脳内i-pod
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