クララ・シューマン
愛の協奏曲
7月25日(土)より、
Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!
ドイツ・ロマン主義華やかなりし19世紀ヨーロッパの音楽界に咲いた一輪の名花、クララ・シューマン。世紀を代表する2大作曲家、ロベルト・シューマンとヨハネス・ブラームスのミューズとして知られるクララは、彼女自身も作曲家、そしてプロのピアノ演奏家として広く活躍する才気あふれる美貌の音楽家だった。
『クララ・シューマン 愛の協奏曲』は、2人の作曲家との波乱に満ちた愛の日々を生きたクララのキャリアと家庭との相克を、ロベルト・シューマンの「ピアノ協奏曲イ短調」や「交響曲第3番 ライン」、ブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」など、おなじみの名曲をふんだんに散りばめて格調高く描いた真実の物語である。精密な時代考証のもとに再現された豪華セットと衣裳も、観る者の眼を大いに楽しませるに違いない。
19世紀半ば、「子供の情景」「幻想曲」など後世に残る数々の名曲を輩出した天才作曲家ロベルト・シューマンの妻クララは、ピアニストとしてヨーロッパツアーを回りながら、妻として、7人の子供の母として、多忙な日々を送っていた。そんなとき、彼女の前に若き新進作曲家ヨハネス・ブラームスが現われる。クララに永遠の敬愛と賛美を捧げる陽気なヨハネスは、日常生活の苦労が絶えない彼女にとって太陽のような存在となる。同時に体調不良に悩めるロベルトにとっては、唯一の芸術的理解者となり、自身の後継者として彼を世に送り出そうとするが――。
これまでクララ・シューマンの生涯は映画、テレビなど、さまざまなかたちで劇化されてきた。中でも映画では、キャサリン・ヘプバーンが『愛の調べ』(1949)、ナスターシャ・キンスキーが『哀愁のトロイメライ』(1985)でと、実力と人気を兼ね備えた大女優が演じてきた。本作でこの難役に挑むのは、『マーサの幸せレシピ』でドイツ映画賞主演女優賞など国内外の映画賞を総なめにし、アカデミー賞外国語映画賞受賞作『善き人のためのソナタ』での美貌の舞台女優クリスタ役で国際的に脚光を浴びたマルティナ・ゲデック。かつては芸術家同士の尊敬で結ばれた夫ロベルトとの絆はもはや儚く、若き崇拝者ヨハネスからの情熱的な賛美に心揺さぶられながらも、彼とは夫の死後も互いに人生の支えであり続けた。ゲデックは、運命的な愛の出逢いと別れを生きたヒロインを、まろやかな大人の円熟と馥郁たる美しさで官能的に演じ、女優として新境地を拓いたと絶賛された。
一方、男性陣にはフランス映画界の新旧の実力派が顔を合わせ、クララをめぐる息詰まる愛の三角関係をスリリングに銀幕に息づかせる。まず、ロベルト・シューマンには、『王妃マルゴ』『愛する者よ、列車に乗れ』など鬼才パトリス・シェローの諸作品で知られる名優パスカル・グレゴリーが、『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で演じたピアフのマネージャー、ルイ・バリエに続いて実在した人物像に挑戦。ヨハネスと緊密な関係を深めるクララに嫉妬する反面、最大の理解者のヨハネスを妻に奪われる焦燥を、澄み切った瞳に天才の狂気を宿して熱演する。対する、ヨハネス・ブラームスには、フランソワ・オゾンの『焼け石に水』で女性のみならず男性をも魅了した美青年マリック・ジディ。逆立ちを得意とする奔放な軽やかさを振りまきつつ、「一日中ずっと、昼も夜も、あなたを想います」とクララへ捧げる愛をひたむきに演じ、その初々しいまでに一途な情熱は、クララのみならず女性ファンの心をも虜にするのは間違いない。
監督は、『ドイツ・青ざめた母』『林檎の木』など、80年代以降のニュー・ジャーマン・シネマを代表する名匠ヘルマ・サンダース=ブラームス。彼女はその名からも判るとおり、ヨハネスの叔父から連なる正統なブラームス家の末裔に当たり、これまでタブーとされていたクララとヨハネスとの関係にも肉親ならではの畏れを知らぬ大胆さで深く切り込み、本国ドイツで大きな反響を巻き起こした。また、「芸術家であり、女性であるクララに個人的にも繋がりを感じる」と語るように、女性の社会進出が困難だった時代、自らの才能を発揮するため闘うと同時に、家庭をも守るクララの相克は、現代に通じる女性の葛藤として、観る者に大きな共感を誘うはずだ。とりわけ劇中、楽団員から「女性では空気が乱れる」などと嘲笑されながらも、いざタクトを振るうや否や、指揮者として見事な才気を示すクララの晴れ姿は、彼女に共感したサンダース=ブラームスらしい目配せといえるだろう。
果たして、最愛の夫の死という癒しがたい喪失から再生したクララが見い出した幸福とは?そして、ヨハネスが生涯を通して貫いたクララへの殉愛のゆくえは?この3人の究極の愛のかたちには、今なお私たちの胸を深く揺さぶる感動と衝撃がある。
7月25日(土)より、
Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!
その夜、満場の聴衆が詰めかけたハンブルクのコンサートホールで、ピアノを演奏するクララ・シューマン(マルティナ・ゲデック)を、固唾を呑んで見守るふたりの男がいた。1人は名作曲家として知られる夫、ロベルト・シューマン(パスカル・グレゴリー)。そしてもう1人は、当時はまだ無名の若き作曲家、ヨハネス・ブラームス(マリック・ジディ)。
演奏を終え、拍手喝采を浴びるクララに紹介されて壇上に引っ張り出されたロベルトは、しかし「人気取りは嫌だ」と憮然と舞台から降りる。そして、押し掛ける観客たちにもみくちゃにされるシューマン夫妻は、背後から見知らぬ男に呼び止められた。それがヨハネスだった。作曲家だという20歳の彼との運命の出逢いを感じたクララは、ロベルトの制止を振り切るように、アメリカへの移民がたむろする波止場の薄暗い居酒屋に足を運ぶ。そこでピアノを演奏するヨハネスの才能を瞬時にして見抜いたクララは、豪奢なコンサートドレスに縫い付けられた真珠を切り取る貧民など気に留まらぬほど、彼の演奏に聴き惚れた。
翌日、デュッセルドルフに到着したシューマン一家を待っていたのは、ロベルトの地元交響楽団の音楽監督就任と、これまで暮らしたことのないような大邸宅だった。家政婦と料理人にかしずかれた新生活は、クララには家事の多忙さから解放され、未来の幸福を約束しているように見えた。しかし、新しいピアノを前に、「作曲を再開したい」と顔を輝かせるクララにロベルトは、「私の妻では不満か?」と問いただすのだった。
その頃から、ロベルトの持病である頭痛が悪化の一途を辿り始める。指揮はおろか、交響曲「ライン」の作曲さえままならない夫の一大事を救わんと、クララは指揮者として楽団員の前に立つ。「女性の指揮など前代未聞」「世の笑い者だ」との嘲笑にも耳を貸さずタクトを振り続けるクララは、コンサートマスター、タウシュの意に反して、たちまちオーケストラから見事な演奏を引き出した。
そんなある日、シューマン邸を思いがけない来客が訪れた。ヨハネス・ブラームスだ。軽々と逆立ちを披露し、たちまち夫妻の子供たちの人気者になるヨハネス。こうして、シューマン一家とヨハネスとの奇妙な同居生活は始まった。
常日頃からクララへの敬愛を隠すことのない陽気なヨハネスは、日常生活の苦労の絶えない彼女の心を明るく輝かせると同時に、楽団に馴染めないロベルトの最大の芸術上の理解者となる。こうして、ロベルトが苦心の末に完成させた「ライン」第2楽章は、それを弾くヨハネスのピアノ演奏を聴いた料理人さえも涙させる見事な出来栄えだった。クララは夫をこう称賛する。「私たちが幸せだった頃を思い出すわ」。しかし、クララの願いを裏切るように、割れるような頭痛に襲われ深酒に溺れるロベルトは、やがて鎮痛剤のアヘンチンキ( 医師の処方箋に基づき使われる鎮静剤で、アヘンを含有する水薬 )が手放せない状態にまで陥ってしまう。
ヨハネスが妻に寄せる愛情を察知し、クララに嫉妬をぶちまけながらも、同時に「唯一の理解者を私から奪うな」と相反する感情に苦悩するロベルト。そして、妊娠を告げるクララに「私の子か?」と暴言を吐き、酔いに任せて彼女を殴り倒してしまう。そんな修羅場に直面しながらも、ロベルトとクララの絆はかろうじて持ちこたえ、ふたりの共同指揮による交響曲「ライン」の初演は大成功を収めるのだった。
「聴衆は夢中になった」「不朽の名作」――そんな栄光の中で、ロベルトは、ヨハネスを自身の後継者として音楽界に紹介する。そしてクララには、彼らの秘めた思いを見透かすように、こう告げるのだった。「私がいなくなってもヨハネスがいる。彼はきみがすべてで、崇拝している」
しかし、この緊迫に満ちた三角関係に耐えられなくなったヨハネスは、ついにシューマン家から立ち去る決意をするが――。
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 インタビュー
――クララ・シューマンという素材を選んだ理由はなんでしょう?ご自身の血筋がきっかけですか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 ええ確かにヨハネス・ブラームスとは血縁にあたりますが、私はクララともつながりを感じています。というのも、彼女もアーティストであると同時に女性であり、自分の芸術的才能を発揮するために闘いながら、一方で結婚していて夫や子供たちを大事にしていたからです。100年以上も前の出来事ではありますが、現代の多くの女性も経験している葛藤を描いています。そして何より美しい音楽の世界で活躍する女性であることに興味がありました。
――ブラームス家の末裔とのことですが、ヨハネス・ブラームス本人は監督の何にあたるのでしょうか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 ヨハネスの叔父の子孫にあたります。ヨハネス自身は子供がいませんでしたし、彼の兄弟にも男の子がいなかったのです。
――ヨハネスに関して伝え聞いた事実などはありますか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 個性が強く、孤立した生活を送っていると思われていたようです。他人に心を開き、親切なのですが、閉じこもって一人になりたいとも感じていたと聞いています。それは子孫に伝わった行動でもあるようで、私自身もそういった家族の行動に慣れています。また映画の中に登場するしぐさで言うと、逆立ちなどのアクロバティックなことがとても得意だったとも聞いています。ヨハネスの行動についてはロベルト・シューマンの子供たちも書き残しています。
――キャスティングについて教えてください。マルティナを選んだ理由はなんでしょうか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 彼女はクララと同じように複雑な面を持った女優です。美しく、才能があり、撮影の時にはとても集中している。一方で生き生きとした女優で、官能的でセクシーでもある。非常に存在感があり、魅力的な人なので彼女を選びました。クララもステージの上ではとても存在感があったという記録が残っています。
――パスカル・グレゴリーについてはどうですか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 ロベルトの性格は時にクララよりも女性的と言いますか、とても脆くかよわかったので、そういった部分を表現できる俳優を探していました。パスカル・グレゴリーについては彼の舞台での活躍を通じてよく知っていました。もちろん彼の映画のキャリアも。彼を選んだのは、特にマルティナとのバランスの上でよいキャスティングになるかもしれないと思ったからです。彼女はある意味マッチョというか男性的で、彼はフェミニンな男性を表現できる俳優です。
――女性監督として数々の女性を描き、その心情を繊細に表現してこられましたが、この作品ではクララをどのように描きたかったのでしょう?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 “偉大な名声を得た音楽家として”でないことは確かです。彼女は他の音楽家と比べてもより生き生きとした人間的なアーティストでしたが、同時に少女のような部分も持ち合わせていました。クララはヨハネスより14歳年長でした。当時女性が男性よりも14歳年上というのはとても大きく、出会った時、ヨハネスが20歳で、彼女は34歳でした。今ではまだ若いといえる年齢ですが、当時としては年老いたと言ってもいい年齢です。ですから私は彼女の美しさを見せたかった。映画の最後の方でヨハネスの曲を演奏するクララは、映画の冒頭よりも美しいのです。なぜなら数々の葛藤や闘い、そして夫の死を経験して、新たな境地に達し、新しいスタイルを築き上げたから。マルティナはそうした一人の女性がたどってきた人生の様々なステージを表現することができる素晴らしい女優でした。
――クララは出産・育児に追われて思うように音楽活動が出来なかったが、監督の思う「女性の幸せ」とは何でしょう。
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 もちろん幸せというのはひとつではありません。夫と一緒のときに幸せと感じることもあれば、舞台上で幸福な瞬間を得ることもあれば、一人でいるときに幸せをかみしめることもあるでしょう。朝から晩までずっと幸せということはないのではないかと私は思います。幸福というものはいつも短くやってくるものなのです。クララはステージの上で一番の幸せを感じていたのだと思います。
――監督個人の場合はどうですか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 いろいろな種類の幸せがあります。ひとつの幸せがもうひとつより大きいということはありますが。芸術家としては、やはり認められることが幸せだと思います。幸せはひとつではありません。もちろん良き伴侶と出会うことも幸せです。子供の母親となることも幸せですし、クララの場合だとヨハネスから崇拝されることも幸せであったはずです。
――ロベルトの死後、ヨハネスを受け入れず、二人への思いを胸にクララは一人で生きていきますが……。
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 彼らの置かれた状況は単純ではありませんでした。彼女はもちろんヨハネスにとても惹かれていましたし、ヨハネスも彼女を愛していましたが、クララは一人で生きることを決心したのです。彼女は再び誰かの妻になろうとは考えませんでした。
――クララにとってロベルトが、そしてヨハネスがどんな存在だったと監督は解釈していますか?
ヘルマ・サンダース=ブラームス監督 クララはヨハネスについて語るときは、いつも“私の一番上の息子”と呼んでいました。実際自分を彼の母親的存在だと感じていましたが、彼女がヨハネスに抱いていた感情はそれだけではありません。映画の最後の方で二人がベッドに横たわり、ヨハネスがクララに触れるシーンがありますが、彼女はその行為を嫌がってはいません。若い男性から崇拝されることを嫌っていた訳ではなく、むしろ嬉しく思っていたはずです。
ロベルトはクララの人生の伴侶でした。彼女はロベルトに献身的に尽くしました。だから彼がいなくなったことによって、喪失感でどうしたらよいのかわからなくなったと思います。同時に彼女は再生の道を歩み始めます。彼女にとって自分自身であることもとても大事だったのだと思いますね。
マルティナ・ゲデック インタビュー
――撮影はいかがでしたか?
マルティナ・ゲデック 撮影が終わり、とても満足感でいっぱいですし、豊かな気分になっています。それと同時に、終わってしまい少し悲しい気分でもあります。ヘルマ・サンダース=ブラームス監督と一緒に19世紀の世界に浸れて楽しかったです。19世紀の世界というのは、想像するしかない世界ですから。ハインリッヒ・ハイネの詩や、ブラームスの童謡、シューマンの音楽。これらはどれも、どこかで一度は耳にしたり読んだりしたことがあるものです。私たちはこれらを聞いて成長したわけですから。こうした世界が突然、実際に触ったりつかんだりできるリアルなものになりました。当時の世界は謎めいていて、遠い昔のことであり、現代とは全く違うのです。そういったところを守りつつ、現代の私たちにも理解できるように演じるのは難しい挑戦でした。あの物語は、今日起きても不思議ではないものなのです。
――クララは母として、妻として、ビジネスウーマンとして、そしてピアノ演奏の大家として果たすべき役割のはざまで苦しみました。これが今日にも共通するということですか?
マルティナ・ゲデック これは今もよくある問題です。この葛藤が150年前もあったということは、おそらく将来もあるということでしょうね。
――どれが一番大切だったのでしょう?母クララか、偉大な演奏家クララか、芸術家の家庭の厳しい家計を預かるマネージャーだったクララか、2人の天才に挟まれ、結局最後は独りで生きることを選んだ愛される女性クララか。
マルティナ・ゲデック クララはそれら全てを持った女性です。彼女は冷たい女性だったのか、愛情深い女性だったのか。偉大な芸術家だったのか、それとも計算高いビジネスウーマンだったのか…。彼女はおそらく、厳しく判断を下す女性だっただろうし、プラグマティズム(実用主義)的な人物だったと思います。特に中年以降のクララがそうです。夫が亡くなったあと、家族を養わなければならなかったのですから。
――自分でピアノが弾けない場合、偉大なピアニストを演じるのにどうなさいましたか?
マルティナ・ゲデック それは実際、キーとなる重要な問題でした。どうやったらクララというキャラクターの内面に迫れるのだろうか。どうすれば彼女になりきれるのだろうか。この問いの答えは、彼女が見事に操ったあの楽器を弾くことです。だからピアノを習わずにはいられませんでした。少なくとも「マルティナ・ゲデックは本当にピアノを弾ける」と思ってもらえる程度には弾けるようになる必要がありました。彼女がやっていたのは、体を使って楽譜を音楽に換える行為なのです。すなわち、シューマンの偉大なる魂が生み出したものに、クララは命を吹き込んだんです。シューマンが破滅や死への願望、狂気などに象徴されるキャラクターを有していたのに対し、クララは人生を肯定する人物であり、人生を音楽で満たそうとする人物でした。また、本作でも見事に描かれていますが、シューマンが自殺を試みたことが明らかになると、クララは彼から離れていきますよね。彼女の理解を超えた行動だったからです。彼女は彼に寄り添うことをやめました。
――ピアノがある程度弾けるようになるまで、どれだけかかりましたか?
マルティナ・ゲデック この役をもらった時点でピアノの練習を始めました。クランクインの4週間前のことです。その時、私はまだ別の作品にかかわっていました。楽屋にはキーボードを、家にはピアノを置き、寸暇を惜しんで練習しました。本作のクランクインの頃には、小さなアンプロンプチュ(即興曲)は弾けるようになっていました。それ以上は無理でしたけど。
――最初はイザベル・ユペールがクララ役を演じる予定でした。彼女の代役だと聞いたとき、屈辱に感じましたか?
マルティナ・ゲデック いいえ。ヘルマは10年前からこの映画を撮ろうと考え、イザベル・ユペールと協力してきたんです。私だってほかの人と協力してやっているわけですから同じですよ。ごく普通のことです。ただ、ヘルマが私に落胆しないといいけれど、とは時々考えました。イザベル・ユペールを想定して構想を練り、10年間彼女と話し合ってきたのに、突然全く別の人がやることになってしまったわけですから。
――なぜ、それでもこの映画に参加したんですか?
マルティナ・ゲデック 第一の理由は監督です。私にとって大切なのは、誰が監督をするかということなんです。ヘルマの作品は刺激的だといつも思っていました。彼女の作品はいつでも特別なんです。監督自身に対して興味がありました。
――第二は?
マルティナ・ゲデック こういった役のオファーはなかなかありません。しかも脚本がよかった。共演者にも興味を持ちました。こういった役を前から演じてみたいと思っていたんです。俗っぽく聞こえるかもしれませんが、19世紀の人物を演じた経験がなかったものですから。
●キャスト
クララ・シューマン:マルティナ・ゲデック ロベルト・シューマン:パスカル・グレゴリー
ヨハネス・ブラームス:マリック・ジディ 娘マリー:クララ・アイヒンガー 娘エリーゼ:アリーネ・アネシー
娘オイゲニー:マリーネ・アネシー 息子ルートヴィヒ:サーシャ・カパロス ヴァジレフスキー:ペーター・タカツィ
タウシュ:ベラ・フェストバウム ベルタ:ブリギッテ・アネシー ヘンリエッテ:クリスティーネ・エスターライン
●スタッフ
脚本・監督:ヘルマ・サンダース=ブラームス 撮影:ユルゲン・ユルゲス(BVK)
プロダクションデザイン:ウーヴェ・スツィラスコ アートディレクター:イシュトヴァーン・ガランボス
衣装:リッカルダ・メルテン=アイヒャー 音声:ヤーノシュ・チャーキ(H.A.E.S.) 編集:イザベル・デヴィンク
プロデューサー:アルフレート・ヒュルマー
共同プロデューサー:ヘルマ・サンダース=ブラームス,マルティーヌ・ド・クレルモン・トネール,
ヤーノシュ・ロージャ,フランツ・クラウス,アントニオ・エクサクストス
音楽:ロベルト・シューマン、クララ・シューマン、ヨハネス・ブラームス
演奏:ダヌビア交響楽団 指揮:イシュトヴァーン・デネシュ
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム(ロゴ)
原題:Geliebte Clara/ドイツ・フランス・ハンガリー合作/2008年/
ドルビーSRD/ビスタサイズ/109分/字幕翻訳:吉川美奈子
http://www.clara-movie.com/
7月25日(土)より、
Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!
主なキャスト / スタッフ
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