杉野希妃――二階堂さんは参考にと言われた映画や本はありましたか？

二階堂　ロメールは見ていたので。

深田　そういう話は早かったです！

二階堂　『あ、はい』って。

――他はなし？

深田　確か他はロメールの話は意識していますというのは言ってたので他にこれを見てくれというのはなかったですね。スタッフにはカメラワークとかこのシーンをこういうイメージでというのはあったんですけど、それはあくまで撮る側の意識で、役者さんはまず二階堂さん本人の個性や良さを最大限に出して欲しいから。『この映画のこの女優さんのこういうイメージ』というのは余計なノイズになってしまうのでそんなに言ってないと思います。

杉野　わたしは参考の本として深田さんが好きな作家の富岡多恵子さんの「波うつ土地」を薦められました。

深田　杉野さんの演じた辰子に関してはピンポイントで辰子というキャラクターを富岡多恵子さんのイメージに寄せて書いていたので読んでおいてという感じで読んでもらいました。

杉野　そうですね、雑音になるので参考程度に読んでほしいと深田さんに言われていたので、『富岡さんいいなあ』と思いながら読みました。

深田　僕が単に富岡さんの小説が大好きで単純に好きなものを勧めました。

杉野　そう、好きなものを共有した感じですね。

――それを指摘した人はいないんですか？

深田＆杉野　(同時に)全然分からないと思う。

――作品の中に消化されて溶け込んでるんですね。いいことだと思います。

深田　多分分からない方がいいかも。映画でなく文学作品だから渡したというのもありました。事前にある俳優のイメージをモノマネするみたいな感じにならないだろうけど、そうなったら困るなあと。

――ここにはいませんが、太賀さんがとても素晴らしかったです。

二階堂　今日この後会うんですよ。八犬伝(2013年3月〜4月に上演された舞台)の新年会で。

深田　いいなあ。

杉野　わたしも会いたかった。

二階堂　しょっちゅうあってるんで太賀くんとはもうベストフレンドです。『ほとりの朔子』の前に『八犬伝』で一緒にやるって決まってたんですよ。でも『ほとりの朔子』で一緒にやることになって『ほとりの朔子』が最初になったんですよ。その後にこの後公開する『私の男』があってその後に『八犬伝』があって。

杉野　でもこれが一番最初だったんだということをわたしは主張したい。プロデューサーとして(笑)。

深田　これは真面目に『私の男』の公開があると聞いた時に『ほとりの朔子』を『私の男』よりも先に公開しないと！というのはありましたね。

杉野　太賀くんは五年くらい前から本当に大好きな役者さんなんです。事務所が同じだった時に今度一緒に仕事しようって言ったんだけど、本人は覚えていなくて(笑)。好きな役者さんを組み合わせるのが楽しいですね。そうやって化学反応が起きるのは。

深田　作り手の醍醐味ですね。