仲村トオル × 杉野希妃 × 斎藤工 × 中村ゆり
愛のまなざしを
2021年11月5日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、
キネカ大森、イオンシネマ他にて全国順次公開!
鬼才・万田邦敏監督『 UNloved』『接吻』に続く愛の三部作最終章。
愛するほどに、それは奪われていく――
妻を亡くしたことで、もう二度と誰も愛せないと思いつめ、生と死のあわいを彷徨うように生きる精神科医の前に現れたのは、彼を救済するかのような微笑みをたたえた女だった。堰を切ったかのように女に溺れていく男、愛を求め続けても誰からも返されることなく孤独の果てを彷徨ってきた女。二人はそれぞれの日常を捨て、激しく求めあう。しかし、女には別の顔が存在した……。男が信じた愛は、そこに確実に存在したのか。そしてそれは「愛」そのものであったのか――。
これまでも強烈な自我を持つ女性を軸に、狂気ともいえる愛を描いてきた鬼才・万田邦敏監督が、カンヌ国際映画祭にて W 受賞した『 UNloved』、比類なき傑作『接吻』に続き、共同脚本・万田珠実と三度目のタッグを組んだ愛の三部作最終章。「愛」の本質を見つめ、人間の性とエゴをあぶりだした愛憎サスペンスが誕生した。
憎しみは愛を征服する――
亡くなった妻に囚われ、夜ごと精神安定剤を服用する精神科医・貴志(仲村トオル)のもとに現れたのは、モラハラの恋人に連れられ患者としてやってきた綾子(杉野希妃)。恋人との関係に疲弊し、肉親の愛に飢えていた彼女は、貴志の寄り添った診察に救われたことで、彼に愛を求め始める。いっぽう妻(中村ゆり)の死に罪悪感をいだき、心を閉ざしてきた貴志は、綾子の救済者となることで、自らも救われ、その愛に溺れていく……。しかし、二人のはぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれ始め、貴志の息子・祐樹(藤原大祐)や義父母との関係、そしてクリニックの診察にまで影響が及んでいく。そんな頃、義弟・茂(斎藤工)から綾子の過去について知らされ、さらに妻の秘密までも知ることとなり、貴志は激しく動揺するのだった。自身の人生がぶれぬよう、こらえてきた貴志のなかで大きく何かが崩れていく。失った愛をもう一度求めただけなのに、その渦の中には大きな魔物が存在し、やがて貴志の人生を乗っ取り始める。かたや綾子は、亡き妻にいまだ囚われる貴志にいらだち、二人の過去に激しい嫉妬をいだく。彼女は貴志と妻の愛を越え、極限の愛にたどりつくために、ある決断を下すのだった――。
精神科医・貴志を演じたのは、万田監督作品『 UNloved』『接吻』でキーパーソンを好演した仲村トオル。貴志からの愛を渇望する綾子役は、監督、プロデューサーとしても精力的に活動する杉野希妃が演じ、女の業を表現した。死んだ姉に焦がれ、綾子の登場により翻弄されるも真実をつかもうとする内山茂役には、監督、プロデュースなど肩書を超えて活躍する斎藤工。映画やドラマ、舞台でしなやかな演技力が光る中村ゆりが、六年前に亡くなった貴志の妻を演じる。貴志の息子・祐樹役として十代の繊細な心の揺れ動きを表現した藤原大祐は、オーディションで役を掴み 、本作で映画デビューを飾っている。その他、片桐はいり、ベンガル、森口瑤子など、ベテランが脇を固める。また音楽を長嶌寛幸が担当、愛の不確かさを見事表現した。
愛なのか、憎しみなのか、もはやその区別さえ失ってしまった境界線に生きる男女の物語は、多くの映画作家により綴られてきた。その線上に位置づけられることになるであろう『愛のまなざしを』は、女の愛の強靭さを見抜き、その覚悟を見せつける、強烈な愛の物語となった。
万田邦敏監督
本作のラストをどうするか、じつは撮影中に二転三転した。決定稿では、主人公の男女は最後まで闇の中に宙づりにされたままだった。ところが、撮影中にそれではこの二人がなんだか可哀想に思えてきた。救いがなさ過ぎると思った。男も女も本気で愛し合ったのだし、本気で憎み合ったのだ。その本気を最後に突き放したままでいいのだろうか。そう思わせたのは、役を演じる目の前の仲村さんと杉野さんの身体が、意識せぬまま、己が演じる男と女の救済に向けて動き、発話し、沈黙していたからなのだと思う。初めは、二人自身も私もそのことに気付かなかった。二人の結末に最初に違和感を感じたのは、ずうっと撮影を見続けていた脚本を書いた珠実そのひとだった。愛する者が苦しんでいるのなら、その苦しみを分かち合いたい、苦しみから救ってあげたい。珠実は、仲村さんと杉野さんの芝居する身体が発するサインを目ざとく読み取ったのだ。撮影の合間を縫って二人に相談してみると、「そういうことだったのか」と二人も納得。だったらあれは、これはといろいろとアイデアは出てくるし、二人の身体にもそれまで以上に開放感、伸びやかさ、自由さが増した。こうして、映画の最後(それは撮影終了日でもあった)に杉野さん演じる綾子は満面の笑みを見せることになった。決定稿とは真逆の結末に、私たちはみな満足してクランクアップしたのである。
貴志役:仲村トオル
「答えは其処にしかないのです」と説得され切った『UNLOVED』。
「答えはひとつではないのです」と自由さに戸惑った『接吻』。
『愛のまなざしを』の撮影現場は過去の自分が出演した万田邦敏監督の作品と比べると「答えなど最初からないのです」と言われ、「迷宮を駆け抜けたような」日々でした。
過去の万田組の現場の雰囲気と共通していたのは涼しさより少し冷たさに近いような、ひんやりとした緊張感、でしょうか。ただそれも、過去の現場にあった張りつめていたものが、時に歪んだり捻じれたりするような新鮮な瞬間が何度もありました。
水野綾子役:杉野希妃
『愛のまなざしを』は、実体のないものに囚われ、愛を渇望する人たちの話です。不器用な生き方しかできない綾子という人物を演じながら、彼女を激しく嫌悪し、同情し、共感しました。
万田監督のきめ細やかな演出に従うにつれ、綾子は飢えた獣なのだと実感し、理性を剥ぎとるよう努めました。彼女の弱さと強さは私自身のものでもあり、そのことがまるで鏡のように反射して撮影を終えてもなお自分を苦しめました。愚かな女だと言ってしまうのは簡単だけれど、愚かさこそが人間の本質かもしれません。コロナ禍の今、彼女の切実さをやっと愛せるような気がしています。愛のまなざしをぜひ劇場で感じてください。
万田祐介,松林うらら,ベンガル,森口瑤子,片桐はいり
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実,万田邦敏
プロデューサー:杉野希妃,飯田雅裕
エグゼクティブプロデューサー:市橋浩治,五老剛,小野光輔,佐藤央,有馬一昭,長嶋貴之
コエグゼクティブプロデューサー:阿部毅,小金澤剛康 コプロデューサー:阿部正彦
アソシエイトプロデューサー:小川貴弘,江守徹,高藤丈也,富澤豊
企画:和エンタテインメント 配給:イオンエンターテイメント,朝日新聞社,和エンタテインメント
製作:「愛のまなざしを」製作委員会
(朝日新聞社,ENBUゼミナール,和エンタテインメント,
イーストブロー,イオンエンターテイメント,はやぶさキャピタル)
2020年/日本/日本語/102分/英題:Love Mooning/HD/カラー/Vista/5.1ch/
© Love Mooning Film Partners
2021年11月5日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、
キネカ大森、イオンシネマ他にて全国順次公開!
- 監督:万田邦敏
- 出演:小池栄子, 豊川悦司, 仲村トオル, 篠田三郎
- 発売日:2009/2/25
- おすすめ度:
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