加藤義一監督インタビュー:『WE ARE THE PINK SCHOOL!』開催によせて
2月28日より開催される、前代未聞のピンク映画フェスティバル、「WE ARE THE PINK SCHOOL!」にあたって、『痴漢電車 びんかん指先案内人』で07年度ピンク大賞ベスト一位&監督賞を獲得し、現在乗りに乗っている加藤義一監督にお話をうかがった。

加藤 義一(カトウ ヨシカズ)
1972、京都府生まれ。93年、日活芸術学院卒業。95年、佐藤寿保監督『狩人たちの触覚』に助監督としてつく。以降ピンク映画を中心に100本近くの作品で助監督を務める。2001年、大蔵映画『牝監房 汚れた人妻』で監督デビュー(公開は2002年)。他に『暴行高速バス 欲望の雫』(04、ENGEL)、『妖艶くノ一伝~鍔女編~』(06、GPミュージアムソフト、以降同シリーズ3本監督)等。08年には2007年度ピンク大賞 監督賞、作品賞受賞(『痴漢電車 指先案内人』)。2008年6月時点でピンク映画を27本、OV作品を6本監督している。

――加藤監督は大変な映画マニアであり、中でもピンク映画への愛情はそこらのピンク映画ファンを凌駕するものがあるとお見受けします。ピンク映画のどのあたりにそこまで惹かれたのですか?また、いつからピンク映画を見るようになったのですか?

加藤 初めてピンク映画を観たのは高校入学してすぐです。仲良くなった友達の家がピンク映画館の近くに住んでいて、遊び心で友達何人かと観にいったのが初めてでした。東活の『変態SMギャル』(88、藤原康輔監督)と、もう一本観たのですが、タイトルが思い出せません。その時はエロを大画面で観た感動しか覚えてないですが、東活の作品を観ることができたのは幸せです。その後高校時代に、日本映画を観まくった時期があって、その時に日活ロマンポルノに出会い、すごく感銘を受けました。上京してから“現在創られているエロ映画を観よう”と思ったのが、ピンク映画を改めて観るきっかけになりました。当時(また現在でも)、コテコテのプログラム・ピクチャーが作られ続けている事の驚きと、当時「四天王」と呼ばれた監督たちの、それぞれを代表するかのような作品が同時に作られている事が面白かった。3本立ての3本、それぞれに違う魅力があり、その3本を同時に観ることができるところにも惹かれました。

――その頃特に強く惹かれたピンク映画の作品や監督、俳優はいますか。

加藤 その頃新作、旧作と沢山観ていて、その何百本もの映画の中から一本を選ぶのは難しいです。その頃観た映画一本一本が新しい発見だったので。好きな監督もキャストも沢山いたので、しぼることが出来ません。

――監督がピンク映画の世界へ飛び込んだきっかけはなんだったんでしょう。

加藤 業界に入ったきっかけは、学生時代の友達の紹介です。彼は福間(健二)組の助監督をやっていて、その繋がりで彼に来た仕事を彼が出来なかった。そこで代わりに僕が引き受けたことが、結果的に初めての現場となりました。

――最初につかれた現場の作品名と監督は?

加藤 佐藤寿保監督の『狩人たちの触覚』(95)です。

――ピンク映画の現場はどういう印象でしたか?

加藤 何も知らないまま現場に入ったので失敗ばかりしていました。周りの人には本当に迷惑をかけました。初めての現場を踏む助監督の中でも、僕以上に酷い助監督には会ったがことありません。それぐらい迷惑をかけました。その後、沢山の作品につくことができたのですが、好きだった監督やキャストと仕事ができ、毎回楽しんでました。

――加藤義一・竹洞哲也・城定秀夫という現在のピンク映画/OVを語る上で避けて通れない三人の監督は、助監督時代にはどのようなご関係だったのですか?

加藤 竹洞くんとは、彼の初めての現場で僕がチーフ助監督をしてました。歳も近かったし、二人ともバカだったので、アホなことばかりして遊んでました。城定くんとは、映画の話ばかりしてました。色々話してると、彼とは業界に入る前に劇場で会ってたみたいです。文芸坐のオールナイトや亀有名画座で。竹洞くんとも、浅草東宝のオールナイトや岡本喜八監督の特集でおなじ劇場にいたみたいです。それぞれライバル心はあったかもしれませんね。三人で一緒に仕事をすることはなかったですが、お互いに仕事をする時は楽しんでやってたと思います。

――助監督時代に強烈に覚えているエピソードはありますか?

加藤 ついたどの作品でも、演出、カット割、エロの撮り方、あらゆる事で一本一本が勉強になりました。今までついた監督、作品は僕にとって財産だと思ってます。ピンクの現場はどの作品も過酷です。時間のかかる現場は体力的に大変だし、時間が早い現場はペースについていくのが大変だし……。

――今回の特集上映で特にお勧めできる作品を何本か挙げて頂けますか?

加藤 全作観ている訳じゃないし、15年以上も前に観た映画がほとんどで、内容を忘れている作品も多いため、お勧め作品は絞ることができません。でもピンク創世記~80年代ニューウェイブのセクションの作品は劇場で観る機会が少ない作品も多く、僕自身、観たい作品が沢山含まれています。この機会を逃すと、次いつ観ることができるかわからないので、全作品必見だと思います。個人的には『ブルーフイルムの女』と『濡れ牡丹 五悪人暴行編』は観たいです。

――今回上映される作品は、膨大な量が製作されたピンク映画のうちのほんの一部分です。この上映をきっかけに、これからピンク映画をたくさん見ていこうというお客様のために、今回ラインナップから漏れた作品や、加藤監督が影響を受けたり、個人的に好きだったりする作品や監督を挙げて頂きますでしょうか?

加藤 ピンク創世記のセクションで小林悟監督や小川欽也監督の作品が入っていないのが不思議です。古い作品のためプリントがないのかも知れませんが、近年でも沢山作品を作っていますし、ピンクの歴史を語る上では、絶対に外せない監督たちだと思います。女性監督の代表でもある浜野佐知監督の作品がないこと、エクセスの作品が1本しか入っていないことも残念です。今回の特集でピンク映画を知った人は、封切り劇場で3本立てをぜひ観てもらえれば思います。期待していなかった同時上映作品の中に、お気に入りの一本を見つけることがあるかも知れません。そんな時って映画ファンにとってはとても幸せだと思うのですが。

――ピンク映画は年々製作本数が減少の一途をたどっています。この現状に対して加藤監督はどうお考えですか?また、どのように対処していこうとお考えですか?

加藤 製作本数が減っているのは残念です。僕が対処法なんて偉そうなことは言えないのですが、これ以上、上映館を減らしたくないので、ピンク映画に興味をもたれたら、専門館にも映画を観に行ってもらいたいです。僕も一生懸命に面白い映画を撮っていきますので、みなさんも劇場にピンク映画を観にいってください。

――ありがとうございました。

(2月24日~26日、メールにてインタビュー)
取材・構成/港岳彦

WE ARE THE PINK SCHOOL! 日本性愛映画史1965-2008
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公式

2月28日(土)より3月20日(金)まで、
シアターイメージフォーラムにて開催!

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