特集:「WE ARE THE PINK SCHOOL!日本性愛映画史1965-2008」
ピンク七福神
28 痴漢電車 感じるイボイボ(今岡信治)…………………………… 鈴木 由理子
29 OLの愛汁 ラブジュース (田尻裕司)……………………………… 港 岳彦
30 痴漢電車 さわってビックリ! (榎本敏郎)………………………… とくしん 九郎
31 白衣と人妻 したがる兄嫁(上野俊哉)…………………………… 島田 慎一
32 濃厚不倫 とられた女(女池充)…………………………………… 柴 晶子
33 18才 下着の中のうずき(坂本礼)………………………………… とくしん 九郎

ピンク創世記 | 70年代黄金期 |  80年代ニューウェーブ |  四天王と90年代 | 
ピンク七福神 |  大蔵ヌーヴェルバーグ/00年代ニューウェーヴ |  ウェイルメイド作家たち |  加藤義一監督インタビュー

2月28日(土)より3月20日(金)まで、
シアターイメージフォーラムにて開催!

3月14日(土)、15日(日)、17日(火)、20日(金)

痴漢電車 感じるイボイボ ( 1996年/国映/63分 )

監督:今岡信治 脚本:いまおかしんじ、星川隆宣 出演:川瀬陽太、水乃麻亜子、林由美香、佐野和宏

画の冒頭、電車で主人公の良夫は女の股間を遺骨で弄る。
唐突で不気味なシーンだったが、すぐに惹かれてしまった。
こんな形でしか生身の人間と関われない、不器用な男の狂気と哀しさがにじみ出ていたからだ。何せ消えた女を求めて街をさまよい、彼女と同じ赤いワンピースを着ているだけでみんな失くした恋人に見えてしまうような男である。
それは街で出会ったあどけない少女と眠り薬や爆弾遊びに耽る姿にも重なった。
ただひたすら狂っていってるだけのようにも見えるし、煮詰まった毎日からどう脱出したらいいのかわからず、必死でもがいてるようにも見える。
ひょっとしたら必死にもがくからこそ、狂ったように見えるのかもしれない。だらだら生きる彼の内にも後ろ暗い過去を抱えているからだ。
良夫がその過去に苛まれる度、消えた女は日に日に存在感を増す。そして現実と妄想の境界線も曖昧になっていく。
現実に希望を見出せない良夫は、とうとう爆弾で全て破壊することを思いついてしまう。
もらった爆弾が野球ボール型でも緊張感があったのは、そこに深い絶望と真摯な祈りがこめられていたからだ。
そして映画は救いのない最後を迎える。あまりにも美しく描かれるため、本当に切ない余韻を残す。

( 鈴木 由理子 )

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3月7日(土)、8日(日)、10日(火)、12日(木)

OLの愛汁 ラブジュース ( 1999年/国映/58分 )

監督:田尻裕司 脚本:武田浩介 出演: 久保田あづみ、佐藤幹雄、林由美香、澤山雄次

れまでDVDでしか見たことがなかった本作を初めて劇場(新宿国際名画座)で見たのは、林由美香さんが亡くなられた時の追悼上映だった。このときの痺れるような恍惚感は生涯忘れられない。スクリーンいっぱいに映し出されるヒロイン・久保田あづみにすっかり恋してしまったからだ。彼女の表情、仕草、そして何よりもその裸体。陶然としながら「ハダカっていいな、セックスっていいな、ピンク映画っていいな」と心底思えた。さびしいOLとチャラい年下男との出会いと別れを性愛描写を中心に描く――。これといって目新しいドラマでもないのに、ショットの一つ一つが新鮮で、官能的で、柔らかくて、愛らしかった。大げさでなく、これは最高のピンク映画=恋愛映画だと思う。「ピンク映画」という機能を120%生かし、なおかつ性別を超えた万人の胸に訴えかけるポピュラーな恋愛ドラマ。個人的にいちばん好きなピンク映画です。

( 港 岳彦 )

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3月15日(日)、16日(月)、18日(水)、20日(金)

痴漢電車 さわってビックリ! ( 2001年/新東宝/63分 )

監督:榎本敏郎 脚本:河本晃 出演:川瀬陽太、麻田真夕、葉月螢、佐野和宏

れまで、瀬々敬久監督のパートナーとして知られる脚本家・井土紀州と組み、小難しい「四天王wannabe」な作品を撮り続けていた榎本敏郎監督が、心機一転。当時、新進気鋭的存在であった河本晃によるエンターテイメント性溢れる脚本を手に入れ、中日・山本昌ばりのスクリューボールを投げ込んできた。 マジメで気弱な小心オトコが、逆痴漢にノッちまったのが運の尽き。スリ目的だったハチャメチャオンナにつきまとわれ、ひたすら振り回される。しかし、そんなこんなしてるうちに、2人の間には恋心が芽生えてきて……ってな、典型的なスクリューボールコメディなのであるが、とにかくもう、脚本がよくできている。よく描きこまれている。その瞬間瞬間を生きている人物たちの感情の揺れ、そして、粋な仕掛けが散りばめられた起伏に富む展開。(財布と心を)「サワりサワられスリスられ」なオープニングから、切ないすれ違いを経てたどりつくロマンティックなラストまで、息をつく暇もない。 「エンタメ」で何が悪い。エンタメだって、ここまでくりゃ「アート」だ。斜に構えていたばかりいた監督が、スクリューではあるが、ある意味ストレートに勝負した結果、大傑作が生まれた。蛇足だが、本作は、筆者の、ピンク映画オールタイムベストである。

( とくしん 九郎 )

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3月2日(月)、3日(水)、5日(木)、6日(金)

白衣と人妻 したがる兄嫁 ( 1998年/国映/56分 )

監督:上野俊哉 脚本:小林政広 出演:江端英久、本多菊雄、佐々木ユメカ、葉月螢

作の脚本を書いた、現在はむしろ監督として名高い小林政広は、当初「寅さん」を越える長寿シリーズを目指して続篇を書き続けるつもりだったらしい。結局、「バカ兄弟」シリーズは、以後『したがる兄嫁2 淫らな戯れ』(99)、『どすけべ姉ちゃん』(00)、『新・したがる兄嫁 ふしだらな関係』(01)と、合わせて4作品が作られたのみで終了したのだが、ことに最初の2作品は、日本映画史上のコメディの金字塔といっても過言ではない傑作になった。すでにサトウトシキ監督とのコンビで熟成を極めていた、あえてウェルメイドを否定する小林の脚本に、硬質なスタイルを持つ上野俊哉の演出が体当たりする。小津・成瀬の古き良き日本映画のパスティーシュめいたセリフ回しとショットの積み重ねからはじけ出す乾いた笑いに、男という存在のどうしようもない情けなさ、バカさ加減が滲みだす。個性的な持ち味を最大限に引き出された、葉月蛍、佐々木ユメカというふたりのミューズの魅力を堪能できるのも本作の魅力。グロテスクなファルス性がさらに加速する第2作(「兄嫁 背徳の戯れ」のタイトルでDVD発売中)も、ぜひ併せてご覧ください。

( 島田 慎一 )

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3月16日(月)、17日(火)、18日(水)、20日(金)

濃厚不倫 とられた女 ( 2004年/国映・新東宝/58分 )

監督:女池充 脚本:西田直子 出演:こなつ、林由美香、石川欣、佐野和宏

い女のマリッジブルーものだと思って見始めると、冒頭から泥酔状態の男(佐野和宏)が異様にまがまがしい空気を放つさまを目の当たりにし、「これから何が始まるのだ」と途端にわけが分からなくなる。しかし、その後ストーリーは当初の期待に外れない順当なところへ戻っていくように見える。結婚を間近に控えた若い女(向夏)が、衝動的に別の中年男(石川KIN)と関係を結ぶ。彼女がなぜそうするのか、動機はよく分からない。「分からないけれど、なんだか分かる気もする」とかありきたりなことを思いながら、しばらくは若い女を主人公として見ている。しかし、ふたりの逢引きの場に冒頭の男が乱入者として登場するとき、再びわけの分からなさが甦る。そして、この物語は若い女を主人公に見せかけながらもその実、二人の男と一人の女(林由美香)の間の人生を賭した壮大な戦いを描く気なのだと思い至る。二人の男はかつて親友同士だったが、同じ女を愛し、片方が女を手に入れた。しかしもはや中年になった今も、彼らの傷が癒えることはない。若い女はその渦に巻き込まれた一被害者のように見える。 とにかく俳優たちが素晴らしい。石川KINと佐野和宏の、中年男の煮詰まり具合がなんともすごいし、二人の男の間で虐げられてきたかのように見える女が最後に見せる晴れやかな顔に、林由美香の底力を見る。

( 柴 晶子 )

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3月8日(日)、10日(火)、12日(木)、13日(金)

18才 下着の中のうずき ( 2000年/国映/61分 )

監督:坂本礼 脚本:井土紀州 出演:笹原りな、工藤あきら、山崎瞳、鈴木あつ子

子高生がみんな、ルーズソックスを履いていた頃……リアルに生きてる実感のないカノジョたち(とその周辺に群がるオトナたち)が引き起こす、「出会い系」による「エンコー」とかが問題になってた時代だ。あれから時は過ぎ、当時「同世代」といってよかった筆者も、すっかりオッサンになってしまい、現在の女子高生たちがどんな状態なのか、ようわからなくなっちまった。がしかし、きっと、カノジョたちは、時代を写す鏡だ。きっと、そんなに変わってないような気がする。悪くなってこそすれ…… 「長生きしておばあさんになってるアタシたちより、ビルから飛び降りてるアタシたちの方が想像しやすくない?」。生きてる実感がないから、死ぬことに対する実感もない。リアルな人とのつながりが感じられないから、実際に周りにいる人間よりも、メールやネットでつながってる相手の方が身近だったりする。ココロがよくわからないから、とりあえずカラダを売ってみたりする。 リアルに生きてるか――青春ピンクの旗手・坂本礼監督が、当時投げかけた声は、きっと、現在の女子高生……だけじゃなくて、混迷する今を生きる全ての人たちの心に届くだろう。つ~か、届いてほしい。ヒロインが、下手っぴなフラメンコを踊るシーンが胸に染みる。生きることは情熱だ!!

( とくしん 九郎 )

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チケット

  • 前売り券: 1,200円【劇場窓口、チケットぴあ [Pコード:460-542]】
  • 当日料金:一般 1,400円/シニア・会員 1,000円
  • リピーター割引あり(チケットの半券提示で一般料金より200円引き)
  • 整理券制/各回定員入替制
http://pinkschool.cocolog-nifty.com/

2月28日(土)より3月20日(金)まで、
シアターイメージフォーラムにて開催!

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