特集『R18 LOVE CINEMA SHOWCASE』
12/2~ポレポレ東中野にてレイトショー

R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.2公式ページ
いまおかしんじblog

Aプログラム : いまおかしんじの「非日常な日常」
12/2(土)・12/3(日) 21:10~

デメキング 1998/80分
(成人館公開題:痴漢電車弁天のお尻)
監督・脚本:いまおかしんぢ
撮影:鈴木一博
出演:鈴木卓爾 長曽我部蓉子 児島なお 佐々木ユメカ 伊藤猛 岡田智宏 川瀬陽太

人映画館での公開タイトルが『痴漢電車 弁天のお尻』とあるように、この映画、成人映画の世界では不動の人気を誇る「痴漢電車」モノの一種だ。鈴木卓爾と長曽我部蓉子が出会うのも、岡田智宏と佐々木ユメカが出会うのも、児島なおと内田忠司が出うのも電車。やがて、その六人が意外なところで繋がっていることが分かる。人間関係の因果が巧みに解きほぐされていく、そのヌケのいいシナリオ技術もいまおかしんじの特色である。「痴漢電車」モノを、という配給サイドの要請を、見事に自分の世界に引き込む度量と技量は、個性的な職人のそれである。冒頭、頭から血を流す男の血が側溝に流れ出し、その様を捉える横移動のキャメラが、火の点在する荒地へとチェンジする瞬間。伊藤猛が商店街で射殺されるタイミング。瞬間瞬間に賭けている若さが、ピンク映画にはありえない「特撮大作」としてのフォームに結実。どいつもこいつもシンドイ事情を抱えているのだが、最後には一致団結して大怪獣デメキングとの対決を迎える。「怪獣と対決するダメ人間たち」という非現実的なプロットそのものに、そこはかとない哀愁と滑稽味が漂うあたりがたまらない。ヒロイン・長曽我部蓉子の存在感が圧倒的だ。(膳場 岳人

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

にぎって 2000/58分
(成人館公開題:OL性白書 くされ縁)
監督:今岡信治
脚本:今岡信治、上井勉
撮影:鈴木一博
音楽:gaou(ビト)
出演:黒田詩織 加茂大輔本多菊雄 桜沢菜々子 鈴木敦子 佐藤宏 飯田孝男

局寸前のカップル・ミドリと金之助を、次々と襲う災難。その先にあるのは……? 僕は、ポップ・ソングが好きです。Aメロ~Bメロ~サビと、決まりきった展開をする曲が。お決まりのフォーマットの上で、他と違うことができる人、スゴイと思います。映画においても、これ言えると思います。ハリウッド製のベタなラブ・ストーリー、結構好きなのあります。でも、昨年から僕を虜にする「いまおかしんじ作品」はちょいと趣が異なります。言ってしまえば、サビが来そうな気配が全くありません。延々とAメロが、しかも、全く別の曲のAメロが、あれこれ継ぎ接ぎされた感じです。でも、観る方の気分が盛り上がらないということは決してなくて、むしろ、ガツッと魅きつけられて、離してくれません。それはきっと、僕たちのが人生が、そんなもんだからだと思うのです。人生、中々「サビ」なんてやってきません。続くのは、この『にぎって』のように、脈絡のない受難です。でも、主人公の二人は、何となく一緒にいて、男は走り、女は男を抱きかかえ、そして生きます。必死に、生きます。そのとき、二人には、小さいけど優しい奇跡が起きます……って、あれあれ?この作品の五年後に、同じような映画作られてますよね? 主人公は女二人でしたけど。決まりきって……る? んま、いいや。僕は、そんないまおかしんじの世界の虜なのであります。(とくしん 九郎

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

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Bプログラム : いまおかしんじの「女優・林由美香」
12/4(月)、12/5(火) 21:10~

イボイボ 1996/63分
(成人館公開題:痴漢電車 感じるイボイボ)
監督:今岡信治
脚本:いまおかしんじ、星川隆宣
撮影:鈴木一博
音楽:gaou(ビト)
出演:川瀬陽太 水野麻亜子 林由美香 佐野和宏

った恋人の幻影を追う男と、彼を「こちら側」に引き戻そうとする少女の物語。一年以上前に、『由美香Oh My Love』でたった一度観ただけのこの作品について、一体全体何を書いたものかと悶々とし続けた結果、辿り着いた答えは、「あ、僕って『なんちゃっていまおかファン』だな」っつ~モノ。実は僕、川瀬陽太演ずるこの映画の主人公に、あまり感情移入できなかったのである。あまりにも、イッちゃってて。それはきっと、これまで僕が、「境界線」というものを身近に、そして深く捉えたことがなかったからだと思う。昔からそこそこ自立した精神の持ち主で、気の合う仲間がずっといて、一方で、自我を失ってでも手に入れたいような恋人には出会えなくて……あ~あ、幸せなんだか、寂しいんだか。強いんだか、ただのバカなんだか。というわけで、そんな僕に、いまおか監督が内に秘めた鬱屈をひたすら吐き出した初期二作は、ちょいとヘヴィすぎるのである。それでもまだ、『彗星まち』には、「こちら側で奇跡を待つ」という希望的なラストがあった。でも、『イボイボ』は……あまりに、辛すぎる……要するにまぁ、バカな僕は、ラストで歌い踊るような映画が好きなんですよ。明確に幸せな気分になれる映画が。映画には、そういう瞬間があっていいと思うのである。映画なんだから。ウソなんだから。なんちゃって~、なんちゃって~。(とくしん 九郎

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

たまもの(インターナショナル・ヴァージョン) 2004/65分
(成人館公開題: 熟女・発情 タマしゃぶり)
監督・脚本:いまおかしんじ
撮影:鈴木一博
出演:林由美香 吉岡睦雄 華沢レモン 栗原良 伊藤清美 伊藤猛 川瀬陽太 桜井一紀 佐藤宏

まおかしんじは獅子プロで同期だった田尻祐司らとともに、神代辰巳の遺作『インモラル』(95)の現場についている。浜辺に始まり浜辺に終わるあの作品を、『たまもの』の浜辺のシーンで想起するのはゆえなきことではない。寒々しい房総の浜辺で、林由美香はじつに嬉しそうに、楽しそうに駆けまわり、スッ転び、弾けるような笑い声をあげる。その動きを冷静にフォローするキャメラ。「どうしようもない」といった感情が、スクリーンにも、見ているこちら側にもふつふつと湧きあがってくる。来るであろう悲劇がここには孕まれているし、現在進行形でありながら、もう終わってしまったような不思議な光景が、何かの偶然で浜辺に顕現してしまったようでもある。いや、本作は全体的にそんな不可思議な雰囲気に満ちているのだ。安アパートで体をあたためあうカップルの裸体。相手のことなど考えずに加速してしまう痛ましい愛。喫茶店からコンビニへ、コンビニから坂道へと繰り広げられる林由美香の大暴走シーン。それらはすべて、神代映画の最上の瞬間に比肩している。だが、いまおかしんじを語る際に神代辰巳を持ち出すのはもうやめよう。『たまもの』は「いまおかしんじ」と「林由美香」というあかるい陰火が、互いに交歓しつつ燃えあがった、永遠の名品である。膳場 岳人

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

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Cプログラム : いまおかしんじの「夫婦の処方箋」
12/6(水) 21:10~

愛する 1999/63分
(成人館公開題:愛欲乱れ妻)
監督・脚本:今岡信治
撮影:鈴木一博
出演:諏訪光代 田中要次 永井健 麻丘珠里 吉沢一子

(田中要次)の「愛」を「欲」して「乱れ」る「妻」(諏訪光代)の物語。この作品が、いまおかしんじショック第一弾。そして、第二弾が『たまもの』。僕の、貧相な映画的素養で感じたことは、「日本にもカサヴェテスがいたのね!!」。いやこれ、あながち、間違ってもいないと思うのです。ちょっと、いや、とても痛い、でも、とてもかわいらしい女性を、厳しくも優しい視線で描ききるタフな感じが。観ている間、ずっと眉間にシワが寄っちゃうような、痛々しさと、愛おしさを与える感覚が。本作でも人造人間が登場したりと、「アヴァンギャルド」と評されることが多い監督ですが、実は、とても古風な感覚の持ち主じゃないかなぁ。作中、ヒロインは、ずっと靴下に空いた穴を縫い合わせてます。表すのは、夫婦の愛そのものであります。ちょっとくらい穴が空いても、丁寧に繕っていけば、ずっとはき続けることができる……時代はミレニアム直前。なんて古臭い……と思う人もいるかもしれませんが、僕は、こんな時代だからこそ、信じていたいと思うのです。「愛する」ということを。「愛せる」ということを。そしたら、きっと、僕たちの前にも、人造人間が現れてくれるかも……。(とくしん 九郎

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

それでも 1999/62分
(成人館公開題:ぐしょ濡れ人妻教師 制服で抱いて)
監督・脚本:今岡信治
撮影:鈴木一博
音楽:gaou(ビト)
出演:諏訪光代 伊藤猛 鈴木敦子 佐藤幹雄

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

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Dプログラム : いまおかしんじの「おんなのみち」
12/7(木)、12/8(金) 21:10~

手 錠 2002/70分
(成人館公開題:ロスト・ヴァージン やみつき援助交際)
監督:サトウトシキ
脚本:今岡信治
撮影:広中康人
音楽:山田勳生
出演:佐々木日記 松永大司 斉藤知香 佐倉麻美 向井新悟 田畑宏和 羅門ナカ

交しようとしたオヤジに手錠をかけられた瞬間から、少女・千里(佐々木日記)は、性の、そして、サエない人生の囚人になる。「夢は夜ひらく」わけではないけれど、朝になると、手錠を必死に外さなきゃなんない日々。十年前も、五年前も全く同じ日々。それでも、「前を見るよな がらじゃない うしろ向くよな がらじゃない」みたいな感じで、のらりくらりと、一見あきらめモードなようで、実はとっても健気に、毎日、一歩一歩、歩いている。進んでいるかはわからないけど。 いや、後退してこそいれ、進んではいないな。でも、彼女は、生きている。毎日を生きている。そして、十年たったある日、彼女は、手錠を受け入れることにする……僕たちはみんな、僕たちの人生の囚人である。それはもう、ど~にもなんない。毎日同じところをグルグル回っているだけかもしれない。でも、この人生を生きるしかない。ただ、そんな、片腕にかけられた手錠のもう片方を、誰かの腕につなぐことができたら……この時間を共有できる人ができたら……夢は夜ひらくかもしれない。というわけで、めちゃめちゃ暗い歌『圭子の夢は夜ひらく』に無理矢理引っ掛けてお送りしましたが、この曲を、佐々木日記がアッケラカンと歌ったら、結構この映画に合う気がするのは、僕だけでしょうか?(とくしん 九郎

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

かえるのうた 2005/65分
(成人館公開題:援助交際物語 したがるオンナたち)
監督・脚本:いまおかしんじ
撮影:前井一作
音楽:ビト
出演:向夏 平沢里菜子 吉岡睦雄 七瀬くるみ 佐藤宏 伊藤猛 川瀬陽太

助交際」という、売春行為を暈かす言葉でなく、明々白々に「売春」をしている二人の女性を主人公に、底辺暮らしのやるせなさを描いたシリアスな作品……に落ち着くはずのところを、強引に「ハッピーエンド」にねじ伏せ、下北沢駅前を天国に変えたリリカルな小傑作。漫画家を目指す平沢里菜子は、売春の現場でSM行為を受け入れる惨たらしさだし、向夏は平凡な家庭生活を望みながらも、浮気性の夫に裏切られ続けるしんどい日々。はっとするような美人で、とんがった眼差しが魅力の平沢里菜子と、丸っこくて柔和で女の子らしい向夏という対照的な二人が、漫画喫茶というしょーもない場所で出会い、つましい友情を育んでいく。世間から見棄てられたような人びとに、いまおかしんじは寄り添うでもなく、同情するのでもなく、「これはまさに自分自身のことだ」というまっすぐな気持ちで映画を作っている。いまおかしんじ監督作品はいつでもそうだと言われればそれまでだが、こんな目線の低い世界の達成は、ケン・ローチですらなしえなかったもの。簡潔かつ的確なショットの積み重ねもじつに見事。リラックスした雰囲気だが、これほど「映画らしい」映画って実は少ないんじゃないか?(膳場 岳人

写真提供=国映株式会社、新東宝株式会社

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2006/11/26/16:59 | トラックバック (0)
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