園子温(映画監督)
- 映画「HAZARD」について
『HAZARD』
シアターN渋谷にて絶賛上映中
12月より全国順次ロードショー
公式サイト:http://www.hazardmovie.com/
園子温(映画監督) 1961年生まれ、愛知県豊川市出身。17歳のとき詩人としてデビューし、1987年に『男の花道』で、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のグランプリを受賞。代表作には、海外での評価が高い『自殺サークル』(01)などがある。最近は、テレビ朝日系列の金曜ナイトドラマの「時効警察」(06)の第4話及び第6話に脚本と演出で参加する。『奇妙なサーカス』(05)はカナダのファンタジア映画祭で作品賞受賞、『紀子の食卓』はカルロヴィヴァリ国際フィルムフェスティバル特別賞賛賞及びFICC受賞、プチョン国際ファンタスティック映画祭観客賞&主演女優賞受賞などと国際的な評価も獲得。今後の作品には、東映で栗山千明と大杉漣が主演のホラー『エクステ』などの意欲作が続々控えている。
『紀子の食卓』(06)でもインタビューしたが、今後も『気球クラブ、その後』(06年12月23日公開)、『エクステ』(07年2月17日公開予定)と公開作が相次ぎ、今の日本では最も精力的に映画を撮っているとも言える(現在、新作の脚本も執筆中)園子温監督の4年前に撮影された幻の『HAZARD』がついに公開された。今から見ると、若さがはっきりと分かるオダギリジョーが眩しい、ニューヨークを舞台にした無軌道ながらも正統派の青春映画だ。オダギリジョー本人も初心を忘れないために見直すことが今でもあるという『HAZARD』は、誰もが通過する気持ちをヴィヴィッドに描いている。園監督の現在の活躍へのきっかけにもなった作品であるので、是非観てほしい。
――園監督にとっては、今作は「書を捨てよ、町へ出よう」だと思ったのですが、いかがでしょうか?
園 そんなに偉そうなものではないですが、そうかもしれないですね。この映画で吹っ切ることが出来て、次々と作品を撮るようになりましたし。ただ、小田実の「何でも見てやろう」の影響のほうが強いかもしれないです。少し前の青春像なんですよ。今の若者は、まずネットなどで調べてから行動すると思うんですが、好奇心のおもむくままに行動するのが青春だと思うんですよね。防御ネットをあらかじめ設置しないで動くということです。
――『ホステル』(05)みたいなものですか(笑)?
園 大変な目に遭うという意味では同じですね(笑)。動いた結果が何であれ、すべてがその後の人生の糧になりますからね。ただ、『HAZARD』は昔の青春映画、特にニューヨークを舞台にした作品は意識しましたね。
――『真夜中のカーボーイ』(69)やスタローンが出ていた『ブルックリンの青春』(74)のような作品でしょうか?
園 そうですね。共にニューシネマだと思いますが、だから、『HAZARD』にもニューシネマのような要素が入ってきていますね。そしてニューヨークで撮るとなったときに、以前にニューヨークに住んでいたから、近所で撮る感覚と同じなんですよね。高円寺で撮っているのと同じですよ。
――舞台を1991年にしたのはなぜでしょうか?
園 浄化されて綺麗になる前のニューヨークですよね。そして9.11以前というのも重要だった。さっき言ったニューシネマに出てくる古き悪きニューヨークを舞台にしたかったんですよね。ただ、自由の女神やブルックリン橋は撮らないようにしましたね。そんな観光名所みたいなところを出したら生活感が出ないし、何より「ニューヨークまで行ってロケしました!」と主張しているような邦画やテレビドラマみたいになってしまう。だから、あまり映像に映らないような路地裏みたいな場所を多く撮ったんです。
――ただ、ニューシネマ的でありながらもヴィヴィッドな感覚が前面に出ていますよね。
園 それは『HAZARD』がロケハンからストーリーを組み立てたからでしょうね。熊切君(熊切和嘉監督)が書いた脚本があったんですけど、一から作り直しました。映画にも出てくるゴミ捨て場、アイスクリーム屋、アジトになる家屋などからストーリーを作ったんです。
――ジェイ・ウエスト演じるキャラクターが住む、あのアジトはどうやって見つけたんですか? 外観はボロボロのビルでしたが、中は見事な部屋でした。
園 あの部屋は、たまたま見つけたんだけど、『キル・ビル』(03)に参加していた人の部屋だったんです。「ユマ・サーマンの武術映画を撮るので部屋を空けるので貸してあげる」とのことでしたが、それが『キル・ビル』とは初めは分かっていなかった(笑)。『キル・ビル』がなかったら、あの部屋は使えなかったってことです。
――ジェイ・ウエストの存在感がすごかったのですが、アドリブが多かったんでしょうか?
園 はっきりと思い出せないですが、ジェイに限らずアドリブが結構あったとは思います。ただ、アドリブが多いと思われることもある『紀子の食卓』は全然アドリブがないんです。アドリブっぽく見せることは上手くなったんです。『HAZARD』とか『夢の中へ』(05)を撮っているうちに、アドリブじゃなくてもアドリブっぽいことはできるってことが分かってきたんです。
――今後の作品にも期待しています。
園 まだ発表段階ではないですが、これからもどんどん撮っていくので楽しみにしていてください。
取材/文:わたなべりんたろう
原作・脚本・監督:園子温
出演:オダギリジョー,深水元基,ジェイ・ウェスト,池内博之 他
シアターN渋谷にて絶賛上映中
12月より全国順次ロードショー
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