特集『R18 LOVE CINEMA SHOWCASE』

R18 LOVE CINEMA SHOWCASE Vol3これまで二度にわたって開催された『R18 LOVE CINEMA SHOWCASE』シリーズで、初めてピンク映画に触れたという人も多いだろう。しかし、もしアナタが、これまで上映されてきた「国映」の作品だけを観て、ピンク映画の全てを知った気になっているとしたら、それは大変な間違いだ。スシとテンプラだけを食べて「日本食、大好キデスー」と言っている欧米人と何ら変わることはない。

ではピンク映画道をさらに突き進んでいくと、懐石料理のように奥深い世界が広がっているのかと問われれば、答えは、全くもって、否、である。ここで我々が遭遇するのは、例えるなら、カレーライスやラーメンといった、何の変哲もない庶民の味である。しかし、実は、こういう皆が慣れ親しんだ味こそ、一番調理が難しく、奥が深いものだったりするのだ。

ピンク映画/エロOVの世界には、種々の規制と戦いながら、誰からも愛される娯楽作品を撮ろうと奮闘する男たちが存在する。今回特集上映を組まれた竹洞哲也監督はその急先鋒だ。この機会を決して逃さないでいただきたい。そこには、新鮮でありながら、どこか懐かしい"出会い"が待っているはずだから。

とくしん九郎

R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.3~
「竹洞組」の冴えたやり方。

2007.7.7(土)~7.13(金)連日21:10~
限定レイトショー。

http://r-18.cocolog-nifty.com/
【料金】
前売鑑賞券:\1300|当日券:\1500
(女性割引、リピーター割引:\1300)

7/7 (土) 『舞う指は誰と踊る』 『短距離TOBI-UO』
7/8 (日) 『舞う指は誰と踊る』 『短距離TOBI-UO』
7/9 (月) 『森鬼』 『短距離TOBI-UO』
7/10(火) 『森鬼』 『短距離TOBI-UO』
7/11(水) 『思い出がいっぱい』 『恋味うどん』
7/12(木) 『思い出がいっぱい』 『恋味うどん』
7/13(金) 『思い出がいっぱい』 『恋味うどん』
※公開期間中、スタッフ・キャストによるイベントを実施予定。

<作品レビュー>
舞う指は誰と踊る1舞う指は誰と踊る(2005)
(公開タイトル:欲情ヒッチハイク 求めた人妻)
監督:竹洞哲也 
脚本:小松公典 
撮影:創優和
出演:夏目今日子、那波隆史、葉月螢、華沢レモン、松浦祐也、石川雄也
夫の浮気を理由に家を飛び出した人妻(夏目今日子)が、あてどのないヒッチハイクの末、初恋の相手(那波隆史)の元に辿り着く。彼らには、高校を卒業する際、別々の道を歩むことを決断したという過去があった――。

舞う指は誰と踊る2 「"もしも"の答えなんて、ないよな」男がつぶやく。人生なんて岐路また岐路の連続だ。たとえ現在(いま)の自分に満足しているとしても、「もしあのとき……」と考えてしまう瞬間が、誰にでもあると思う。それが大好きだった人との出会い/別れなら尚更のこと。でも、決して時間は戻らない。ありもしない"別の人生"のことなんてわかりはしない。我らは、今現在を、そしてこれからを、とにかく生きていくしかないわけである。本作は、その勇気を持つため、過去にけじめをつけるために、少しのあいだ後ろを振り返らせて……という、ちょっと切ない大人のラブストーリーなのであります。

 なお、この後、竹洞&小松コンビは、姉妹編となる『再会迷宮(不倫同窓会 したがり熟女)』(07)を撮ることになります。この作品では、過去に"戻る"ことはできないけれど、これから人生を"始める"ことはできるということを描いてます。この作品もぜひ、皆さんの元に届いてほしい!!

とくしん九郎

短距離 TOBI-UO2短距離 TOBI-UO(2006)
(公開タイトル:ホテトル嬢 癒しの手ほどき)
監督:竹洞哲也 脚本:小松公典
撮影:創優和
出演:青山えりな、サーモン鮭山、今野由愛、倖田李梨、吉岡睦雄、柳之内たくま
主題歌:ニナザワールド「きみのこころ」
ワケあって熱海に現れたホテトル嬢の美空(青山えりな)。得意のサービスと優しい気持ちであっという間にナンバーワンの地位に上り詰める彼女を、無愛想ながら人情豊かな店長(サーモン鮭山)や素人童貞の店員(吉岡睦雄)が支える。ところがそんな彼女に嫉妬する同僚ホテトル嬢もいるわけで……。

 ぶっちゃけ、今回の上映作のなかで私(三十路独身女子)はこれがいちばん好きです。青山えりなちゃん演ずる主人公のホテトル嬢・トビウオは、たとえどんなド変態のお客のワガママであっても「可愛がって」全身で受け入れます。これは言ってみれば母性に根ざした行動です。あふれる母性でお客を癒す――作品全体にただよう、なんともいえないあたたかさはここからきているのでしょう。観ているうちに自然と目尻が下がり、エンドロールが流れる頃には誰かに優しくしたくなる、そんな映画です。

短距離 TOBI-UO2 「独身のくせに母性を語るな!」と後ろから蹴りを入れられそうですが、女という生き物であれば、無条件で誰かをいとおしみ可愛がるという感情は、子宮で共感できるものだと思います。その意味では女子にこそ観てほしいですね。今回はじめてピンク映画を観るんだけど、っていう女子は、この作品から入るべし! あと、サーモン鮭山ファンにもぜひオススメします。だって変態役じゃない彼なんてそうそう観られねえぜ? 

 「一人の風俗嬢の生き様を風光明媚な熱海を舞台に描き、爽やかな余韻を残す秀作」とまとめようとして、あーこんなおカタイ言葉でこの映画の世界は表現できねえわと反省。まあ、そんなカタイことうだうだ考えんと、青山えりなちゃんの優しい微笑みと親しみやすいぽちゃぽちゃしたカラダ(ああ、ここにも母性が!)を堪能するのもいいでしょう。それだけでも一見の価値はあるぞ、マジ。

安倍まりあ

森鬼2森鬼(2006)
(公開タイトル:乱姦調教 牝犬たちの肉宴)
監督:竹洞哲也 脚本:小松公典
撮影:創優和
出演:吉岡睦雄、青山えりな、倖田李梨、松浦祐也、小林節彦、サーモン鮭山
挿入曲:ニナザワールド「SWAN」
自殺をほのめかして失踪した恋人(松浦祐也)を追って、富士の樹海に迷い込んだ詩子(青山みなみ)は、突如現れた怪人・伴幌男(吉岡睦雄)に拉致され、古い屋敷に監禁されてしまう。詩子に恐怖と悦楽の調教の日々が始まる……。

 樹海でのロケーションを敢行した異色のエロティックホラー。う~む、今も吉岡睦雄の「キョー!」という奇声が耳に残っとる。彼の怪演といいピンクとは思えない大胆なプロットといい、インパクト勝負の作品といえましょう。この作品で象徴的だと思ったのは、ピアノを弾きながらヤる犯人・伴幌男の"裸に靴下"姿。一体コイツは怖いのか単なるバカなのか、いやバカだから怖いのか、でもやっぱりバカだから笑えるという――ええ、この感覚! これこそ、この映画の世界そのもの! そもそも犯人の役名が、伝説の怪作『バーニング』の殺人鬼・バンボロをもじった「伴幌男」ってところからして香ばしいじゃないの。私ゃ~、好きよ、そのセンス。

森鬼2 せっかく「樹海&一軒家&変態の犯人」というおいしいシチュエーションがあるのに、怖がらせ方が足らへんやんけ! と思うむきもあるでしょうが、本作の持ち味である"ホラー風味の愛すべきエロ映画"として観れば、いやいや、楽しい楽しい。演技陣も、主演の二人の存在感もさることながら、樹海パトロールといいつつ、実際は伴幌男が飽きた肉奴隷の女の子を人身売買のために回収するおじさん役の小林節彦や、最初の肉奴隷役の倖田李梨センセイも非常に頑張っています。こまかいところに目くじらを立てずに、次々と開けられるビックリ箱をひとつずつ「ウヒョッ♪」と楽しみながら観ないと勿体ない作品です。

 それにしても、この公開タイトル、実にイイ! そそられるわ…。

安倍まりあ

思い出がいっぱい -EIGHTEEN BLUES-1思い出がいっぱい
-EIGHTEEN BLUES-
(2004)
(公開タイトル:美少女図鑑 汚された制服)
監督:竹洞哲也 脚本:小松公典
撮影:創優和
出演:吉沢明歩、冬月恋、林由美香、伊藤謙治、松浦祐也、なかみつせいじ
廃校となった母校に集まった、幼馴染み四人。「十八歳」という岐路を迎えた彼らは、再会を機にそれぞれ自分の道を歩き始める――。

 主演の吉沢明歩を筆頭に、何ともかんとも美しいことだらけの青春映画である。「過ぎていったときは錬金術を使う♪」と歌ったロックンローラーがいるように、夢見る頃を過ぎた男たちにとって、「十代」とははなはだしく美化されて記憶されているものではないだろうか。

 しっかりと夢を見ていたあの頃は、全てが輝いていた。全てが美しかった。大してかわいくない初めて付き合った相手も、思い出がいっぱい -EIGHTEEN BLUES-2今となってはアッキーのように美しかった。童貞を捨てたい一心で妥協しちゃった初体験の相手も、今となってはアッキーのようにセクシーだった。それでいいではないか。思い出に生きるのはイマイチだけど、多少美化された思い出を胸に生きていくのは悪くない。きっと、ボクらのアッキーたちは、「夢をあきらめないで」と言ってくれている。

 男たちよ、この映画を見て奮い立て!!

とくしん九郎

恋味うどん恋味うどん (2006)
(公開タイトル:悩殺 若女将色っぽい腰つき)
監督:竹洞哲也 脚本:小松公典
撮影:創優和
出演:吉沢明歩、なかみつせいじ、松浦祐也、青山えりな、倖田李梨、柳東史、サーモン鮭山
主題歌:ニナザワールド「Life is Love」
男にだまされて一文なしとなった花子(吉沢明歩)は、辿り着いたうどん屋で店主の一義(なかみつせいじ)のあたたかさに触れ、住み込みで働くようになる。そこには頭の弱い甥の番田礼(松浦祐也)、一義の幼なじみでつぶれかかった本屋を営む隆(柳東史)らがいて……。

恋味うどん2 2006年度ピンク大賞で、年間1位、脚本賞、女優賞ほか、多くの賞を受賞した人情喜劇。この結果も納得の心温まる良作でございますよ。それにしても吉沢明歩ちゃん、頭の弱い(失礼!)女の子を演らせたら、ただでさえ可愛いのがさらに輝きを増して、まるで天使に見えますな。この映画の、あの天真爛漫なアッキーのトリコにならない人なんているのでしょうかッ、いや、いまいッッ! ……と、思わずツバを飛ばして叫びたくなるほど、愛らしい主人公を作り上げた時点で、この映画はもう勝ったようなものですわ。

 それぞれどこか社会の窓からはみ出している(あ、「窓」はいらねーか)キャラクターたち、そのひとりひとりに、脚本家・小松公典氏の深い愛情がこめられています。役者たちもそれに応え、自分の役どころをちゃんと咀嚼・解釈・ときどきはみ出しているため、スクリーンの中でちゃんとキャラクターが呼吸していました。特に松浦祐也の怪演は光っています。出てくるだけで笑えるってすげーよ!

恋味うどん3 現実的に考えれば、ラストはもしかしたらああはならなかったかもしれません。でも、あの終わり方にしたのは、「登場人物たちも観る人たちも、すべてが幸せでありますように」という制作者側の願いみたいなものがあるから、のような気がしました。少なくとも、私は(そりゃあ三十路独身で結婚予定は当分ありませんけれどもね)、幸せな気持ちで映画館をあとにできました。これが世のピンク映画ファンに支持された理由でしょう。ぶっちゃけ、日本中が泣いたという『○カチュー』より泣けました(ああ、○の中には「セ」とでも「ピ」とでも入れてください)。

 そう、この映画はね、人間が生きているんですよ。必見!

安倍まりあ

<上映スケジュール&料金>

R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.3~
「竹洞組」の冴えたやり方。

2007.7.7(土)~7.13(金)連日21:10~ 限定レイトショー。

【スケジュール】
7/7(土) 『舞う指は誰と踊る』 『短距離TOBI-UO』
7/8(日) 『舞う指は誰と踊る』 『短距離TOBI-UO』
7/9(月) 『森鬼』 『短距離TOBI-UO』
7/10(火) 『森鬼』 『短距離TOBI-UO』
7/11(水) 『思い出がいっぱい』 『恋味うどん』
7/12(木) 『思い出がいっぱい』 『恋味うどん』
7/13(金) 『思い出がいっぱい』 『恋味うどん』

※公開期間中、スタッフ・キャストによるイベントを実施予定。

【料金】
前売鑑賞券:\1300|当日券:\1500(女性割引、リピーター割引:\1300)
http://r-18.cocolog-nifty.com/

 
2007/06/23/09:04 | トラックバック (0)
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