インタビュー
『明日泣く』内藤誠監督

内藤 誠 (映画監督)
汐見 ゆかり (女優)

映画『明日泣く』について

公式

2011年11月19日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

東映の『不良番長』シリーズやもはや伝説のカルト映画となった『番格ロック』、また『時の娘』『俗物図鑑』『スタア』など異色の自主映画で知られる内藤誠監督が25年ぶりに手がけた劇場映画は、監督自身も強い思い入れを持つ作家・色川武大の短篇小説の映画化である。この作品の公開にあわせて先頃、レトロスペクティヴや著書の刊行も実現し、いま再び映画ファンの注目を集める内藤監督と、主演のキッコこと定岡菊子を演じた汐見ゆかりさんにお話をうかがった。(取材/文:佐野 亨)

汐見 ゆかり(女優)
1981年3月7日生まれ、岡山県出身。2001年、モデル活動を開始。カネボウ化粧品「freeplus(フリープラス)」(05)や日産自動車「モコ」(06)、TDK(06)など多くのCMに出演。その後、女優業を中心に活動。出演作に『THE CODE/暗号』(08)、『パーマネント野ばら』『ナチュラルウーマン2010』『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(10)などがある。

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汐見ゆかりさんインタビュー

――本作に出演することになったきっかけを教えてください。

汐見ゆかり汐見 内藤誠監督が私の前の出演作『ナチュラルウーマン2010』を試写で観て、「この子はキッコだ!」と思ったらしいんです。そこからすぐに顔合わせになりました。

――大ベテランの内藤監督に初めてお会いになったときの印象は?

汐見 とても話しやすい監督でしたね。言葉の一つひとつが明確で、この監督になら身をあずけて、一緒にやっていけるなと思いました。あと、とにかく撮影が早い。テストを1回やって、本番はだいたい1発OK。周りが「いまのでよかったのかな?」と心配になるくらいでした。内藤監督は「フィルムをたくさん使わない」ということが基本にある世代で、周りのスタッフは30代くらいの若い人が中心だから、「監督、もうちょっとカット長いほうがいいんじゃないですか?」なんて声がよくあがっていました。

――そこはプログラム・ピクチュアの監督ならではの手腕でしょうね。

汐見 そうですね。撮影期間も2週間弱とかなり短かったので、最初は毎日徹夜になるくらいを覚悟していたんですが、実際に始まってみるとものすごく早くて、プロの現場だなあと思いました。

――シナリオを読んでから原作を読んだんですか?

汐見 そうです。シナリオは原作に脚色を加えていますが、原作に描かれているキッコのイメージをすごく大切にしているので、そこでのギャップはあまり感じませんでした。

――キッコという女性に共感する部分はありますか?

汐見 個人的にはあまり共感しませんね。こんな子が周りにいたら絶対いやだと思うし、仲良くはなれない。ただ、一つの夢に向かってまっすぐに進んでいて、そのためにはどんなこともいとわない、というたくましさはすごいと思うし、羨ましいなと思います。すごく自己愛が強い女性だけど、だからこそ武も含めて周りの誰かの視線をつねに意識しているところがある。このポスターのメインビジュアルもそうですけど、ちょっと後ろを振り返りながら、「私のこと、ちゃんと見てくれてるわよね?」っていう(笑)。

――斎藤工さんとは今回が初共演ですね。

明日泣く5汐見 そうですね。同じ作品に出ていたことはあったんですが、そのときは顔を合わせない役だったので、共演といえるのは今回が初めてです。斎藤さんとは、この役柄と同じく同世代なんですが、少し距離のある設定だったので、撮影中はあまり親密にお話をすることはありませんでした。

――内藤監督から「こうふうに演じてほしい」というような注文はありましたか?

汐見 あまりなかったですね。監督が素のままでいいと思ったのかもしれませんが、勝手気ままなキッコらしく、自由に演じさせてもらいました。ただ、現場で監督の意図と違った場合には、「あ、違う。そっちじゃない」ということは、非常にわかりやすくおっしゃいますね。衣裳とかメイクとかも、監督なりのイメージがはっきりあったんだと思います。

――汐見さんを意識してシナリオを考えた面もあったのでしょうか?

汐見 くわしくはわかりませんが、最初のシナリオからいくつか大幅に削ったシーンはありました。それを削ぎ落としていったことで、私に近いキッコ像というのが完成したのかもしれませんね。

――ジャズの演奏シーンはとてもグルーヴ感がありましたが、苦労された点は?

汐見 最初に音だけを録音して、次にもういちど演奏をしながら撮影していったんです。武藤さんたちの島田カルテットが演奏しているときには、切り返しの表情をこちら側で撮ったりもしました。キッコは心境の変化が激しいキャラクターですからね。前後のシーンの感情の流れを考えて、演奏しているときの表情をつくっていくという感じでした。

――この映画を通じて、あるいはキッコという人物を通じて伝えたいメッセージはありますか?

汐見 どの時代にも、世間の価値観にとらわれずに自由に生きていきたい、という気持ちを持っている人はいますよね。ただ、一方で、いまの時代って欲を持って生きることがつらくなってきている時代でもあると思うんです。こんなことやあんなことをしたい、というよりも、いまあるもののなかで細々と暮らしていく。それが「草食」と呼ばれるような生き方にもつながっているんじゃないでしょうか。だから、キッコの「生きたいように生きて、後悔はしない」という言葉を、いまの人たちがどういうふうに受け止めてくれるのか、とても興味がありますね。

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( 2011.10.25 千駄ヶ谷にて 取材/文:佐野 亨)

明日泣く 2011年/日本/カラー/76分/HD/ステレオ
出演:斎藤工,汐見ゆかり,武藤昭平(勝手にしやがれ),奥瀬繁,井端珠里,マービン・レノアー,坪内祐三,杉作J太郎,島田陽子(特別出演),梅宮辰夫(特別出演)
監督:内藤誠 企画:伊藤彰彦 原作:色川武大「明日泣く」(講談社文芸文庫「小さな部屋・明日泣く」所収)
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本雅司 企画協力:奥村健 プロデューサー:大野敦子,古賀奏一郎 脚本:伊藤彰彦,内藤研
音楽:渋谷毅 撮影:月永雄太 録音:高田伸也 編集:冨永昌敬 美術:大藤邦康 ヘアメイク:橋本申二
スタイリスト:小磯和代 助監督:菊地健雄 制作担当:吉川久岳
製作:プレジュール,シネグリーオ 配給・宣伝:ブラウニー (C)2011プレジュール / シネグリーオ
公式

2011年11月19日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

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2011/11/23/17:18 | トラックバック (0)
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