クロード・ルルーシュ (監督)
公式インタビュー
映画『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』について【1/2】
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2016年9月3日(土)より、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー!
フランス映画の金字塔にして恋愛映画の傑作『男と女』(66)で知られる巨匠クロード・ルルーシュ監督が、『男と女』『愛と哀しみのボレロ』(81)『レ・ミゼラブル』(95)などの音楽を担当している盟友フランシス・レイと再びタッグを組み作り上げた映画『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』。“大人の男と女の恋愛映画の決定版”と評判の本作の、クロード・ルルーシュ監督と主演のジャン・デュジャルダンの公式インタビューをお届けする。 J・デュジャルダン インタビューはこちらから
STORY ニューデリー~ムンバイ~ケーララへの2日間の旅。異国情緒たっぷりのインドを舞台に、互いにパートナーのいる男と女は魅かれあう。美しい風景の中でつきない会話。恋の予感はやがて……
映画音楽家のアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)は、自分が作曲してきた映画の主人公のように、飄々とユーモアにあふれた人生を謳歌していた。そんな折、ボリウッド版『ロミオとジュリエット』作品の製作のためにインドを訪れた彼は、フランス大使の妻アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)と出会う。愛する夫との間に子供を授かりたいと願う彼女は伝説の聖母アンマに会うためにインド南部の村まで旅に出ると言う。多忙なアントワーヌもしばしの休養を求めて、アンナを追って2日間の旅に出かけることを決めた――。
Q: この映画がはじまったきっかけ
クロード・ルルーシュ(以下 CL) この映画は、様々な状況がうまい具合に重なり合って始まった。私が別のプロジェクトをやっていた時、エルザ・ジルベルスタインとジャン・デュジャルダンから電話をもらったんだ。2人が、ただ私と仕事をしたいと思っていることを知らせたかったという、それだけのものだった。そして、次にインドとの“啓示”のような出会いがあった。彼らとお互いに考えていることを話していくうちに、私好みのラブストーリーが浮かんできた。ジャンとエルザが私を突き動かしたんだよ。彼らは思いもよらないカップルになる可能性を秘めていた。お互いに違いすぎるからこそ、理想的なカップルになるはずだ、と。
私は俳優が好きだし、彼らは映画にとって欠かせない存在であることも分かっている。というのも僕ら(脚本家)が書いたあらゆることを彼らが演じるものが映画だからね。私はかねがねジャン・デュジャルダンと一緒に仕事をしたいと思っていた。だが50年以上にわたって映画を作ってきて、数々のフランスの有能な俳優たちと仕事をしてきたが、彼と仕事をすることはかなわなかった。
ジャンとエルザのことを考えながら、私は大急ぎで脚本を書き上げた。2人は私の執筆作業を見守り、その工程を楽しんでいた。2人はそれぞれ極めてユニークなやり方で、今の映画の新しいトレンドを教えてくれた。こうして私は初めて“熱意ある要望”に応える形で映画を作り上げたんだ。
Q: 愛とインドと、コメディ
CL
愛は人間にとって、一番の関心事だ。ラブストーリーほど満足感を味わえるものはないと同時に不快なものもない。つまり愛というのは混沌としたものであるがゆえに、驚くべき展開となる可能性があるんだ。事実、愛はこの映画の唯一のテーマだ。愛に限界はない。誰かが誰かを深く愛していても、別の人間を好きになることもあるということを描きたかった。私にとって愛とは、あらがうことのできない麻薬のようなものだ。
私の作品や私の人生でも女性たちが重要な役割を担ってきたが、彼女たちのお陰で、今の私がある。これはいつも言っていることだが、もう一度言うと、成功した男というのは女たちが作っているんだ。
私はコメディを作りたかった。そしてそれ以上にラブストーリーの陳腐なパターンを打破したかったんだ。インドはこの作品のキー・キャラクターのひとつだ。ずっと私は、インドに行くべきだと言われ続けてきた。私の哲学や世界に対する物の見方や前向きな態度、映画に盛り込んだものを見て彼らはそう言っていたのだろうが、やっと75歳にして、かの地を訪れた。思っていたとおりの国だった。世界中を何度か旅したことあるが、私にとってあそこが一番美しい国だった。何よりも貧富の格差があるのが気になったが、合理的なものと不合理なものが共存しているのがいい。素晴らしい出会いだった。もっと早い時期にインドのことを知っていたら、すべての作品をインドで撮影していたかもしれないと思ったくらいだ。
ジャンと仕事をしたことで、私は若い頃の自分に戻れた。二十代の自分を再体験できたんだ。まるでデビュー作を撮っている気分だった。ジャンはまるで子供で、私は何よりも子供好きだから、一緒に遊んいでたような感じだった。彼はプロジェクト全体と出演者たちに、リズムとウィットのセンスをもたらしてくれた。エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポルらも結束を固め、彼を盛りたててくれた。彼らはリスクを顧みず、自分たちの限界まで演じてくれたんだ。
彼らの演じたストーリーに真実味がある限り、私は「カット」と言わなかった。そう、「カット」と言ったのは、嘘っぽく感じた時だけだ。セットでも滅多に「カット」と言わなかった。これ以上は無理があると思った時でも、彼らは迫真の演技を続けていたんだよ。
彼らは監督である私を観客の1人に変えてしまった。毎日、私は監督として現場に入り、指示を出していたが、その日の終わりには自分の映画の観客になってしまっていた。彼らはこの作品を見る将来の観客のように、私を笑わせ、泣かせ、心を動かした。才能のある俳優たちというのは素晴らしい。私は大好きだ。7週間ずっと、生のエンターテインメントを見させてもらい、ラブストーリーのドキュメンタリーを撮っているような気持ちで彼らを撮影したんだ。
Q: 音楽について
CL この映画では、音楽も非常に重要な位置を占めている。映画音楽作曲家というジャンのキャラクターを通して、『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』では、幸運にも私が一緒に仕事をすることができた、すべての偉大な作曲家たちを称えている。この作品で喜びの再会を果たしたフランシス・レイはもとより、ミシェル・ルグランやクロード・ボリンもそうだ。私が彼らの音楽に魅了されたのは、知らず知らずのうちに体に染み込んでいたからだ。誰もどこで音楽が生まれたなんか知りようもない。音楽とは神自らの表現なんだよ。
監督・原案・脚本:クロード・ルルーシュ(『男と女』『愛と哀しみのボレロ』)
脚本協力:ヴァレリー・ペラン 音楽:フランシス・レイ(『男と女』『愛と哀しみのボレロ』)
出演:ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポル
2015年/フランス/シネスコ/5.1ch デジタル/114分/原題UN+UNE/字幕翻訳:松浦美奈
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本 配給:ファントム・フィルム
©2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinema
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