『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』

クロード・ルルーシュ (監督) 公式インタビュー
映画『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』について【2/2】

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2016年9月3日(土)より、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー!


『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』 『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』場面2
Q: 思いがけないカップル

CL  ジャンとエルザと一緒に映画を作りたかったが、私には2人が一緒にいる絵を描くことができなかった。キャスティングをする時に、いつも想像力が広がらないんだ。我々は常日頃、楽な方法を取りがちだが、本当に突然ひらめいたんだ。このカップルはかなり変わり者で、普通じゃないことが、すごくいいアイデアのように思えたわけだ。恋人紹介所(デート相手の紹介会社)は、共通の趣味を元に相手を紹介するが、それが原因でトラブルになるのかもしれない。共通の趣味だと、お互いに同じことをするから、退屈してしまう。だが相補性というのはすごく強い。ジャンとエルザの出会いも似たところがある。2人はかなり違っているからね。何もかもが不合理で、いつものように道理が通らないインドのような国で、映画の中での2人の唯一の共通点は、フランス人だということだけだ。
2人の関係が、カップルらしさや陳腐な決まりごとのすべてを壊すことは分かっていた。今日、巷にはラブストーリーが溢れ返っている。あらゆることがメディアに取り上げられ、語り尽くされているから、今風な関係においては、根本的にものの見方を変えるなんじゃないかな。今のカップルは、表面的なものが全てになっている。最初の段階がすごく重要なことになっているね。感じが良く見えるとか、声をかけやすいとかね。だがカップルを継続させるものは、最初に見たものじゃない。何もかもが隠れている。見た目だけのことなんて、すぐに飽きてしまう。ひと晩以上は続かないことだってあるんだ。
私はジャンとエルザと会って、彼らを知らねばと思って語り合った。これは極めて重要なことだ。私の作品に選ぶ俳優たちというのは、自分の人生に関わりを持ってきた人たちだ。友人だったり、恋人だったりね。映画に対して、私は愛か憎しみが必要だと思っている。愛情がある時に撮った映画はとてもよく撮れている。自分が愛するものを観客にも愛してほしいからだ。

Q: お互いを追い求める

CL  エルザとジャンと一緒に、我々は初めてディナーを共にした。食事中は本当にライブ・エンターテインメントだった。まるで自分の映画を見ているような気分だった。ディナーの席での2人の関係は、映画の中での彼らそのものだった。私の仕事は物事を観察することだ。好奇心を持ち、統合的に芸術作品を作り上げるのが監督の仕事だ。私は2人を観察した。持ち出す話の種を、2人がどのように話すかをじっくりと見ていた。そこで浮かんだのが、この光景を撮影したら…、どんなカップルにも経験のあるこの“イタチごっこ”を、観客は面白がるんじゃないかという思いだった。一方がもう1人からいつも逃げるんだが、それでいて相手のことをより愛している。我々がどちらかに加勢するまでその状態が続く。ジャンとエルザの見えない関係を撮っているのは楽しかった。そして、その2人が最終的には、どうにかくっつくことも想像できた。
アンナの役柄は、男のあらゆる悪い部分を持つこの見知らぬ男を魅了する。様々なことが彼女を悩ませかねないのだが、そのことがより魅力的に見えるんだ。相手はタフガイの生き残りのような男だ。そもそも彼は何よりも、自分のことと仕事のことしか考えていない。典型的な自己中心的な男だ。そんな彼がアンナに出会い、インドという土地柄が彼を変えていく。インドから帰ってきて変わらない人間はいないからね。あそこほど逆境を受け入れている場所はない。妬みというものがほとんどない土地だ。だから他の人間に目が行ってしまう。よくよく観察してみると、多くの魅力的な人々がいて、そして必要とされているのかが分かる。あの国は何が最も大事で尊いことなのかを教えてくれる。それはつまり度量の深さと正直さで、これが出会いを引き起こす背景なんだ。我々には運命なんて分からない。もし人生がチェスのように長く複雑なゲームだとするならば、我々は驚きに驚きを重ねながら成長するのかもしれない。男女の仲ほど興味深いものはない。この地上で最も美しい風景も単なるオマケにすぎない。素晴らしいラブストーリーは、どこででも起こり得る。内なる感情に目覚めるために、ガンジス川に入ったり、ヒマラヤ山脈に上る必要はないんだ。

『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』場面4
Q: 聖者アンマについて

CL  この映画で体験したあらゆる奇跡の中でも、アンマとの出会いは最高のものだ。周りの人たちを抱擁して、愛を振りまいている彼女の話を小耳にはさみ、素晴らしいアイデアだと思った。私は彼女が生まれた南インドのケーララに出向いた。彼女は毎日、数百人の人間を抱きしめているが、1人として同じ気持ちにはならない。それぞれが別々の人生を抱えてやって来るからね。私は数時間滞在して、彼女を見ながら、映画に収められないかと考えた。アンマには神々しさがある。私は人生で数千人と出会ってきたが、彼女は最も印象深い人の1人だ。側近を通じて映画にいただけないかと頼み、俳優たちと一緒にアンマが出演する許可を得た。彼女は俳優たちがいつ来るか知らなかった。ジャンとエルザは群衆に交じっていて、彼女は2人を他の人たちと同じように扱ったんだ。それまで彼女はどちらとも会ったことがなかったし、演技すらしなかった。私は彼女にもジャンにもエルザにも演技を求めなかった。まるでカメラ抜きで彼女に会いに来たというように、2人はアンマに会ったんだ。それはすごい光景だった。アンマと俳優たちからかなり離れた所にカメラを置き、長焦点の望遠レンズを使ってニュース映像のようなアップで撮影した。私はニュース記者としてキャリアをスタートさせたんだが、映画監督になってから、そのテクニックを使える機会を伺っていたんだよ。だから私は俳優だけをアンマのところに行かせた。何か起こるかもしれないと考えてね。
あの日、起きたことを見て、私はその後の脚本を書き直すことにした。順番に撮影していたから、そんなことが可能だった。アンマの出演したシークエンスは、その後に続くすべてのシーンを膨らませ、影響を与えた。私は観客に頭と心で大いなる旅を体験してほしかったんだ。人生は常に私の想像よりはるかに確かなものだ。そして俳優たちの演技は私の意図を超えており、脚本もはるかにいいものになった。

Q: 人生を謳歌することについて

CL 私が愛してやまないことが2つある。それは人生と映画だ。映画が私に人々が人生を謳歌できるようなものを作らせてくれる。この世の怖さを痛いほど分かっていても、私は世界を愛している。だから多くの人にも愛してほしいんだ。ネガティブなものがポジティブなものより、重要になってきている世の中に私たちは生きている。悪いニュースがいいニュースを凌駕している世の中だ。でも映画を1本作るたびに、どうしたら人々がこの世の中を、より好きになってくれるかを考えてきた。私は映画の持つ力が人の心を2時間で変えられると信じている。ちょうどアンマが30秒人を抱きしめることで、その人を変えられるようにね。中には文明社会を破壊しかねない映画もある。この世界を愛する私の思いが、映画を通して広がることを願っている。
私は人生を賭けて、俳優や脚本やカメラを開放するよう努めてきた。そしてこの映画には、50年間の私の思いを盛り込んだ。テクノロジーがそれを可能にしたんだ。この年になって世界チャンピオン戦のリングに返り咲くことができるとは思っていなかった。だが自分のデビュー作のように、存分に楽しんでこの映画を作ったことは確かだ。

1 2 J・デュジャルダン インタビュー

アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)
監督・原案・脚本:クロード・ルルーシュ(『男と女』『愛と哀しみのボレロ』)
脚本協力:ヴァレリー・ペラン 音楽:フランシス・レイ(『男と女』『愛と哀しみのボレロ』)
出演:ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポル 2015年/フランス/シネスコ/5.1ch デジタル/114分/原題UN+UNE/字幕翻訳:松浦美奈
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本 配給:ファントム・フィルム
©2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinema
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2016年9月3日(土)より、
Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー!

2016/08/23/18:12 | トラックバック (0)
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