吉倉 あおい (女優)
映画「ゆるせない、逢いたい」について
2013年11月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館 にて全国ロードショー
10代の男女の生まれたばかりの恋愛が、ふとしたすれ違いから“デートレイプ”という忌まわしい事件を招いて引き裂かれる。新鋭・金井純一監督の『ゆるせない、逢いたい』は、タイトルのとおりその被害者の少女の葛藤を描いていく作品であり、また日本では法律上できない被害者と加害者の「対話」への取り組みについて描こうということから発した作品ではあるが、感傷的な悲恋の物語でも、あまり語られないデリケートな事件そのものを取り上げる社会派映画でもなく、揺れ動く感情の綾と人と人とが向き合う姿をじっくりと追う、繊細で強靭なドラマとなった。混乱する心を抱えながら、自分を傷付けた男性への想いや娘を守ろうとする本能の塊のような母親とまっすぐ向き合うヒロインを演じたのは吉倉あおいさん。雑誌モデルや新進女優としてすでに同世代から高い人気を得ている吉倉さんにとって本作が初主演映画となるが、切望していた困難に立ち向かう女性の役を得て、完全にはつ実に同化し演じ切った見事な女優魂はお話からも感じられた。撮影時は役と同じ17歳ながら愛情の豊かさと毅然とした意志の強さを備えた吉倉さんの人間的魅力も映し出す本作を、ぜひスクリーンでご覧になってほしい。(取材:深谷直子)
――大変だったと思いますけど、どのシーンも全力を注いでいる感じで生き生きとしていますよね。初めて映画で主演されて、今までやっていたモデルやテレビドラマなどと映画の現場とでこういうところが違うというのはありましたか?
吉倉 『ゆるせない、逢いたい』が初めて深く関わる作品だったんですけど、独特のものがありましたね。順撮りというのもなかなかないと思いますし、「一撃!」という監督の一言で、どこまで続くんだろうというぐらい長回しでずっと撮っているということもありましたし。ドラマはやっぱりカット割りが多くて、こっちから狙ってあっちから狙ってというのがあるんですけど、そういう意味では映画ってカットがかかるまでが長いんだなあと思いましたね。
――同じ演技でもドラマとはリズムが全然違うんですね。これからも映画をやっていきたいなと思いますか?
吉倉 それは本当にやりたいです。また『ゆるせない、逢いたい』のように湧き出てくる感情を表現したいなって思いますね。私の中で特別な作品になったので、もっともっとこういう作品に参加させていただきたいなって思います。観るのもこの映画をきっかけに大好きになって、月に何本か観るようになって、観た映画は記録しているんですけど、気になったものは印を付けて、いつかまた観たいと思ったときにこの映画に戻ってこようと、そんなふうに意識して映画を観るようになりました。
――いろいろ吸収しているんですね。これから吉倉さんの幅広い演技を観るのも楽しみにしています。いろいろなお仕事をされていて、これは大事にしたいと吉倉さんの中で思っているのはどんなことですか?
吉倉 この映画であらためて思ったんですけど、「女性」ということにこだわっているみたいですね、自分で。モデルというのも女性としての魅力を伝えられる仕事だと思いますし、ドラマや映画では「女性が思うこと」を世の中の方に表現して伝えたいなと思いますね。
――女性の強さが表れた演技だと思っていましたが、吉倉さんの主体的な姿勢が表れているんだなとお話を聞いてとても納得しました。もう試写会は何度か行われていますが、観た方の反応も聞いたりしているんですか?
吉倉 みなさんすごくよく観てくださって優しく言葉をかけてくださいますね。あとは先日釜山国際映画祭にも出品されて、私は行かなかったんですけど帰国した監督たちに今日お会いして、「どうでしたか?」と訊いたら、「審査員の方たちも『主演二人の演技がよかった』と言ってくださったし、いろんな方に評価してもらっていたよ」ということをお聞きして。ちょっと私もまだ信じられなくて、帰ったら母と話したいなあと思っています。
――釜山に行けたらよかったですね。みなさんも吉倉さんにいろいろお話を訊いてみたかっただろうと思います。釜山でのこの作品の評判は本当によかったようで、星取表がネットに載っていたんですけど、みんな4点以上付けていたんですよ。
吉倉 そうなんですか? 感動です。日本での上映館が、東京では2館で公開になるということなので、何とかたくさんの方に伝えたいと思っていて。釜山国際映画祭というのはすごい機会なので、賞とかよりもたくさんのお客様に会場に入っていただいて観ていただくことをすごく願っていたんです。今日お話を聞いたら1000人入る会場が満席だったとのことだったので、ひとりひとりにご挨拶させていただきたいぐらい感謝の気持ちでいっぱいです。
――私もぜひ幅広い方に届くことを願っています。では最後にあらためてこれから作品を観る方へのメッセージをお願いします。
吉倉 デートレイプという社会問題を扱っている作品なので、そこに注目されることも多いんですけど、すごく繊細できれいな画で青春っていうものを撮っていただいたと思っています。あとは人はそれぞれ育ち方も感じ方も違って、愛情のかけ方も受け取り方も違うんですけど、愛情はどれも素敵なものだと思います。はつ実を支えてくれたのも愛情ですし、そんな日常にある愛情をあらためて感じていただけたらと思います。
( 2013年10月15日 恵比寿・スターダストプロモーションで 取材:深谷直子 )
監督・脚本・編集:金井純一
出演:吉倉あおい、柳楽優弥、新木優子、原扶貴子、中野圭、ダンカン、朝加真由美
製作:細野義朗 共同プロデューサー:坂本雅司 プロデューサー:加藤伸崇、古賀奏一郎
撮影:清村俊幸 照明:石川欣男 録音:間野 翼 助監督:ジョン ヒジリ
音楽:吉田トオル 主題歌:「ライン」 Salyu 作詞・作曲・編曲:小林武史
制作プロダクション:シネグリーオ 宣伝:ブラウニー デザイン:秋山京子 製作・配給:S・D・P
© S・D・P/2013「ゆるせない、逢いたい」