インタビュー
イヴァーノ・デ・マッテオ監督/『はじまりの街』

イヴァーノ・デ・マッテオ (監督)
映画『はじまりの街』について【3/4】

2017年10月28日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:常川拓也)

イヴァーノ・デ・マッテオ監督3 『はじまりの街』場面2
──DVそのものを描くというよりもその問題が家族に及ぼすその後の余波や影響をじっくり見つめていくような作品になっているかと思います。そのようにした意図をお教えください。

マッテオ 脚本を書く時、パートナーのヴァレンティーナと一緒に書いているので、私たちの脚本の中には女性の視点と男性の視点の両方が入っています。DVといっても肉体的な暴力だけでなく、心理的な暴力や経済的な暴力もあると思います。肉体的な暴力としては冒頭でお腹を殴られる場面や額の傷が出てきますが、実はそれよりも非常に厳しいのは心理的あるいは経済的な暴力ではないかと思います。経済的な暴力は、夫がアンナに向かって「これは俺の家だ。稼いでいるのは俺なんだ。稼いでいないお前には何もない」と言う最初のシーンで感じられます。そこで言っている言葉は、今回の映画を作るにあたって色々調査をしたのですが、裁判文書の中で女性が実際に夫から言われた言葉から取ってきたものです。また、経済的な力がないために非常に苦しい状況になってしまうというのも大きな暴力です。こういった被害を多くの女性が毎日のように実は受けているのだけども、それが必ずしもすべて表に出てくるわけではなく、告白できずにいる人も多い。日常的にそういったことが行われていることも伝えたい気持ちがありました。

──DVは世界的に大きな問題となっている社会的な問題だと思いますが、日本では孤児院に入らざるを得なくなる子どもの一番の原因はDVだと言われています。今回の映画では取り上げていませんが、イタリアでもそういう原因で施設に行ってしまう要因があるとは思います。調査した上で別の切り口で描こうと思われたのでしょうか。

マッテオ イタリアの場合は、子どもが親と切り離されるのは、親が麻薬中毒で一緒に暮らせないケースが最も多いです。麻薬の使用によって親が逮捕されてしまった時、祖父母や叔母さんが子どもを預かってくれれば運がよいですが、ただ往々にして家族にも問題があるので、家族では引き取られずに養護院に預けられることになります。そこで非常に難しい生活を送っていかなければいけない状況になり、これはイタリアでも大きな問題です。今回、色々と調査をしましたが、データからもDVというとイタリアでもその多くは父親から母親への暴力ですが、それを見てしまった子どもの多く、かなり高いパーセントが自分も乱暴な暴力を振るう大人になってしまうケースが統計的に出ています。本作でもヴァレリオはその後どうなるかわかりませんが、正しい道に戻って暴力的ではない普通の大人になってほしいという願いも込めています。また、そういった被害に遭う子どもの一番難しい年齢として、ヴァレリオを13歳という設定にしました。13歳というと、ある程度の意識や自覚はあるので大体のことはわかるけれども、難しい状況に十分に対峙できるほどまだ大人にはなっていない。スポンジのように見聞きしたものをどんどん吸収してしまい、そしてそれがどうしようもなくなって爆発してしまうケースになることも多く、非常に危うい年齢だと言えます。子どもにどういう反応をさせるかということに関しても小児心理学あるいは小児担当の心理士と相談してデータを集めたのですが、例えば最初に母親が暴力を振るわれるのを見て失禁してしまう場面や橋に腰かけて声もなく叫ぶ場面──あれは自殺願望というよりも誰かに助けを求めての必死の声だと思いますが──、母親に乱暴な言葉を吐く場面などは、暴力というよりも子どもにとってはSOSになっているのです。子どもというのは色々な形でSOSを出しています。それは言葉のSOSだけではありません。私自身にも子どもがいるので、親として思うのは、耳だけではなく、目や心でも子どもの声を聞いてやるようにしないといけないということです。わかった時には遅すぎるということにならないように、しっかり子どもの声を耳だけでなく聞かなくてはいけないと思います。

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はじまりの街 (2016年/イタリア=フランス/107 分/5.1ch/シネスコ)
監督:イヴァーノ・デ・マッテオ 「幸せのバランス」「われらの子供たち」
出演:マルゲリータ・ブイ「はじまりは5つ星ホテルから」「母よ、」、ヴァレリア・ゴリーノ「レインマン」「人間の値打ち」、アンドレア・ピットリーノ、ブリュノ・トデスキーニ
原案:ヴァレンティーナ・フェルラン 脚本:ヴァレンティーナ・フェルラン、イヴァーノ・デ・マッテオ
撮影:ドゥチオ・チマッティ 編集:マルコ・スポレンティーニ 美術:アレッサンドロ・マラッツォ
衣装:ヴァレンティーナ・タヴィアーニ 音楽:フランチェスコ・チェラージ
原題:LA VITA POSSIBILE/英題:A POSSIBLE LIFE 配給:クレストインターナショナル
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2017年10月28日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー

2017/10/18/19:43 | トラックバック (0)
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