インタビュー
上西 雄大(監督・主演)『ひとくず』

上西 雄大 (監督・主演)
映画『ひとくず』について【3/4】

2020年3月14日(土)より 渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

上西 雄大監督画像2
――この映画はすでに多くの映画祭で俳優賞を受賞しており、ミラノ国際映画祭では作品賞も獲られましたね。

上西 そうです。最高賞のベスト・フィルム賞をいただいて、本当にビックリしたんですけど。

――演技だけではなくストーリーやテーマも世界に通じるものだということですよね。どんな反応をいただきましたか?

上西 記者会見などでは思いのほか虐待についての質問は少なくて、映画として観てもらえている手応えがありました。日本はわりと虐待について質問されたり話を求められたりしますけど、海外の映画祭で僕や古川さんが言われたのは、芝居に対するお褒めの言葉が多かったです。

――そうですよね。私も事前に虐待がテーマの映画だということを知っていたので、社会派の重い映画かな……と思いながら観始めましたが、どんどんリアルな演技に引き込まれていきました。

上西 ありがとうございます。僕は監督である前に役者なので、監督として褒められるよりも芝居を褒められる方が喜びで、賞をいただくときも監督賞よりも主演男優賞の方が断然嬉しいし、芝居のことをそういうふうに言っていただくと本当に嬉しいですね。

――胸を打つシーンが多いですが、振り切れた演技も本当に見事で。凛のキャットファイトのような取っ組み合い、すごかったですね。

上西 男を取られた勢いだから、ああいうタイプの女性はめちゃくちゃ切れると思うんですよね。一方のスナックの女は虐待に対する正義から闘っているわけで、どっちも引かないからあれぐらいになるだろうなと。カネマサはカネマサで、そこに口をはさむことはしないだろうし、他のお客さんに迷惑だから止めようなんてことも考えないだろうし、ああいう感じで競艇に行くだろうなと(笑)。別に笑わそうというシーンではなくて、こういう人間だったらこうするだろうな……と思ってやると、劇場では本当にみなさん笑ってくれますね。

――もうひとつ印象に残ったのは、カネマサと鞠と凛の3人で観覧車に乗るシーンです。ずっと同じことを言い合って笑っている、絵に描いたような幸せな光景で(笑)。これは狙っているのでは?

上西 あそこは演じながら本当に笑けてきて。凛が「なんだよその笑いは!」って言っているんですけど、あれはアドリブで出てしまっているんですね。俺がずっと笑ってるから(笑)。

――(笑)。そうなんですか。鞠役の小南希良梨ちゃんも本当に楽しそうでした。

『ひとくず』場面画像5(古川藍、小南希良梨) 『ひとくず』場面画像6(古川藍、小南希良梨) 上西 面白かったですね。僕は希良梨ちゃんを虐待を受けているような感覚に至らせたくなかったんですね。役者というのは疑似的に役柄に身を置いて芝居をするものですが、子役には疑似的にでも虐待を感じさせたくなかった。それが虐待になるなと思ったから、そういう演出は一切せず、「ここでは誰々を見てこういうふうに思ってください」とシーンシーンで指示を出し、それで組み立てていきました。それを希良梨ちゃんはすごく理解してくれて、言われたことを素直に表現してくれました。観覧車のシーンでは、本当に屈託なく普通に笑っていたと思います。

――学校の先生が鞠に救いの手を差し伸べようとするシーンもありましたが、先ほどのお話にもあったように、ああいうところで子供は事実を隠してしまうんですよね。

上西 あそこは希良梨ちゃんの顔だけを撮って表現したんですが、結局子供は他人をあてにしていない。彼らが来たことで母親はストレスを感じるし、母親の男に関わればまた新たな虐待につながるし。そういう子供の心情を見てほしいと思って表情だけを抜いたんです。あそこも演出で「今から3人順番に話すから、その人の顔を見て、気持ちは早く帰ってほしいと思って」と。「先生が心配してくれるのは嬉しいけど早く帰ってほしい、おばさんは優しそうに見えるけど早く帰ってほしい。男の人は『嫌い!』って思って」と説明して、希良梨ちゃんがお芝居するのを表情だけ撮って編集するとああいうふうになるんです。台詞も、この単語を聞いたらビックリするとか、この単語は嫌な気持ちになるとかいうように、1個1個解体して。これを、状況を説明して「この人が来たら何されるかわからないから怖いで!」みたいに追い詰めると、それは虐待になってしまうので。子供の自由な表情を抜き取る演出もあるでしょうけど、この映画に関してはそれはしませんでした。希良梨ちゃんはちゃんと理解して表現してくれました。本当に頭のいいしっかりした女優さんだなあと。映画祭でのコメントは僕よりずっとしっかりしています。主演女優賞を2つ獲っていますからね。国内の映画祭だと彼女がいちばん賞をもらえて、海外では僕や古川さん、あとカネマサの母親役の徳竹未夏さんと大人が評価されて、そこはちょっと視点が違うのかなと思いますね。

――本当に天才子役ですね。監督の演出も素晴らしいです。子役の俳優には的確なお芝居ができる指示を与えて。大人の俳優では?

上西 大人だったらどんどん追い込んで。古川さんなんて実際に髪の毛は引っ張られるし、もうひどい目に遭いますよ(苦笑)。大人はそういう手立てでやっています。

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ひとくず (2019/STEREO/日本/DCP/117分)
出演:上西雄大,小南希良梨,古川藍,徳竹未夏,城明男,税所篤彦,川合敏之,椿鮒子,空田浩志,中里ひろみ,
谷しげる,星川桂,美咲,西川莉子,中谷昌代,上村ゆきえ,工藤俊作,堀田眞三,飯島大介,田中要次,木下ほうか
監督・脚本・編集・プロデューサー:上西雄大
エグゼクティブ・プロデューサー:平野剛,中田徹 監修:楠部知子 撮影・照明:前田智広,川路哲也
録音:仁山裕斗,中谷昌代 音楽プロデューサー:Na Seung Chul 主題歌:吉村ビソー「Hitokuzu」
制作:テンアンツ 配給・宣伝:渋谷プロダクション
協賛:㈱リゾートライフ,ドリームクロス㈱,串カツだるま,カンサイ建装工業㈱,高橋鋭一,
平野マタニティクリニック,㈱エフアンドエム,㈱中島食品,ALEMO㈱,㈱USK,㈱ラフト
© YUDAI UENISHI
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2020年3月14日(土)より 渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

2020/03/09/18:33 | トラックバック (0)
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