松浦 慎一郎 (俳優) 映画『かぞくへ』について【3/6】
2018年3月16日(金)まで20:55~ユーロスペースにて上映中、3月17日(土)18:00よりユーロライブにて一夜限りの追加上映決定。(チケット受付は3階ユーロスペースにて)、横浜シネマリンでも上映中。
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)
――おお、素晴らしい俳優さんですね。お芝居が始まった途端に旭の友達として自然に振る舞えていると。
松浦 始める前は「よろしくお願いします」という感じなんですけど、始まったらスッと役に入っている。普段の生活から役になり切るっていう俳優もいますけど、僕もどちらかというとそっちタイプなので、その感じも似ていたんでしょうね。つい最近まで梅田さんには敬語で喋っていて、ずっとお互い「松浦さん」「梅田さん」って呼んでいました。最近向こうが「松ちゃんって呼んでいい?」って言ってきて、「いいですよ」って言ったら「いえ、敬語もやめませんか?」みたいに言われて。「そうですね、映画も公開になるし、や、やめようか! じゃあ俺も梅ちゃんって呼んでいい?」、「いいですよ」って、敬語になってるじゃん!みたいな(笑)。
――ぎこちない(笑)。でもお二人とも礼儀正しい感じですよね。梅田さんご本人に会って洋人役とのギャップにすごく驚いたんですが、役のために外見も大変身させていたんですね。
松浦 僕の友達がモデルなので、方言指導のときに僕に「どういう感じの人ですか?」と訊いてきて、裏話まで説明しました。写真も見たいと言われて、友達に「今のお前の画像を送ってくれん?」と頼んだら、魚持ってタバコ吸って、(強面を作って)こんな顔した写真が送られてきて。
――ワルそう(笑)。
松浦 そうそう。それを見て梅田さんが「おおっ! 俺も髪を切って染めようかなあ。眉毛も薄くして」とか言って。そんな感じでしたね。
――梅田さんとはそうやって撮影までの間に関係ができていたのだと思いますけど、佳織役の遠藤さんとはいかがだったのでしょうか?
梅田誠弘 春本雄二郎監督 松浦慎一郎松浦 遠藤さんとはリハは1日か2日ぐらいやったかな……? あんまりやっていないですね。それがスケジュールの問題なのか、監督の意図的なものだったのかはわからないんですけど。
――意図が働いていたのかもしれないですよね。旭にとって佳織との付き合いは洋人と比べたら浅いものなので。
松浦 距離感がありますもんね、すごく。佳織との距離感は難しかったです。フィクションの部分でもありますし。だから自分の中で裏設定をかなり考えました。どうして佳織に惚れたのか?とか、どうして佳織が自分についてきてくれるんだろう?とか。洋人との距離感との差を考えたり。旭にはどこかで佳織に対して許していないところがありますよね。そういう裏設定は自分で考えてやっていました。
――ちなみに旭と佳織の出会いはどんなものだったと?
松浦 僕の想像では、ジムの会員のおばちゃんとかに「旭くん彼女作りなよ」って紹介されて出会ったんだろうと思います。で、「めっちゃきれいな人だなあ。でも堅そう」とか思いながら喋っているうちに、最初ツンツンしていた佳織が旭の天然な間違いとかにフッと笑ってしまって、「あっ……」ってなって(笑)。向こうもそうだったらいいですけどね。すごいしっかり者だけど、この人には気が許せるな、って思ってくれてたら。で、旭は多分女性経験がほとんどなかったと思います(笑)。佳織が初めてのひとぐらいな。そういうことをいろいろ考えて。
――初めての彼女とあの狭い部屋で暮らすというのもいきなりディープですよね(苦笑)。息苦しい大変な生活をしているなあと。
松浦 ちょっと僕も無理ですね。芝居も佳織はずっと上から話しかけてくるんですよ。佳織は椅子に座っていて、僕は布団の上に座っていて。僕の芝居はずっと上向いてやっていて「佳織いつもめっちゃ高圧的だなあ」って(苦笑)。それは演出の意図でもあるんですよ。佳織が見下ろして旭が見上げて、そういう位置関係で二人の距離感を出していると監督が言っていました。
――なるほど。春本監督の演出はいかがでしたか?
松浦 基本はすごく俳優に任せてくれるんです。「ここはこうしたいです」と言うと、ダメなものはダメって言いますけど基本受け入れてくれて、考えて「じゃあこうしましょう」って言ってくれます。感情も上げ過ぎたら「次のシーンがこうなるのでここは抑えて」とか、「あそこのシーンがあるから違うテンションで」とかいうふうに、役者の芝居を見て考えたり判断してくれるし、説明も抽象的な表現を使わないで具体的に言ってくれるので、とてもやりやすかったですね。「ああ、そうか」って納得してスッと演技ができる。台本も裏をちゃんと考えて書いているので頼もしいです。それだけ構築してあるとこっちもぶつかれる。
――名監督ですね。初めてとは思えないです。松浦さんのほうではどんなことを考えながら旭を演じましたか?
松浦 旭は口下手で、「ごめん」とか「ありがとう」とか一言言えばいいのにそれをしない。でも旭のああいう気持ちはわかります。昔は僕もそうでした。九州男児なので「わかってくれよ。言わなくてもわかるだろう?」と、そういうタイプでした。で、やっぱり旭は佳織も大事なんですけど、親友も大事だし、全部取ろうとして不器用に立ち回っちゃう人間なので、優柔不断さだとか不器用さが出るように、お芝居も思考もそこに尽くしました。
出演:松浦慎一郎,梅田誠弘,遠藤祐美,三溝浩二,おのさなえ,下垣まみ,瀧マキ,森本のぶ
監督・脚本・編集:春本雄二郎
撮影:野口健司 照明:中西克之 録音・整音:小黒健太郎 制作:福田智穂 助監督:浅見佳史
音楽:高木聡 プロデューサー:深谷好隆,春本雄二郎,南 陽 海外セールス:植山英美(ARTicleFilms)
配給:『かぞくへ』製作委員会 配給協力:コトプロダクション ©『かぞくへ』製作委員会
公式サイト 公式twitter 公式Facebook