松浦 慎一郎 (俳優) 映画『かぞくへ』について【2/6】
2018年3月16日(金)まで20:55~ユーロスペースにて上映中、3月17日(土)18:00よりユーロライブにて一夜限りの追加上映決定。(チケット受付は3階ユーロスペースにて)、横浜シネマリンでも上映中。
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――(笑)。生々しいお話をありがとうございました。そういうお話を監督が脚本にしていく上では、松浦さんもかなりお手伝いをされたんでしょうか?
松浦 はい、監督は「このときはどうでしたか?」と取材をしながら書いていきますし、あとは方言ですね。「こういうときはどう言いますか?」という相談を受けながら。あと完成したものを読んで意見を出したり、そういうやり取りはかなりしましたね。
――監督は遠藤祐美さんにもいろいろ意見を出してもらったそうですね。
松浦 そうですね。佳織パートは完全にフィクションなので、僕はそちらにはノータッチでした。で、脚本を読んで「どんどん佳織パートが構築されていってるな」と感じていたんですけど、あとで遠藤さんが協力していたと聞いて「そうなんだ」って。あとは監督の実話を入れつつ。劇中で佳織が旭に「何か言いなさいよ!」って飾りをぶつけるシーンは監督の実体験で、監督は中身の入った1リットルのお茶パックを投げられたそうです(笑)。
――本当に等身大の映画なんですね(笑)。完成した脚本を読んだときはどう思いましたか?
松浦 読んだときに「ドラマを描いているホンだな、面白いな」とは思ったんですけど、自分が実際に経験していることなので、他の人がこれを観たときにどう思うんだろうな?という疑問があったし、やっぱり客観視がなかなかできなくて。ホンの段階ではそんな感じでしたね。
――実際の事件も大変でしたけど、映画も葛藤があるとても苦しいお話になっていて、これを演じるのもまた大変なことですよね。
松浦 そうですね、素でできると思いきや、素ではできなかったです。監督には「そのままでいい」と言われて、そのままやってはいるんですけど、これは旭ですし、僕は3年前にこの出来事を経験し終わって、ひとまわり人間ができていますし。だから自分そのままというよりは、やはり「旭」という役を演じていたなと、映画を観て思いますね。
――では映画を観るときはもう客観視できている感じなんですね。
松浦 そうですね、ずいぶん時間も経ちますし、仕事もちゃんとあるので「ああ、あのとき大変だったなあ……」みたいな(笑)。やっぱりお金って大事ですね。本当にあのころは心が狭かったと思います。
――演技する上ではリハーサルをかなりされたということですね。
松浦 そうですね、喜多さんを追い詰めるシーンだとか、洋人との動きのあるシーンはかなりリハーサルをしました。ラストはリハーサルなしで臨みました。
――洋人役の梅田(誠弘)さんには五島弁の方言指導もされたんですよね。
松浦 はい、でも1日でできちゃいました。梅田さんはすごいですね。オーディションでもドンピシャでした。書類の段階ではいちばんなかったんです。写真もスーツ着てて全然洋人のイメージじゃなくて。でもお芝居したときの構え方とか空気とか、あと方言も結構練習してきていて。『悪人』(10)という映画は下五島で撮っているんですけど、そのDVDを家でずっと流していたらしいです。イントネーションのニュアンスが本当に似てて、「あれ、五島出身ですか?」と訊いたらそう言っていました。
――勉強熱心ですね。本当に地元の人になり切っていました。
松浦 お芝居もずば抜けていました。オーディションでは冒頭の、旭がポテトフライを持ち、あとお互いコーヒーを持って歩く二人芝居をやったんですけど、やる前に監督と「多分誰もやらないと思うけど、誰か芝居しながらポテトフライを食べたらすごいよね。これだけ親しい仲だったら、旭のポテトフライだけど取って食べるよね」と話していたんです。実際はやっぱり台詞のやり取りがすごく多いので、みんなそんなことはしないんです。でも梅田さんだけ芝居しながらガサガサっと取って食べて。「うわっ、この人やった!」って。シビれました。絶対この人とやりたいって。梅田さんとの出会いは宝ですね。
出演:松浦慎一郎,梅田誠弘,遠藤祐美,三溝浩二,おのさなえ,下垣まみ,瀧マキ,森本のぶ
監督・脚本・編集:春本雄二郎
撮影:野口健司 照明:中西克之 録音・整音:小黒健太郎 制作:福田智穂 助監督:浅見佳史
音楽:高木聡 プロデューサー:深谷好隆,春本雄二郎,南 陽 海外セールス:植山英美(ARTicleFilms)
配給:『かぞくへ』製作委員会 配給協力:コトプロダクション ©『かぞくへ』製作委員会
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