ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にノミネートされている「珈琲時光」に出演している一青窈、
浅野忠信、侯孝賢監督が、9日ヴェネチア入りし、映画祭に望む心境を語った。
ヴェネチア映画祭には、侯監督は、グランプリを受賞した「悲情城市」以来15年ぶりの参加、一青窈は映画初出演にして初参加、浅野忠信は、
昨年「地球で最後のふたり」でコントロコレンテ部門主演男優賞を受賞し、2年連続の参加となる。
正式上映は、翌日10日現地時間22時に行われる予定。
Q:15年ぶりのヴェネチアはいかがですか?
ホウ:なにしろ15年前のことなので、ここにくるまで思い出せなかったが、
ボートで船着場に着いたときに、すべてを思い出しました。それくらい変わっていません。ヴェネチアはきっと変わらない街だと思います。
沈まないだけでも嬉しいです。
Q:監督自身は変わりましたか?
ホウ:変わりました。15年前に「悲情城市」で招いていただいてから、15年間も経ったのですから。
でも15年前と違っているのは、映画祭や映画が、自分にとってどういうものだろうという考え方がとても変わりました。
Q:一青さんのヴェネチアの印象はどうですか?
一青:光が綺麗な街だと思います。少し周りを歩いていたら、
ライオンのような金獅子の像がたくさん並んでいましたね。
Q:二人を起用してどうでした?
ホウ:僕たち3人はとても似ているでしょう?
インスピレーションみたいなものが合っていてOKだったらそれでいいでしょう。
浅野さんは、とても有名ですが、いつも初心者のような白紙のような人です。毎日が新しい人という特性を持っている人です。一青さんは、
今回が本当に初めての映画でしたが、自分に自身を持っている人、人のことを考える余裕のある人、好奇心が旺盛な人だと思います。
彼女自身がこの映画に出たいと思ってくれなかったら、とても忙しい人だったし、無理だったのではないかと思います。
Q:ホウ監督との仕事はどうでしたか?
浅野:監督と初めて仕事をして、最初は監督の撮影スタイルを知らなかったので、
驚いたこともあったのですが、慣れてくるにつれてすごく面白くって、やってもやってもやり足りない感じがしました。
これからもチャンスがあれば、また一緒に仕事をしたいです。
ホウ:撮影が始まる前に、浅野さんを訪ねたことがありました。ギターを持って、
パソコンで絵を描いていました。それを見て、トニー・レオンがいつも本を見ていたのを思い出しました。その時彼が描いていたのが、
大都会に蜘蛛が垂れ下がっている抽象的なすばらしい絵でした。それで僕は、この映画のためにも絵を描いてくれないか、
君は電車マニアの役だから、電車の絵を描いてくれないかと頼み、すばらしい絵を描いてくれたのです。しかも彼は、
自分の役柄をすべて咀嚼してあの絵を描いたのがよくわかりました。
一青:お父さんとかお母さんがやってくれるような、家族のような雰囲気で撮影できました。毎朝
「ご飯ちゃんと食べた?」とか「ちゃんと寝れた?」と心配してくれたから、リラックスしてできたと思います。
ホウ:僕は、生活の瑣末な行動を見ていて、後は俳優さんに自由に演じてほしいと思いました。
撮影を終わって思うのは、日本映画を撮りたいということです。非常に難しいことだと思うのですが、今回はチャレンジしてみたかったのです。
しかも、今回は小津さんというテーマがあったので、非常に難しかったです。
そういう機会も世界的にもないことですからチャレンジしてみたかったのですが、難しい撮影でした。またやりましょうね。
この映画を撮ってみて、小津さんのスタイルや小津さんの考えていたことが、以前よりも理解できるようになりました。しかも、鏡のように、
小津さんを通して僕自身を見ていました。
浅野:撮影をしていたというより、監督を通じて新しい友達を紹介されたような感じでした。
Q:正式上映にはタキシードで正装する予定ですか?
ホウ:それが規則なので、従うのが礼儀だと思います。だから、ネクタイをしていくつもりです。
Q:一青さんは、ゴージャスにする予定ですか?
一青:そんなにゴージャスではないです。特にブランドにもこだわっていないです。
写真:(c)Kazuko Wakakayama