冨永 昌敬( 映画監督 )
映画『乱暴と待機』について
テアトル新宿他全国にて絶賛公開中!!
本谷有希子は演劇界と文学界の両方で注目を集める才能で、映画化作品に「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」があるが、「乱暴と待機」が映画化され公開中である。「覗くこと」と「覗かせること」というという歪んだ愛情表現でしか愛を表現できない男と女と、一組の夫婦の奇妙な関係を描き、浅野忠信、美波、小池栄子、山田孝之の4人が濃密なアンサンブルを見せてくれる。特に浅野忠信の怪演は必見であり、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の監督を務めた鶴巻和哉氏がメインビジュアルのイラストを担当したのも話題である。
監督は「パビリオン山椒魚」「パンドラの匣」などの異才である冨永昌敬。その冨永監督に話しをうかがった。(取材:わたなべりんたろう)
冨永 昌敬 ( 映画監督 )
1975年、愛媛県生まれ。 日本大学芸術学部映画学科卒業後、卒業制作作品である「ドルメン」や短編シリーズ「亀虫」で注目を集める。作品に「シャーリー・テンプル・ジャポン part2」、「パビリオン山椒魚」、「コンナオトナノオンナノコ」、「シャーリーの好色人生と転落人生」、「パンドラの匣」があり新作「庭にお願い」が控える。
<STORY>
覗く男と覗かせる女と、なんやかんやで巻き込まれた夫婦の哀しくも可笑しい、ある意味ラブファンタジー。
木造平屋建てが連なる市営住宅。
“兄妹”でもないのに、2段ベッドが据えられた狭い部屋で暮らす英則と奈々瀬。
その近所に引っ越してきた番上と妊娠中の妻・あずさ。
挙動不審な奈々瀬に興味を持った番上は、言葉巧みに奈々瀬を誘い、乱れる。
夫と奈々瀬の浮気現場を見つけたあずさは、包丁を片手に暴れる。
人に嫌われないように怯えて暮らす奈々瀬は、今日もスウェット姿で“お兄ちゃん”が“復讐”を思いつくのを待つ。
毎夜、天井裏から奈々瀬の姿を覗きながら、英則は“この世で一番凄い復讐”の機会をうかがう。 “覗く・覗かせる”関係に変化が訪れたとき、英則と奈々瀬は語る。
……俺と離れたくないか?
……めんどくさくても大丈夫、って言われたかったですよあたしは!
二人が見つけた“絆”とは――。
――作品を面白く見ました。一つの部屋をメインにした限定空間ものとも言える作品でしたが、その点はいかがだったでしょうか?
冨永 密室ものというか、その部屋で奇妙な4人の人間関係を愛憎含めて描いています。
――だからこそ、キーになるのが美術だと思いましたが、実際、安宅紀史氏の美術が印象的でした。大きい作品から「ランニング・オン・エンプティ」のような小さい作品まで幅広く手掛けている方ですね。
冨永 安宅さんの仕事は良かったですね。いちいち飾りの量が多くて圧倒されるんですよ。
――過剰にものが置いてありまよね。
冨永 そのゴチャゴチャした感じが、このゴチャゴチャした人間関係にいいんです。
――初めて一緒に仕事した方でしょうか?
冨永 そうですね。「南極料理人」を観て、安宅さんの美術がいいと思ったんですよね。あの作品も限定空間ものですけど、美術が登場人物の性格、作品の内容を語っているんですよね。安宅さんは共通の知り合いのスタッフのすすめもあって今回、一緒に仕事させてもらったんですが、良い仕事をしていただきました。
――プロダクションノートを読むと、なかなかタイトな日程で予算もそれほど多くはなかったように見受けられましたが、現場はどうだったのでしょうか?
冨永 タイトではありましたね。ただ、特に苦しかったとかそんなことはなく、スケジュール通りには撮れました。小池栄子さんが、撮影と同じ時期に舞台をやっていたので、大変だったのはその調整ぐらいです。
――窓を割って自転車を家の中に投げ込むシーンがありましたが、あのシーンは一つのキーになっていると思いました。
冨永 そうですね。あそこで人物の動き、心の動きも含めてですが動き出すようなところがあります。あのシーンは本当の窓ガラスを割っていて、一発撮りでしたがうまくいきましたね。
――監督からみて、大変だったシーンはどこでしょうか?
冨永 屋根裏からの視点の描写ですね。二段ベッドがあって、天井から下のベッドを見ているので、簡単な合成を使いました。ロケ撮影なので天井までの距離もあまりないので、カメラを置くポイントを作るのも少し大変でしたね。
――原作をアレンジしています。原作にない冒頭のシーンが良かったです。
冨永 冒頭の車での引越しシーンは、車の中から外を撮ったカットをずっと見せているのですが、開放的な空間から狭い住宅に迷い込んでしまう感じを出したかったので。
――最後だと、冨永さんは1年ほど前の「フライデー」に人物伝のように連載記事が載っていたのが印象的でした。あれはどういう経緯だったのでしょうか?
冨永 あの記事は「今注目の若い人々」のようなテーマの枠だったと思うのですが、「自分でいいのかな」と思いましたね。内容としては、実像よりもかっこいい生き方みたいに紹介されていましたが、あの種の雑誌だと妙な反響があって、「フライデー」に載ったというと、「何事だ」と誤解されたりもしましたけど、それも面白かったですね。
――今日はありがとうございました。
取材:わたなべりんたろう
- 監督:佐藤央、冨永昌敬
- 出演:福津屋兼蔵, 夏生さち, 平沢里菜子, 杉山彦々, 宮田亜紀
- 発売日:2010-09-03
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- 監督:冨永昌敬
- 出演:染谷将太, 川上未映子, 仲里依紗, 窪塚洋介, ふかわりょう
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