昨年はご愛読いただきましてありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い致します。(INTRO編集部)
「硫黄島からの手紙」
「父親たちの星条旗」
「任侠秘録人間狩り」
「太陽」
「40歳の童貞男」
「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」
「Passion Maniacs マニアの受難」
「おじさん天国」
「刑事どん亀(TVドラマ)」
奇をてらうでもなく、 かといって王道と呼ぶにはネジのはずれた作品が並んだような気がして、ああ、この閉塞感に苛立つ人はオレだけじゃないのかなと、 過度のストレスに起因するらしき胸部の痛みと手の平の発疹への恐怖感をやわらげてくれた映画たちです。感謝してます。
ベスト1は、「007/カジノ・ロワイヤル」。「女王陛下の007」「ユア・アイズ・オンリー」「消されたライセンス」
とシリーズの恒例行事的な揺り返しに久々に遭遇し、感慨深いです。まさに、明日のために、ですね。身にしみるストイックさに乾杯。
「任侠秘録人間狩り」は東映魂伝道者としての作品ではなく、名著“ヘイ・ワイルド・ターキーメン”の、“ヤボテンとマシュマロ”
の杉作氏の作品として帰結していたことに高揚を覚えました。「40歳の童貞男」は思ったよりも話題になりませんでしたが、
これをさらりと受け止め、楽しむには更なる老成が世間に必要なのでしょうか。ガンバレ、日本。「おじさん天国」
は近頃ご贔屓の幸薄風美女・藍山みなみの幸福そうな姿に落涙。
「刑事どん亀(TV)」はナンダカンダ抗えない西田敏行の手練手管が堪能できるだけで、私にはアリです。
オマケ:今年のぐっと来たパッケージ物。
CD 「殺しのエージェント 完全版(輸入盤)」ラロ・シフリン
「泳ぐ人」マーヴィン・ハムリッシュ
DVD「特捜最前線」BEST SELECTION BOX
「007シリーズ」アルティメット・
エディション各種
「Ambivalence 松田優作ALIVE」
ムック本「東映ヒーロー悪役列伝」
…さて、「カ※チ※イ※映画の文※論」という本が出てますが、どなたかお読みになりました? 公の場で素直に思ったことを書くと品のない文章を書きかねないので遠慮しておきますが、 諸々喋りたいことがあるのにわかってくれる人がいなくて泣いています。このタイトルにピンと来た方、えがったら一報ください。
クローネンバーグの新境地にして集大成。暴力は快楽である、というテーマを究極的に描いた意味では、『時計じかけのオレンジ』 に匹敵する。
『プロデューサーズ』
あまりの楽しさに5回も映画館に足を運んでしまった。メル・ブルックス、しばらく姿を見ないと思ってたけど、
こんな素敵な仕事をしてたんだね。
『マッチポイント』
本当は『僕のニューヨークライフ』と併せて入れたかった。どちらも奔放な女に振り回される男の愚かしさをアイロニカルに描いたウディ・
アレンの真骨頂。スカーレット・ヨハンソン、エロ過ぎ。
『グエムル 漢江の怪物』
上映中ずっと泣いてた。やっぱりポン・ジュノはわかってらっしゃる。
ついにというか、やっとというか、デ・パルマがエルロイに挑戦。『LAコンフィデンシャル』 みたいな小手先芸とは比べ物にならない熟練の技を見せつけた。さらに、ウィリアム・フィンレイ登場で感動5割増。
『卍』
井口昇の天才に関しては、今さら僕ごときが語るまでもないだろう。楳図漫画の破綻した魅力をいささかも損ねることなく映像化した
『猫目小僧』、70年代ズベ公映画を正しく継承した『おいら女蛮』、いずれも天才ならではの大傑作だが、
ここでは谷崎文学の変態性に初めて真正面から取り組み、奇跡のようなコラボレーションを見せた本作を推す。
『闇打つ心臓』
青春の終焉と復活を描くことで、ヌーヴェルヴァーグの伝統に立ち返った記念碑的な一作。いまの日本映画界に長崎俊一がいるということは、
なんて幸福なんだろう。
『ヨコハマメリー』
ハマの伝説的娼婦“港のメリー”をめぐる物語であると同時に、魂のシャンソン歌手・永登元次郎の最期の記録でもある。
シャノアールでの絶唱は、いままで聴いたどの「マイ・ウェイ」よりも心に沁みた。
『紀子の食卓』
テーマや手法を超越し、現代を生き続けることに対する根源的不安を表現し得たのは、今年この作品だけだった。
『夜のピクニック』
あまり良い評判を聞かなかったが、思春期の少年少女の瞬間的なきらめきを画面に定着させることに成功した秀作。
2006年ベスト5(順位ではなく、公開順)
1:「天空の草原のナンサ」
「○丁目の夕日」に激怒した方にこそ、おすすめ。
さんざ思わせぶりな仕掛けをしといた割にチンケな「秘密」だったが、凝りに凝った展開と禁忌チックな官能美がストライクゾーンなので。 ケヴィン・ベーコンとコリン・ファースがさすがに巧かった。
3:「プルートで朝食を」
潔い人物は大好き。本当の勇気、本当のプライドって、こういうこと。
変態的な美味しさに脳味噌が静かに侵食される。妙にあとをひくのよ。
5:「マイアミ・バイス」
「M:i:Ⅲ」も「あるいは裏切りという名の犬」も良かったけど、まるで期待してなかった分、得した感覚。コリン・
ファレルのエロ可愛さとハードなアクションがすげえ。
ワースト1は「かもめ食堂」
すみません聞いていいですかこれをわざわざ「映画」に撮る必要がどこにあったのかわかりません戦略見え見えの学芸会。
2. ホテル・ルワンダ
3. ブロークバック・マウンテン
4. ダーウィンの悪夢
5. タブロイド
6. プルートで朝食を
7. 博士の愛した数式
8. 美しき運命の傷痕
9. 単騎、千里を走る
10. ソウ3
「キングコング」 は昨年1位に選んだので除外。「ホテル・ルワンダ」については、優れた映画の公開に手間取る日本の現状に苦言を呈したいため、 1位にするべきだったかと反省。 ただ、「ヒストリー…」のクローネンバーグには今までとは違った魅力を感じたので、あえて選出。 無駄な動きがなく美しい殺人シーンは、グロテスクに見えず印象深い。「ダーウィン…」は年末公開だが、 後進国の悲劇に日本も負うべき罪があるとわかるドキュメンタリーなので今後ぜひ観ていただきたい作品。「博士…」は日本語が美しく、 映像も凛としていたので好感が持てた。また、「単騎…」は製作ドキュメンタリーや、撮影の行われた村が沈んでしまう事実を知れば、 感じ入る部分の多い作品であった。以上、駆け足で失礼!
2,明日へのチケット
3,クラッシュ
4,MI3
5,ヒストリー・オブ・バイオレンス
『サラバンド』は、
ベルイマンの最終作とかそういったファン心理的な部分を差し引いても色々な意味で衝撃的な作品。わけてもメインプロットに、
「カラマーゾフの兄弟」を髣髴させる「一人の女を巡る父子の対立」という構図を取り入れながら、
その対立を一世代(対嫁/妻)だけではなく、二世代(対孫/娘)に渡って繰り広げている、
という背景を仕込んでいるのがこの作品の恐いところ。
一世代目の対立では、「息子の嫁にトチ狂ったエロジジイ」で話は済んだ(それはそれで十分痛いけど)が、対立が二世代に及ぶことで、
トチ狂っていたのはジジイだけではなかったという驚愕の展開を盛り込み、父が父なら息子も息子という血脈の恐ろしさ、人間のエゴという
「呪い」を相も変わらず仮借なく暴き出していて、溜息しか出ない。
この一連の描き方はベルイマンの面目躍如と言えるが、ベルイマンの慧眼の凄まじさは、そういう露悪的な部分にもはや留まることはなく、
そこを突き抜けて(と言うか、それを内包した)「人間の全体性」のような領野を平然と描き出しているところだろう。
劇場で観ることができて良かったと心底思った一本だった。
なお、本当にどうでもいいことだが、劇場を去る際エレベーターを相乗りした背後の欧米系女性が、友人に向かって唐突に口ずさみ始めた
「サ~ラ~バ~ンド♪」という旋律が今も頭から離れない。アレはなんだったんだろう……。
『明日へのチケット』 は、レビュー執筆時に見落としていたものがはっきりと分かった瞬間に、この作品の個人的評価は一気に上昇した。それは他ならぬ 「キアロスタミ・パート」について。鑑賞直後は単に「高慢で嫌味なおばはんがしっぺ返しされる話」くらいにしか思っていなかったのだが、 実はこのおばさんは「現在のヨーロッパ」そのものの象徴であった。つまりキアロスタミは、 この短いフィルムで現在のヨーロッパとアラブの関係を様々な角度から切り込んで寓喩しており、最後に放置されるおばさんの末路は、 キアロスタミがヨーロッパ市民に突き付けた警告そのものと言っていいだろう。他の二監督が「異文化に目を拓き行動すること」とか 「相互理解と相互信頼すること」の重要性ような、余りにも優等生的で理想的な着地点を提示している中で、 敢えて現実を見据えた問題提起をしてみせるキアロスタミのクールさに惚れ直した。
『クラッシュ』 は、演出とキャラ造形の一部に"あざとさ"が鼻につく面が多少あるものの、 そうした穴を差し引いても人間の裏表を見つめた脚本の骨の太さに圧倒された。
『MI3』 は映画として観るべき所は殆どないが、一回使い切りの娯楽作としては最高に属する品質だろう。消費されることを前提にした潔さが、 いかにもハリウッド的な一本。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は、「暴力の本質」というテーマを観念としてではなく人間の営為の中で浮かび上がらせていて、 中盤まではある意味で戦慄しっぱなしだった。ただ、中盤以降の展開が余りにも漫画的で、それまでとのギャップにかなり萎えてしまった。 部分部分には凄まじいインパクトがあり、それだけでも強い印象を残す作品だっただけに酷く惜しまれる。
2位『ブロークバック・マウンテン』(アン・リー監督)
3位『紀子の食卓』(園子温監督)
4位『奇妙なサーカス Strange Circus』(園子温監督)
5位『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~』(三池崇史監督)
6位『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(デビッド・クロネンバーグ監督)
7位『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(佐藤真監督)
8位『マイアミ・バイス』(マイケル・マン監督)
9位『バッシング』(小林政広監督)
10位『悩殺若女将 色っぽい腰つき』(竹洞哲也監督)
(本文中に★のついたリンクは、 別窓で筆者個人HP/ブログの関連エントリーに飛びます)
『サラバンド』
が今年見た映画でいちばん面白かったわけではないけれど、「ベルイマンの新作(そして最終作)を劇場で見ることができた」
という感激ゆえの1位選出。
2位(★)は清冽な語り口とヒース・レジャーの熱演に圧倒された。
こういう映画好きなんだよなあ。
3位はモノローグの奔流がバッチリ決まっただけでなく、見事な青春映画であり、パンク映画でもあるという多面性に唸った。
今年見た日本映画のベストワン。
4~6位はセックスと暴力表現の精華に興奮した。
『奇妙なサーカス Strange Circus(★)』『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~(★)』『ヒストリー・オブ・バイオレンス(★)』
7位は『ミュンヘン』
とセットで見るべきぶ厚いドキュメンタリー映画。パレスチナ問題の映画から「人肌の温もり」を感じるとは思わなかった。
8位(★)はここに挙げた作品の中でいちばん多く見返すであろう、犯罪映画の小傑作。
9位(★)はイラク人質事件をモチーフにしながらも、「人と人の絆」
という普遍的な場所に物語を着地させた作家の手際と、いつまでも脳裏に残る占部房子の「顔」に敬服。
10位(★)はエキストラで参加したことを差し引いても、
「うどん屋を舞台にしたエロ温かい人情喜劇」というシナリオの枠組み自体に素朴な感動を覚えて。
エロ限定で、イッてみます!
01. くりいむレモン 夢のあとに (城定秀夫監督/フルメディア)
02. ロリ色の誘惑 させたがり (高原秀和監督/国映=新東宝)
03. メイド探偵 (吉行由実監督/イメージリングス)
04. 新 高校教師 桃色の放課後 (城定秀夫監督/ENGEL)
05. くりいむレモン 蕾のかたち (古田亘監督/フルメディア)
06. 悩殺若女将 色っぽい腰つき (竹洞哲也監督/オーピー)
07. Nipples (有馬顕監督/フルモーション)
08. 絶倫絶女 (いまおかしんじ監督/国映=新東宝)
09. 美姉妹レズ 忌中の日に… (山内大輔監督/Xces)
10. 女子アナ七瀬 「秘密」の生活 (奥渉監督/Junk Film)
一方、彼という才能を頑なに起用しないおバカなピンク映画界は、低迷感満載。客観的観測では、『絶倫絶女』こと『おじさん天国』 で三連覇間違いなしと予想するのだけど、いまおか監督作品には、やはり「響く」「何か」を求めてしまう僕としては……以上の結果。 竹洞監督が三度、吉沢明歩のカワいさを120%引き出すことに成功した人情モノ『悩殺若女将』がやはり一番だったかな。あと、 ピンク大賞では昨年度対象作品なのだけど、今回の対象公開期間にギリギリ引っかかってたので、2005年に生まれた『かえるのうた』 と並ぶ青春映画の傑作――と、僕が思っている――『ロリ色の誘惑』を推させていただきます。ベスト10からもR-18 LoveCinemaからもモレたし、未ソフト化だし、まだオッサンとマニアの目にしか触れてないのが残念でならない一作。是非、 今年中に多くの方が観れる形になることを願います。
……10位ですか??何か??吉沢明歩に柚木ティナ……お郷が知れる趣味でございます。わっはっはっ。
『好きだ、』『鉄コン筋クリート』『かもめ食堂』『ぼくを葬(おく)る』『緑茶』
▼寸評 (本文中に★のついたリンクは、
別窓で筆者個人HP/ブログの関連エントリーに飛びます)
個人的な今年のジャズのベストアルバムは橋本一子の『Ub-X』だった。
疾走する伸縮自在のポリグルーヴ。 リズムの濃密なウネリと、まばゆく拡散してゆく時間の粒子。
悠久の「間」を感じるナンバーから、圧倒的な情報量が沸点に達するほどまでに単位時間内に凝縮される瞬間もあり、 ピアノとヴォイスの橋本一子をはじめ、ドラムスの藤本敦夫と、ベースの井野信義の時間と空間の達人っぷりを堪能させてもらった。
そういえば、優れたジャズマンは、空間の使い方が皆、巧い。
セロニアス・モンクの独特な「間」。シーツ・オブ・サウンズで空間を怒涛のごとく埋め尽くしたコルトレーンのテナーサックス。マイルス・
デイヴィスは、生涯を通じて音楽の「スペース」にこだわり続けた――。
私は、新旧問わず、時間と空間に独特な配慮が施されているジャズに魅力を感じる。
映画も同様。
空間の中への情報の配置の仕方や、時間の伸縮にこだわった作品に魅力を感じてしまう。
今回のセレクトは、いずれも空間や時間の切り取り方が独特なものばかり。
まず、筆頭に『好きだ、』。 画面の構図は、まるで動く広告写真だよなぁと思っていたら、監督、
本当にCF畑の人だったのね(何の予備情報もなく観て、後で調べて分かった)。
後半の永作博美と西島秀俊の会話の「間」も噎せ返るほどに濃密な空気感。
『鉄コン筋クリート(★)』は、素晴らしいアニメーションだった。
独特なテイストを持つ「宝町」のグラフィックの見事さ。リズミカルに展開するストーリーの緩急。蒼井優のシロの声のハマりっぷりもグー。
送り手の作品に対する愛情がひしひしと感じられた。
静かに超然とした小林聡美がカッコいい『かもめ食堂(★)』、
ジャンヌ・モローの健在っぷりを見せつけた『ぼくを葬(おく)る』は、映画の持つ時間の呼吸が心地よい作品だった。
同じ理由で『緑茶』も。
本国では2002年の公開だが、日本では今年の公開ということでランクイン。 ヴィッキー・チャオも魅せてくれたが、独特の色合い、
風合いを持つ映像が印象に残った。
文句なしのスケールとプロジェクトでサッカー映画の最高峰!丁寧な家族と民族の伏線がただのサクセス・ストーリーに厚みを持たせている。 映像力も圧倒的でした。ロッキーに匹敵するスポーツ映画です。
第2位★父親たちの星条旗
監督とはイーストウッドのためにある呼称であることを実感した。スピルバーグが特撮監督に回るという離れ技も彼ならでは。
まさに監督の中の監督。勿論、中味も凄いし、映像の力も圧倒的に強い。映画とは何かがこの一本に凝縮している。
第3位★フラガール
邦画で唯一のランク・イン。蒼井優が主演(‥だと僕は思う)を堂々と演じていた。貧乏話を映画的に仕立てた脚本も見事。何より、
この映画には時間‥スタッフ・俳優の費やした‥がきちんと映っている。
第4位★クラッシュ
悔しい程に完成された脚本と構成。スライス・オブ・ライフを描いた作品としては近年のBest。
それぞれのエピソードの人物描写が丁寧で美しい。また映像力も美しいという点で2006年らしいルックで好感が持てる。
第5位★オリバー・ツイスト
こんな地味な貧乏話をどうするのかと思ったが圧倒的な美術と衣装のリアリティでググッとストーリーに入れてしまう。
子役たちも素晴らしい。映像もまた映画力に溢れていて貧乏話を描きながら映画的にはかなり豊かな作品となっている。
奥行のある映像力は世界基準とは何かを教えてくれる。ただただ羨ましい。
「カオス」(トニー・ジグリオ監督)
「クライングフィスト」(リュ・スンワン監督)
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(デビット・クローネンバーグ監督)
「プルートで朝食を」(ニール・ジョーダン監督)
「ブロークバックマウンテン」(アン・リー監督)
佐藤洋笑 ,鮫島サメ子 ,仙道勇人 ,膳場岳人 ,高野雲 ,村本天志 ,百恵紳之助 ,朱雀しじま ,とくしん九郎 ,佐野亨 ,年度別ベスト
TRACKBACK URL: