ド辺境の地で兄と弟に挟まれて育った筆者は「女の子」が苦手である。同性が苦手、ではない。 ある程度育っちまえばいいのだが、幼少期に同性の遊び相手がいなかったせいか、「幼い女」 というものの志向や嗜好や属性がよくわからんのです。ままごとも人形遊びもまったく興味なかったし。
つーことで、皆様が激賞するほどには本作の主人公、ジェライザ=ローズ(ジョデル・フェルランド) への共感や思い入れはありまへん。むしろ、妙にこまっちゃくれたヤなガキだなあと。ひとつには、 彼女が自分になかったものをいっぱい持っているからかも。まず美貌。好奇心と行動力。強気。無邪気さとませ過ぎだろ!が入り混じった「女」 の部分。などなど。
と、ご推察どおり殿方にはたまらない魅力かもしれない。ロリ系ならずとも、 ちょっとクラクラくる小悪魔である。「短い休暇」から戻ってこれなくなった大柄なお父っつぁん(ジェフ・ブリッジス) にコアラのようにしがみついて眠る姿の何と可愛らしく、何と淫靡なことか。「いかにも天使」のダコタ・ファニングとはまた違った、 「いけない魅力」全開の少女である。
考えてみれば(いや、考えてみるまでもなく)、ローズの状況は悲惨極まりない。元・ ロックスターの父ちゃんとチョコ大好き母ちゃんは揃ってヤク中。まず母ちゃんがオーバードーズで頓死。 逃げるように父娘で今は無人となった父の実家に都オチすれば、今度は父ちゃんが彼岸へ。 生きていたときから自己中のカタマリみたいな両親ではあったが、これでローズは正々堂々、天涯孤独の身となる。しかも僻地。しかも知人なし。 このままでは餓死まっしぐらである。しかし、奇妙奇天烈なご近所さん、幽霊女のデル&「いつかはサメ退治」のディキンズと知り合ったことで、 首の皮一枚繋がったように見えたのだが……。
このように、話の展開だけを追えばトホホのオンパレードなのだが、京極夏彦作品ならずとも、 ヒトは自分の受け入れたい事実しか認知しないようだ。本作の場合、その見上げた精神は主要人物において徹底されまくっている。ローズは 「眠ったまま」だんだん臭ってくる父に話しかけ、大親友(バービー人形の頭)と舌戦を繰り広げ、 廃車となったバスの中でホタルの乱舞を愉しみ、オツムの足りないディキンズを「白馬の王子」に見立てて挑発し、逞しく生を謳歌する。 この強靭な精神力の源は旺盛な想像力である(妄想力かも)。だからローズは些かも「可哀相な孤児」などではなく、大人を怯ませる堂々の 「アリス」なのだ。
そして、そろいも揃ってなんだかなーの方々。ローズの父母は言うまでもなく、 その死を受け入れられず大事に大事に母親を「おとっとき」していたデル、ディキンズにセクハラしていた生前の祖母ちゃん等々、皆、 いびつで猥雑でしょーもない連中である。その歪みっぷりは、いっそ清々しいほど。そう、本作はギリアム版『フリークス』なのかもしれない。 見た目だけなら一番ソレに近い「精神年齢10歳」のディキンズ(ナイ○イの岡×隆史に酷似)が、実は一番純情だったもんな。そして 『フリークス』ならではの美学が横溢している映像が、これまたトンでもなく官能的。甘やかに残酷で美しい。
父ちゃんが愛用していた法被(?)の襟に燦然と輝く白抜き文字を始め、
ダニおよび埃アレルギーの方々が卒倒しそうなボロ家に住み、風呂なんか無理だろうに、いつまでたっても垢じみない主人公の不思議等々、
突っ込みどころにも事欠かない良心作。
映画は予算じゃないよな、とちょっと思ってしまった、廉価な「裏」ブラザーズ・グリムでありました。
(2006.7.31)
主なキャスト / スタッフ
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