藤原章(映画監督)
宮川ひろみ(女優)
花くまゆうさく(漫画家)
映画『ヒミコさん』について
2007年10月27日(土)ポレポレ東中野にて2週間限定レイトショー
『ヒミコさん』公式Web:http://www.imagerings.jp
藤原章(監督)
1965年、兵庫県生まれ。70年代のカンフー映画に影響を受けた男泣き映画を撮り続けている。また、「チンプイ」名義で〈映画秘宝〉誌に漫画も寄稿。『神様の愛い奴』(01)、『ラッパー慕情』(04)など。
『ラッパー慕情』の藤原章監督の待望の新作である『ヒミコさん』は、まるでナンセンスなギャグ漫画をそのまま実写化したかのような、涙と笑い、そしてお色気とスポ根にあふるれる青春群像ドラマだ。プロ野球選手を目指すという大きな夢を持つ高校生のまわりにフェロモンをまき散らす秘密工作員の女や、麻薬で球界を追放されたプロ野球選手、やたらと拳銃を振り回す新米刑事といった、クセのある登場人物たちがいきいきと活写された作品である。今回は、その監督である藤原章さん、主演の宮川ひろみさん、そしてポスターのイラストを描いている花くまゆうさくさんの3人に話を聞いた。
――花くまさんと映画『ヒミコさん』の出会いは?
花くま 今年の〈ゆうばり応援映画祭〉に行ったんです。ゆうばりの自主映画の部門っていったら『ラッパー慕情』や『ヤンキーエレジー』など、「こっち側の作品」ばかりというイメージがあったんで、楽しみにしてたら、なんか違うな?って感じの作品が続いて戸惑ってたんですよ。それで、やっと『ヒミコさん』が上映され、「ああ、ゆうばり応援映画祭に来たんだ」って実感がようやく沸いてきました。嬉しかったし、面白かったし、衝撃受けましたね。いっしょに観ていた『東京ゾンビ外伝』主演の村田卓実くんと、二人で『ヒミコさん』を楽しみました。ちなみにぼくが村田くんを主演にしたのは、彼を平成の本間優二(『十九歳の地図』『狂った果実』)にしたいなあと思ったからです。
藤原 ぼくは仕事もあって、〈ゆうばり応援映画祭〉に行けなかったんですけど、途中退場したお年寄りがいたと聞いて心配はしていたんです。
宮川 きっとそのことが藤原監督に伝わるだろうなと思ったので、ゆうばりに行っていた私からも「大丈夫、花くまさんが絶賛していましたよ」と伝えたんです。
花くま ゆうばりの夜のイベントの時に『ヒミコさん』の主演女優の宮川さんがぼくと村田くんに声をかけてくれたんで、仲良くなったんですよね。
藤原 おかげで、知り合った花くまさんに『ヒミコさん』のポスターをお願いしました。
――映画のエッセンスがつまったイラストでいいですね。
花くま 『ラッパー慕情』が素晴らしかったので、描かせてもらえて嬉しかったです。
藤原 本当に素晴らしいです。ありがとうございます。ありがとうございます!
花くま キャラクターを何人も描きましたが、背景に大きくある建物は映画の冒頭および途中で何回か出てくるアパートなんです。アパートから登場人物が出てきて歩く、あのオープニングの撮り方と音楽の合わさり具合がとても好きなんです。藤原さんの作品は、工場とかコンビナートとかタンクとか、ぼく好みの風景が多くてとても好きです。
藤原 本当にありがとうございます。現在撮影中の『ダンプねえちゃんとホルモン大王』には、役者として花くまさんと村田さんに出てもらっています。主演は宮川さんです。
宮川 引き続き主演させてもらって光栄です!
藤原 いえっ、こちらこそ!
――今作の撮影期間はどれぐらいだったんでしょうか?
藤原 一昨年の11月に撮って、昨年の2月に撮って、5月と9月に撮ったりとトータルで10ヶ月間ぐらいですね。実際は14日ぐらいです。
宮川 『ラッパー慕情』に続いての出演ですが、藤原監督の作品は大好きなんだけど、仕上がりがどうなるかわからないのも魅力です(笑)。井口さんのシーンは気づいた人もいるかもしれないですが、『ラッパー慕情』のフッテージですね。
――ほのぼのとした予告編を観て来た観客が驚くような怒涛の後半の展開がすごいです。
藤原 あの予告編は、プロデューサーのしまださんの大戦略です!
宮川 でも、あれはあれでありだと思います。
花くま あの予告編はいいですね。
――後半はCG画面が多いのにも驚きました。
藤原 詳しくは言えないのですが、あそこは低予算映画でCGを入れるウラ技を使いました。
――キャストも興味深いです。個人的に知っている人ばかりなのには驚きました(笑)。
藤原 園子温監督は自主映画を作っていた頃からの知り合いなので、お互いの作品には出演するんです。
――〈映画秘宝〉の田野辺さんは『ラッパー慕情』に引き続き「百円さん」役での出演ですね。藤原監督作品は各作品がつながっていて、石川県泥亀市赤松町が舞台で、一つの世界観を持っているのも大きな魅力ですね。
藤原 もちろんプロットを書いているのは自分なので意識していないわけではないのですが、実はあまり考えていなくて、「各作品がつながっていたら面白いだろうな」くらいの気持ちで作っています。
宮川 でも、その世界観がいいんですよ。
花くま グッときますね。
藤原 いえっ、無我夢中にやってるだけでして!
――主役の武川寛幸もいいですね。
藤原 武川さんは吉祥寺のバウスシアターのスタッフなんですけど、演じてもらったらバッチリでしたね。高校生3人組の残り2人のうち、ギンティ小林さんは〈映画秘宝〉のライターで知られていますし、もう1人の酒徳ごうわくさんは、『頭脳戦隊クビレンジャー』という作品で有名な監督さんです!
――ケン役の酒徳さんはよかったですね。最後のパーティシーンでの呆然としながらも幸せそうな顔もバッチリでした。
藤原 あれは酒徳さんの上映会の後に撮らせてもらったんです。酒徳さんには「Yシャツを着てきて」と言っただけで、詳しいこと知らないんですよ。
――あのシーンでは、宮川さんが足を机に乗っけて踊ったりとハイテンションぶりも素晴らしかったです。
宮川 あそこは、テンションを上げましたよ! 大変でした(笑)。
――宮川さん演じるヒミコさんは、誰もが「すごい美人」と思う役でしたが、女優冥利に尽きる役だったのでは?
宮川 そうですね(笑)。頑張りました。でも、後半はヒミコさんはあんなことやこんなこともされちゃうんですけどね(笑)。何を考えているかわからない人物に見えるようにしました。
藤原 映画が始まってすぐの、高橋洋さん演じる名誉会長がヒミコさんと出会うシーンでは、宮川さんに「全盛期の大原麗子さんみたいに」と言いましたね。大原麗子がわかる世代は少なくなっているかもしれないですけど、わからない人にも「大原麗子ってこんなだったんだ!」って思わせるようにしました。ぼくは大原さんのためなら腕の1本や2本、惜しくありませんね!
――最後にこの映画の魅力を語ってください。
花くま はじめにも言いましたが、冒頭のアパートから出てくるシーンの素晴らしさにやられて、その魅力が続く映画です。ラストの爽快さもいいですね。ラストの音楽すごいいいですよ。
宮川 今までに誰も観たことのない映画だと思います。ぜひ、劇場で観てください。
藤原 身近によくあることを、自分なりの青春映画として作りました。誰もが楽しめる作品だと思います。お年寄りが観ても回春剤になるから、ぜひ観にきてください!
――本日はお忙しい中、ありがとうございました。
藤原 こちらこそ! ありがとうございました。本当に、ありがとうございました!
取材/文:わたなべ りんたろう
ヒミコさん 2007年 日本
監督・脚本・撮影・編集:藤原章 音楽:Drムロとサイコヒデとヒロちゃん
出演:宮川ひろみ,辛酸なめ子,高橋洋,園子温,切通理作,吉行由実
(C) 2006 IMAGE RINGS
2007年10月27日(土)ポレポレ東中野にて2週間限定レイトショー
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