インタビュー
岡太地監督1

岡 太地(映画監督)

  • 映画『屋根の上の赤い女』について

9月15日(土)~9月21日(金)
池袋シネマ・ロサにて期間限定レイトショー
同時上映作品
「トロイの欲情」(9月15日~18日)
「放流人間」(9月19日~21日)

『屋根の上の赤い女』公式Web:
http://www.yomosuga-love.com/yane.html


岡太地(映画監督) 1980年、京都府生まれ。ピアノ教師と建築家の父の間に生まれ、幼少のころは伊丹十三監督の「あげまん」がお気に入りだった。大阪芸術大学映像学科で課題作品や自主映画をいくつ製作した後、2004年に卒業制作で初めての16mmフィルム長編映画の「トロイの欲情」を監督する。PFF2005で準グランプリを受賞。その後、大阪市映像文化事業部CO2からの支援を受けて「放流人間」(2006)を監督。同時期に文化庁支援による「若手映画作家育成プロジェクト」に選ばれ、「屋根の上の赤い女」を監督。WebのCMのディレクターや舞台の演出などにも挑戦している。

池袋シネマ・ロサで9月15日からレイトショー公開される「屋根の上の赤い女」はストーリーテリングを重視しているところが見所の作品だ。今年27歳で今後の活躍が楽しみな新鋭監督の岡太地監督にインタビューを行った。

 

――「赤い屋根の上の女」は30分の短編ながら、モブシーンを撮っていて印象的ですが、どういう発想でモブシーンを撮ろうと思ったのでしょうか?

 エミ-ル・クストリッツアの作品が好きで、自分の作品でクストリッツア作品特有の混乱しながらもユーモアのあるモブシーンをやってみようと思ったのがきっかけです。クストリッツアのモブシーンはドリフのドタバタの要素に相通じるものも感じるので、ドリフ的なおかしさも出せたらと思って撮っています。

――「血を流した顔」のアップが面白かったですね。

 あれも自分の中ではドリフなんですよ(笑)。悲しみとおかしさが同居しているというか。ドリフって大きなタライが落ちてきたり、案外と暴力的でもありますよね。

――常連俳優の高城ツヨシが、妙に威張っているキャラクターでモブシーンでも光っていてよかったです。

 高城くんは始めはツヨシを漢字表記していたのですが、映像クリエイターの方と同じ字でよく間違われるのでカタカナ表記にしたんです。映像製作者と出演希望者が集まるネットの掲示板で、俳優を募集にしてオーディションしたときに高城くんに初めて会ったんです。関西に住んでいたのでメールで経歴などをやりとりして、何人かに絞りこんでから東京でオーディションしたんですが、それでも変な人が何人かいましたね。自己顕示欲が妙に強いというか。それ以来、ネットで俳優を募集するのはやめました(笑)。

――大阪市映像文化事業部CO2からの支援を受けて「放流人間」(2006)を撮って、その後すぐに文化庁支援で「屋根の上の赤い女」を撮っています。かなりハイペースですね。

岡太地監督2 PFFで受賞したら、スカラシップに企画を応募する権利がもらえるんです。でも結果が出るまでは身動きが取れないので、その間にシナリオを書いたり、修行をする期間がほしいと思って大阪芸大の大学院に進学したんです。でも、ぴあのスカラシップに出した企画は選考に落ちてしまったんです。それが去年の春だったのですが、去年の夏になってCO2という大阪市が主催している映画祭のスタッフから企画を出してみないかという話がきたんです。すると、今度はぴあから連絡がきて、文化庁の助成金制度に推薦できるから企画を応募してみないかとの話しも来たんです。全く何もないときはヒマでしょうがなかったのに、来るときは続けてくるんですね(笑)。最初は2つの企画を同時にやるのはムリだと思ったんです。共に長編ですし。でもチャンスだと思って、2つとも書いたらどっちかが引っかかるかもしれないと思って出したんです。そうしたら結果的に両方の企画が通ってしまった(笑)。スケジュール的にかなり厳しかったんですけど、ここで2つの企画を同時にこなすことができたら、この先も映画監督としてやっていける自信になるんじゃないかなと思ったんです。それで両方撮ったんです。

――それは凄いですね。そして2月には「赤い屋根の上の女」を撮影したと。今作のストーリーを思いついたきっかけは何だったのでしょうか? タイトルに赤という文字が入っていますが、屋根の青や男が着ているダウンの黄色などのさまざまな色が印象に残ります。

 企画を考えているときに、家のベランダから外を見ていたら、近くに青い瓦屋根の家があって、そこに女の子が立っていたらいいなというイメージが湧いてきたんです。青という色には自由だけど孤独なイメージがあって、赤には力強いイメージがあると思うんです。本当は強い力を持っているのに、寂しさの中で佇んでいる女性がいるという情景にすごく心が魅かれたんです。それが今作のイメージの原点としてありました。

――「赤い屋根の上の女」の撮影監督は近藤龍人で、彼は山下敦弘監督の撮影監督として知られていて、最近では「天然コケッコー」の撮影が実に素晴らしかった。近藤龍人と組んでみていかがでしたか?

 文化庁からの推薦で、近藤さんと初めて組んだんです。主演の山中くんは「松ヶ根乱射事件」の主要キャストだし、ぼくも大阪芸大出身なので山下監督つながりで、その二人の方を使ったと思われるかもしれないですが、山中くんはオーディションで選びましたし違うんです。近藤さんは、こだわりがあって、とても粘る方でしたね。

――こちらも「天然コケッコー」で山下監督と近藤撮影監督にインタビューしたので、そのことは聞いています。

 もちろんいい意味なのですが、とても粘ります。シーンの意味をとても重要に考えてくれて、ぼくがそのシーンで何を撮りたいかをよく聞かれました。主人公の二人の気持ちが接近する、朝の会社のソファのシーンは位置的に撮りにくいところもあったのですが、近藤さんの提案もあって、あのようなシーンに仕上がってとても満足しています。

――あのシーンはエロティックでよかったです。

屋根の上の赤い女 主演の神農さんはとても勘どころのいい女優で、すぐにあのシーンを把握してくれました。彼女は関西では電車会社のマスコットガールでよく知られた方なのですが、そこではニッコリ明るく笑った雰囲気なんです。でも、映画はなぜかホラー系統が多いという(笑)。どこかカゲがあるところが、オーディションで今作のヒロインに起用した理由です。山中くんは、オドオドしたところがいいんですよ。

――この間、「松ヶ根乱射事件」のDVD発売のオールナイトイベントに行ったら、「ぼくってそんなにオドオドしていますかね? この間、イタリアに旅行したときに中学生ぐらいのガキに囲まれてカツアゲされました」と言っていましたが、普段もそういうキャラなんですね。

 そこが山中くんの持ち味ですね。今後もオドオド路線をずっと究めてほしいです(笑)。

――近藤撮影監督の話しにもどると、「天然コケッコー」が彼の35mmの初の撮影作品でしたが、「屋根の上の赤い女」も35mmと表記されています。

 今作はスーパー16mmで撮って35mmにブローアップしたので、35mm撮影ではないんです。

――だから、粒子の荒い画面になっているんですね。「悪魔のいけにえ」と同じです。

 あの粒子の荒さが、不穏な空気を醸し出すことが出来て今作のテイストにあいましたね。

――若い監督にしては、しっかりとしたストーリーテリングを重視しているのがとても良かったのですが、どういう映画を観てきたのでしょうか?

 プレスでも言っていますが、小さいころから伊丹監督作品は好きでしたね。伊丹監督作品は、どの作品も好きで、あまり評判のよくない「あげまん」、「静かな生活」も好きです。特に好きなのは「マルサの女2」です。あの作品の密度と監督のやろうとしていることが好きなんです。後はハリウッド映画やリュック・ベッソンの映画などです。

――ベッソンは映画好きにはバカにされることも多いですが、「ニキータ」などの演出はいいですね。

 「ニキータ」もいいですが「レオン」もいいですね。あのシャープな演出はなかなか出来ないです。大阪芸大に入ってからは、まわりが映画マニアばかりだったので、いろいろと見ましたね。

――大阪芸大ではどんな生活をおくっていたのでしょう?

 大阪芸大は中島貞夫監督がボスなんです。年度の始めに出てきて、やたらと「映画とは怖いものだ」ということを生徒に植えつけようとするんです(笑)。授業が始まると、講義はほとんどなしで年度末の映像製作の時期になるとまた出てくるんです。「トロイの欲情」を観ての感想は「女がよいのでいい」だけでした(笑)。器が大きくて、面白い方でしたね。

――他にも大阪芸大時代のエピソードはありますか?

 「新撰組vs.ゾンビ」の映画を友達が監督したので特殊メイクをやりました。その監督は才気あったのですが、今は引きこもりで映画のタイトルは「獄穴山B地獄」ってタイトルです(笑)。コンドームに血糊をつめて、電球のガラスを取ったフィラメントを起爆装置にして、人体破壊を作っていました。

――こちらも高校時代にそういう映画を作っていたので、よく分かります(笑)。

 「獄穴山B地獄」は撮影もかなり大掛かりで面白かったですね。朝の6時ぐらいから近くの山に行って撮るんですけど、ゾンビメイクを何人にも施して、弾着や人体破壊の仕掛けもして大変でしたが楽しかったです。熊切監督の「鬼畜大宴会」から続く、特殊メイクの伝統が大阪芸大にはあるんです。今度、DVDに焼くので見てください(笑)。

――それは楽しみにしています。いつかゾンビ映画も撮ってほしいですね(笑)。

 いずれ撮りますので、楽しみにしていてください(笑)。

取材/文:わたなべ りんたろう

屋根の上の赤い女 2007年 日本
監督・脚本・編集:岡 太地 プロデューサー:天野真弓 撮影:近藤龍人
照明:藤井 勇 録音:古谷正志 美術:宇山隆之 音楽:侘美秀俊
出演:山中 崇,神農 幸,高城ツヨシ,梶本 潔,板倉善之 他
公式

<イベントスケジュール>
9/15(土):「屋根の上の赤い女」のメインキャストである山中崇・神農幸・高城ツヨシと岡監督による初日舞台挨拶
9/16(日):阿部嘉昭(評論家)×岡太地トークショー
9/17(月・祝):石井裕也(映画監督)×岡太地トークショー
(石井監督はPFFアワード2007グランプリ受賞作「剥き出しにっぽん」の監督で、「トロイの欲情」では助監督を務めた)
9/21(金):三嶋幸恵(『放流人間』出演)×高城ツヨシ(岡作品常連俳優)×岡太地トークショー

9月15日(土)~9月21日(金)池袋シネマ・ロサにて期間限定レイトショー
同時上映作品「トロイの欲情」(9月15日~18日)
「放流人間」(9月19日~21日)

2007/09/11/13:46 | トラックバック (0)
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