瀬川 浩志 (監督) 映画『たまゆらのマリ子』について【3/5】
2018年12月1日(土)~12月14日(金)、池袋シネマロサにて公開終了
公式twitter (取材:深谷直子)
――他のキャストはどうやって選ばれたんですか?
瀬川 オーディションですね。牛尾さんも実はオーディションです。みんなと一緒に演技をしてもらい、それを見て決めました。
――どんなことを選ぶ決め手にしたんですか?
瀬川 まずはもちろんお芝居が上手いということが一つあり、あとはキャラクターの意外性を大事にしました。怖い人が怖く見える、優しい人が優しく見えるというキャスティングがあまり好きではないんです。「一見こう見えるけど実は……」みたいなことがリアルだと思うし、観客にとっても意外性があって面白いと思うので、パッと見の第一印象と役柄がズレているぐらいの選び方をしました。例えば序盤とラストにだけ出てきて、お客さんにいじめられたりしているマリ子の同僚役を演じた加藤智子さんという女優さんは、すごくきれいな方なんですよ。だけど、それをいわゆるきれいどころとして使うのではなく、ちょっとイケていない役で使っても、意外とハマるという。そういうパッと見の第一印象を裏切るキャスティングをいつも心がけています。演出するときも、ステレオタイプなお芝居にならないようにということをすごく言いました。
――加藤智子さんの出演シーンは確かに印象的でした。やっぱりすごくきれいだから、最初はこの人が主人公なのかな?と思ったら違っていて、最初からとても意表を突かれました。ラストシーンも、エレベーターの中で加藤さんが話し出すと、ようやく収束しようとしている物語がまたそこでねじれてザワつく感じがあって。
瀬川 ラストシーンはもともと脚本に書いていたとおりなんですが、それよりも加藤さんが持っている魔性の魅力が出ましたね。出番は少なかったけど、撮りたいと思わせる人でした。この作品の前には山戸結希監督の『あの娘が海辺で踊ってる』(12)に主役で出ていました。
――他の役柄も、パワハラ・セクハラし放題の店長とか、自己チューでおしゃべりな同僚のみはるとか、一見典型的キャラクターに見えつつ、最終的にはそれぞれ事情があるんだなあと感じられていました。マリ子にそういう部分が見えなくなっているというのもあるんでしょうし。
瀬川 どこかちょっと弱いところが見えて、「そんなに悪い人じゃないんだな」と思ってもらえたら嬉しいですね。まあそんなに長い映画じゃないので……。もっと描けばよかったなという反省が少しあったりします。
――そうですね、65分という尺が少しもったいないなという気がするんですが、あえてそういう長さにしているんですか?
瀬川 これはあんまりかっこいい話ではないんですが、初めは中編の、1時間以内ぐらいの作品ということで思いついていたんですけど、脚本を書き始めるともうちょっと伸ばしたいなという欲望が湧いてきて、中編を無理やり長編にしたという感じなんです。
――もともと小さい作品で考えていたんですね。やっぱりワンアイデアで勢いよく見せる感じが合う気がしますし、膨らませるなら人間関係などもうちょっと描いてほしいなあというところがありましたね。
瀬川 登場人物も多くて、パズルのピースはたくさんあるので、もう少し大きくできたかな……という気はしますね。多分長編にするならあと1回山と谷があるのかなあとか考えたりします。オムニバスが作れそうですよね。「みはるの1日」とか。
――そうですね、みんな魅力的に見せられそうなキャラクターなので。マリ子の夫の智晴も、どんどん印象が変わっていきますね。わがままで面倒くさい人だな……と思っていたら、実はものすごく寛容だなあと(笑)。
瀬川 結局似た者夫婦だったという(笑)。二人とも妄想がどんどんエスカレートしていっちゃうんですね。智晴役に関しては、演じた山科圭太さんは身長がとても高くて、牛尾さんと30cm近く差があり、一緒に画面に入ると違和感が気になっちゃうから、それが目立たないようにするのが大変でした。映画ってこういうことまで考えながら撮っているんだな、と勉強になりました。
出演: 牛尾千聖 山科圭太 三浦英 後藤ひかり 加藤智子 福原舞弓 根岸絵美 西尾佳織 高橋瞳天 柳谷一成
監督・脚本・編集:瀬川浩志
撮影・照明:星野洋行 録音: 川口陽一、間野翼 制作:藤岡晋介 助監督:滝野弘仁
ヘアメイク:岡野展英、北野澤なおゆき 音楽: 中川だいじろー 整音:日暮謙 カラリスト:今西正樹
特殊造型: 相蘇敬介(株式会社リンクファクトリー)
© 「たまゆらのマリ子」製作委員会 公式twitter