瀬川浩志監督『たまゆらのマリ子』

瀬川 浩志 (監督) 映画『たまゆらのマリ子』について【4/5】

2018年12月1日(土)~12月14日(金)、池袋シネマロサにて公開終了

公式twitter (取材:深谷直子)

『たまゆらのマリ子』場面5 『たまゆらのマリ子』場面6 『たまゆらのマリ子』場面7
――松浦慎一郎さんも面白い役でしたね。あるお店の店員というちょっとした役なんですけど、あとあと効いてくるという。

瀬川 松浦さんは、別の役でオーディションを受けてくださったんですけど、嫌な役をやっても、どうしても人のよさが滲み出てきちゃうんですよ。すごく人を心配している風な。それを見て、ぜひこっちの役でお願いしたいなと思って。あり得ないくらいおせっかいで、「こんな人いないよ」って絶対突っ込まれるなと思うぐらい甘い役だと自分でも思っていたんですけど、「いや、松浦さんならイケる!」って思ったんですよ(笑)。

――(笑)。松浦さんはアクション指導もしているんですよね。

瀬川 そうです。『百円の恋』(14)で安藤サクラさんのアクション指導をしたことを知っていましたので、アクションシーンで指導に入っていただいて。どうすれば人を殴っているように見えるか?とか、即席で教えていただいて。自分でもなかなかいいシーンになったのじゃないかと思います。

――そうですね、マリ子の暴走も、そこに至るまでの踏んだり蹴ったりも、全身を使って迫力がありました。マリ子に水風船をぶつけたりする不良少年3人組が憎々しい感じで。

瀬川 そこはマリ子を覚醒させるためなので、泣く泣くやってもらいました。彼らを出すことで、マリ子とは関係のない外の世界を描きたかったというのもあります。マリ子には大変なことが起こっているけど、世界は変わらず動いているんだよ、ということの暗喩として。だからあの男たちがなぜ喧嘩をしているのか?というのはわからなくていいんです。まったく別の事情があって彼らはやっているんだというのが、世界の広がりとして見えたらいいなと思って出しました。

――映像や音にもすごく工夫が感じられました。ロケ地に使ったバッティングセンターはとても絵になる場所ですね。

瀬川 マリ子はパートをしているという設定にしようとは思っていて、職場は人がストレスを発散させる場所だとテーマにも結びつくんじゃないかなと。カラオケボックスとかも面白そうだけど、もっと視覚的な面白さも表現できたらな……と思って、バッティングセンターを思いつきました。映画の冒頭で、ボールがベルトコンベアーに乗って運ばれていって、投球機から飛んでいき、打たれて戻ってくる。その無機質な感じが、都会の冷たい感じの暗喩にもなるんじゃないかな?と選びました。本当はあんなにイライラしたお客さんばかりじゃなくて、健全な人たちが来ると思うんですけど(笑)、まあフィクションの中だったらおかしくないかなって。うまく作品と絡めてできたんじゃないかなと思います。

――とてもアイデアの詰まった作品になりました。海外映画祭や、日本での劇場公開も1週間経たところで、手応えや気づいたことはありますか?

瀬川 海外では、もちろんQ&Aとかで意見をもらえるんですけど、細かいところまでは議論が深まらなくて、日本でやって初めてなるほどという意見やフィードバックがいただけて、色々感じているところです。特にトークのゲストにお呼びした監督たちの意見は大きいですね。ああ、こういうところが足りなかったのか……とか気づかされることが色々ありました。僕は意外と抜けていて、自分が意図したのとは違う表現をしていたり、計算していないところが意味ありげに見えていたりということが結構あるんだなあと。

――そうなんですね。逆にお褒めの言葉ではどんなものが多かったですか?

瀬川 人間のむき出しの部分とか、幻想的なシーン、妄想の部分にビックリしたという声が多いですね。あとは後半のマリ子の暴走シーンが一番楽しんでもらえているようです。僕も力を入れて描いたところですし、そこまでマリ子がずっとため込んでいて、観ている人のイライラが最高潮に達したところにカタルシスをもたらして、よくない発散のさせ方ではあるんですけど、そういうのがやっぱり気持ちいいんだろうと思います。

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たまゆらのマリ子 ( 2017 年/日本/65 分/DCP/ステレオ )
出演: 牛尾千聖 山科圭太 三浦英 後藤ひかり 加藤智子 福原舞弓 根岸絵美 西尾佳織 高橋瞳天 柳谷一成
監督・脚本・編集:瀬川浩志
撮影・照明:星野洋行 録音: 川口陽一、間野翼 制作:藤岡晋介 助監督:滝野弘仁
ヘアメイク:岡野展英、北野澤なおゆき 音楽: 中川だいじろー 整音:日暮謙 カラリスト:今西正樹
特殊造型: 相蘇敬介(株式会社リンクファクトリー)
© 「たまゆらのマリ子」製作委員会 公式twitter

2018年12月1日(土)~12月14日(金)、池袋シネマロサにて公開終了

2018/12/19/14:04 | トラックバック (0)
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